【目次】

【「絶滅危惧種の日」とは? 9月7日になった由来をわかりやすく解説】

■「絶滅危惧種の日」とは?

オーストラリアでは、9月7日を「National Threatened Species Day(絶滅危惧種の日)」としています。これは絶滅のおそれがあるオーストラリアの動植物への理解を深める日で、1996年に制定されました。

■日付の「由来」は?

1936(昭和11)年9月7日、オーストラリア・タスマニア州のホバート動物園で飼育されていた、最後のフクロオオカミが死亡しました。この出来事を教訓するため、1996(平成8)年から9月7日に「絶滅危惧種の日」が実施されるようになりました。現在では、絶滅のおそれがある動植物に目を向け、保全活動への理解や参加を促す機会となっています。

■「フクロオオカミ」って?

フクロオオカミは、かつてオーストラリアのタスマニア島を中心に生息していた生き物です。背中にトラのような縞模様があることから、英語では[Tasmanian tiger]とも呼ばれます。カンガルーやコアラと同じく、雌が育児嚢(いくじのう)をもつ「有袋類」の哺乳類です。

1936(昭和11)年9月7日、タスマニア州のホバート動物園で、世界で最後に飼育されていたフクロオオカミが死亡しました。この出来事から60年となる1996年、9月7日が「National Threatened Species Day」とされました。フクロオオカミは、その後も生存を示す確かな証拠が確認されず、1986年に国際的な基準に基づいて絶滅とされました。


【そもそも「絶滅危惧種」とは? 意味や分類、レッドリスト】

■そもそも「絶滅危惧種」とは?

「絶滅危惧種」とは、絶滅のおそれがある野生生物のことです。環境省では、レッドリストに掲載された種・亜種・変種のうち、「絶滅危惧I類」および「絶滅危惧II類」に評価されたものを絶滅危惧種としています。

「絶滅危惧Ⅰ類」…近い将来における絶滅の危険度が高いもの
「絶滅危惧II類」…Ⅰ類ほどではないものの、絶滅の危険が増大しているもの

■「絶滅危惧ⅠA類(CR)・ⅠB類・ID類」の違い

「絶滅危惧Ⅰ類」は、さらに「絶滅危惧ⅠA類(CR)」と「絶滅危惧ⅠB類」に分けられます。

「絶滅危惧ⅠA類(CR)」…ごく近い将来に野生で絶滅する危険性が極めて高い種
「絶滅危惧ⅠB類(EN)」…ⅠA類ほどではないものの、近い将来に野生で絶滅する危険性が高い種
「絶滅危惧II類(VU)」…絶滅の危険が増大している種

なお、レッドリストには、このほか「絶滅(EX)」「野生絶滅(EW)」「準絶滅危惧(NT)」「情報不足(DD)」などのカテゴリーもあります。

■「レッドリスト」って?

「レッドリスト」とは、野生生物について、絶滅の危険度を評価してまとめたリストです。環境省のレッドリストは、日本に生息・生育する野生生物を対象に、専門家が生物学的な観点から絶滅の危険度を評価して作成しています。一方、「レッドデータブック」は、レッドリストに掲載された種について、生息状況などを取りまとめた資料。つまり、レッドリストは「絶滅の危険度を評価したリスト」レッドデータブックは「その生物の状況などを詳しくまとめた資料」と考えると分かりやすいでしょう。

世界規模でいえば、国際自然保護連合(IUCN)が[IUCN Red List]を作成しており、「深刻な危機(CR)」「危機(EN)」「危急(VU)」など、絶滅の危険度に応じて分類しています。


【なぜ絶滅危惧種は増えている? 生息環境の変化や気候変動など主な原因】

■なぜ絶滅危惧種は増えている?

野生生物が絶滅の危機に陥る背景には、さまざまな要因があります。なかでも大きいのが、生息・生育環境の変化です。森林の伐採や開発などによって生息地が失われたり、分断されたりすると、餌を得たり繁殖したりすることが難しくなります。また、乱獲や過剰な捕獲、外来種による影響、気候変動なども、野生生物の個体数を減少させる要因。さらに、こうした要因が単独で作用するのではなく、複数の問題が重なって絶滅の危険が高まることもあります。以下、詳しく見ていきましょう。

■生息環境の変化

都市開発や農地の拡大、森林の伐採などによって、野生生物が暮らす場所そのものが失われることがあります。河川や湿地などの環境が変化することも、生物の生息・生育に影響を与えます。たとえ生息地が残っていても、道路や開発などによって分断されると、生物が移動しにくくなります。その結果、餌を探したり繁殖相手を見つけたりすることが難しくなり、個体群の維持に影響する場合があります。

■乱獲や過剰な捕獲

人間による狩猟や漁業、採取なども、絶滅の危機につながる要因です。食用や毛皮、角などを目的とした過剰な捕獲のほか、観賞用などの目的で野生生物が採取されることもあります。特に、繁殖する個体が過剰に捕獲されると、次の世代が減少し、個体数の回復が難しくなることがあります。野生生物を利用する場合には、将来も個体群を維持できるよう、適切な管理が必要になります。

■外来種による影響

もともとその地域に生息していなかった外来種が持ち込まれることで、在来の生物が影響を受けることがあります。餌や生息場所をめぐる競争、捕食、病気などを通じて、在来種の個体数が減少するケースも見られ、特に、もともとその地域に捕食者が少なかった生物などは、外来種の影響を受けやすい傾向にあるようです。外来種による影響は、生態系のなかで複雑に作用するため、地域や生物によって状況は異なります。

■気候変動の影響

気候変動も、野生生物の生息・生育環境を変化させる要因のひとつです。気温や降水量の変化などによって、餌となる生物の分布や繁殖の時期、生息できる地域などが変わり、生態系全体に影響が及ぶことがあります。たとえば、気温の変化によって、これまで生息できていた地域が適さなくなったり、餌となる生物の活動時期と繁殖時期がずれたりする可能性があります。こうした変化への適応が難しい生物では、個体数の減少につながることがあります。

■複数の要因が重なることも

このほか、環境汚染や森林火災など、地域や生物によってさまざまな要因が関係しています。実際には、ひとつの原因だけでなく、複数の要因が重なって絶滅の危険が高まるケースも。生物を守るためには、単に個体数を増やすだけでなく、その生物が生き続けられる環境そのものを守ることも重要なのです。


【日本にはどんな絶滅危惧種がいる? 身近な動物や植物】

日本にも、絶滅のおそれがある野生生物が数多く存在します。特定の地域にしか生息していない固有種だけでなく、私たちの身近な環境で見られる生物もいます。

環境省は第5次レッドリストを分類群ごとに順次公表しており、2025年3月に植物・菌類、2026年3月に鳥類および爬虫類・両生類の最新版を公表しました。

2026年3月時点で、最新の環境省レッドリストに掲載された絶滅危惧種は計3,587種です。哺乳類や魚類、昆虫類など残る分類群は、2026年度以降、評価が終了したものから順次公表される予定です。

■「アマミノクロウサギ」「イリオモテヤマネコ」

鹿児島県の奄美大島と徳之島にのみ生息するアマミノクロウサギは、日本固有のウサギです。環境省のレッドリストでは「絶滅危惧ⅠB類(EN)」に分類されています。

沖縄県の西表島だけに生息するイリオモテヤマネコは、環境省レッドリスト2020で「絶滅危惧ⅠA類(CR)」に分類されています。生息域がひとつの島に限られ、交通事故などが生息を脅かす要因となっています。

■「トキ」や「ヤンバルクイナ」

一度は野生絶滅したものの、保護・増殖活動によって野生復帰が進められているトキも、日本の野生生物を考えるうえでよく知られた存在です。環境省の第5次レッドリストでは、野生復帰の進展を受け、「絶滅危惧ⅠA類(CR)」から「絶滅危惧ⅠB類(EN)」へカテゴリーが一段階引き下げられています。

沖縄本島北部のやんばる地域に生息するヤンバルクイナは「絶滅危惧ⅠA類(CR)」に分類されています。飛ぶことが苦手なヤンバルクイナは、沖縄本島に生息する固有種として知られています。

■「ニホンウナギ」

私たちにも身近なニホンウナギも、環境省のレッドリストでは「絶滅危惧ⅠB類(EN)」に分類されています。2013(平成25)年の評価で、それまでの「情報不足(DD)」から「絶滅危惧ⅠB類(EN)」に変更されました。天然ウナギの漁獲量などから、成熟個体数が大きく減少していると推定されたためです。

■「ナゴヤダルマガエル」は田んぼのカエル

田んぼなどで見られるナゴヤダルマガエルも、絶滅のおそれがある生き物のひとつ。環境省の第5次レッドリストでも「絶滅危惧ⅠB類(EN)」に分類されています。身近な水田に生息するカエルにも、絶滅の危機にある種類がいることがわかります!

■植物にも絶滅危惧種が!

絶滅危惧種というと動物を思い浮かべがちですが、植物にも多くの絶滅危惧種があります。環境省のレッドリストでは、維管束植物をはじめ、蘚苔類や藻類なども評価の対象となっています。たとえば、アツモリソウは「絶滅危惧II類」に分類されているラン科の植物です。美しい花を咲かせることから知られていますが、園芸目的の採取なども問題となってきました。

■身近な生き物も無関係ではない

絶滅危惧種というと、遠い地域の珍しい動物をイメージしがちですが、日本のレッドリストには、私たちの暮らしの近くにある森林や河川、水田などを生息・生育環境とする生物も含まれています。生物多様性を守ることは、特別な動物だけを守ることではありません。身近な自然のなかにいる生き物にも目を向けることが、絶滅のおそれについて知る第一歩になるのです。


【「絶滅危惧種の日」に知っておきたい豆知識|私たちにできることとは?】

「絶滅危惧種」について調べてみると、「絶滅の危機にある=もう手遅れ」というわけではないことが分かります。保護活動によって生息数や生息域が回復した例もあれば、私たちの日常のちょっとした行動が、生態系に影響を与えることもあります。ここでは、知っておくと役立つ絶滅危惧種の豆知識を紹介します。

■トキは「野生絶滅」から「絶滅危惧種」に

日本のトキは、1981(昭和56)年に佐渡島で最後の5羽が捕獲され、いったん国内では野生絶滅となりました。その後、中国から贈られたトキなどをもとに飼育下での繁殖が進められ、2008(平成20)年から佐渡島で野生復帰が始まりました。現在、環境省のレッドリストでは「絶滅危惧ⅠB類(EN)」に分類されています。つまり、野生絶滅した生物でも、保全活動によって野生復帰が進み、絶滅危惧種として再び評価されるケースがあるのです。

■ヤンバルクイナは「飛べない鳥」

沖縄島北部のやんばる地域だけに生息するヤンバルクイナは、日本で唯一の、ほとんど飛ぶことができない鳥です。1981(昭和56)年に新種として発見され、現在は「絶滅危惧ⅠA類(CR)」に分類されていますが、外来種であるマングースの防除が進んだことで、生息域や生息数が回復傾向を見せています。絶滅危惧種を守る取り組みが、実際の生息状況の改善につながる例としても興味深い生き物です。

■「見ること」が保全につながる場合も

絶滅危惧種を知るために、動物園や植物園、野生生物保護センターなどを訪れることも、保全活動を知るきっかけになります。環境省も、こうした施設と協力して保全活動を進めています。ただし、野生の希少な生き物を見つけた場合は、むやみに近づいたり、追いかけたりしないことが大切です。実際、環境省はトキについて、過度な観察圧によって定着を妨げるおそれがあるため、詳細な位置情報を公開していません。珍しい生き物ほど、そっと見守ることも保全につながります。

■「いきものログ」では身近な生き物を調べられる

環境省の「いきものログ」では、全国の生き物情報を検索したり、自分で見つけた生き物を報告したりできます。生き物の名前を検索すると、いつ、どこで観察されたのかを地図で確認することもできますよ。身近な生き物について調べることから始めれば、「この地域にはどんな生き物がいるのだろう?」と、普段の自然に目を向けるきっかけになるのではないでしょうか。

■「逃がす・放す」が生態系を守るとは限らない

「自然に返してあげよう」と思って、飼っていた生き物を野外に放すことは、必ずしも自然にとってよいことではありません。外来種が野生化すると、在来種を捕食したり、餌や生息場所を奪ったりするなど、生態系に影響を与える可能性があります。環境省は、ペットなどとして飼っている生き物を野外に放さないよう呼びかけています。生き物を飼うときは、最後まで責任をもって飼育できるかを考えることも、身近にできる大切な行動です。

■「絶滅危惧種を守る」=一種類だけを守る、ではない

絶滅危惧種の保全では、その生物だけを飼育して増やせばよいとは限りません。環境省は、生物が暮らす生態系そのものを保全し、多様な生き物が暮らせる環境を守ることが重要だとしています。

たとえばトキの野生復帰では、トキそのものを増やすだけでなく、餌となる生き物が暮らせる水田などの生息環境を整える取り組みも行われています。ひとつの生き物を守ることが、その生き物を支える周囲の自然を守ることにもつながっているのです。

■私たちにできることは?

身近な自然や生き物について知ること、野生生物をむやみに捕まえたり採取したりしないこと、飼育している生き物を野外に放さないことなど、特別なことではなく、日常の小さな行動が、生物多様性を守ることにつながります。さらに、保全活動を行っている施設を訪れたり、活動を支援したり、環境に配慮した商品を選んだりする方法もあります。

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「絶滅危惧種」と聞くと、遠い世界の珍しい動物を思い浮かべるかもしれませんね。でも実は、私たちの身近な自然にも、絶滅のおそれがある生き物は暮らしています。「絶滅危惧種の日」をきっかけに、まずは自分の暮らしと自然とのつながりを知ることから始めてみてはいかがでしょう。そんな、日常のちょっとした行動が、未来へつながる一歩になるかもしれません!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『岩波 生物学辞典 第5版』(岩波書店) /ネイチャーポジティブ ポータル(https://policies.env.go.jp/nature/nature-positive/) /[National Threatened Species Day](https://www.dcceew.gov.au/sites/default/files/env/resources/d8bf66d9-c986-4dd6-a946-6bc30863878f/files/issue10.pdf?utm_source=chatgpt.com) /環境省「第5次レッドリスト(鳥類及び爬虫類・両生類)の 公表について(お知らせ)」 (https://www.env.go.jp/press/press_03312.html ) /生物情報 収集・提供システム「いきものログ」(https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/) /IUCN(https://iucn.org/our-work) /環境省「日本の外来種対策」(https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/outline.html?utm_source=chatgpt.com) /アニコムどうぶつコミュニティ「9月7日は絶滅危惧種の日。知っておきたい日本の絶滅危惧種のこと」(https://mag.anicom-sompo.co.jp/23018) :