【目次】

【「世界観光の日」とは? 月27日に定められた「由来」】

■「世界観光の日」とは?「誰が」決めた?

「世界観光の日(世界観光デー)」は9月27日です。英語の表記は「World Tourism Day(WTD)」。国連の専門機関である「世界観光機関(UN Tourism)」が定めた国際デーのひとつで、毎年9月27日には、世界各地で観光に関するさまざまな取り組みが行われています。

■なぜ9月27日? 日付の「由来」

1979(昭和54)年9月、スペインのトレモリノス市で開催された「世界観光機関」の第3回総会で、翌1980(昭和55)年から「世界観光の日」を制定することが決議されました。そこで、「世界観光機関」の定款が採択され、世界の観光における重要な節目となった、1970年(昭和45年)の9月27日が記念日として選ばれたのです。


【「世界観光の日」が生まれた「目的」と歴史】

■「世界観光の日」の「目的」は?

「世界観光の日」が設けられた背景には、観光が国際的な交流や経済、文化などに果たす役割について、世界的に関心を高めていこうという考えがありました。1980年9月27日に第1回の世界観光の日が開催されて以降、この日は観光について世界共通のテーマを掲げ、観光が社会にもたらすさまざまな影響について考える日として位置づけられています。

■「テーマ」は毎年変わる

世界観光の日では、毎年異なるテーマが設定されます。観光による経済的な発展だけでなく、文化交流、環境、地域社会、持続可能性など、その時代に応じた観光の課題や可能性が取り上げられてきました。近年は、観光客を受け入れる地域の環境や文化を守りながら、将来にわたって観光を続けていく「持続可能な観光」も重要なテーマとなっています。

■2026年のテーマは?

2026年の「世界観光の日」のテーマは、「Digital Agenda and Artificial Intelligence」です。日本語にすると、「観光を再設計するデジタルアジェンダと人工知能(AI)」といった意味。UN Tourismは、デジタル技術やAIが観光をどのように変えていくかを考えるテーマとして示しています。


【世界観光機関(UN Tourism)とはどんな組織?】

■「世界観光機関(UN Tourism)」は国連の専門機関

「世界観光機関(UN Tourism)」は、観光分野を専門とする国連の専門機関です。世界の観光をよりよい方向へ発展させるため、各国の観光政策についての意見交換や、観光分野での技術協力、観光統計の整備、各種セミナーなどを行っています。本部はスペインのマドリードにあります。

■「UNWTO」から「UN Tourism」へ

現在の「世界観光機関(UN Tourism)」は、最初から国連の専門機関だったわけではありません。

1975(昭和50)年に「世界観光機関」として設立され、2003(平成15)年12月に国連の専門機関となりました。このとき、英語の名称は「World Tourism Organization」、略称は「UNWTO」とされ、日本語では「国連世界観光機関」などと呼ばれていました。

その後、2024(令和6)年1月24日に、通称・ブランド名が「UNWTO」から「UN Tourism」に変更されました。組織そのものが新しくなったわけではなく、同じ世界観光機関の名称・ブランドが変わったのです。日本での名称は、現在、外務省によって「世界観光機関(UN Tourism)」と公式に表記されています。

なお、「世界観光機関(UN Tourism)」のアジア太平洋地域事務所は、日本の奈良県奈良市に置かれています。


【観光がもたらす「経済」「文化」「社会」への影響】

■観光がもたらす多様な経済効果

観光は、旅行者がお金を使うことで地域の経済を支えるだけでなく、人と人との交流や文化の継承、地域社会の活性化など、さまざまなところに影響を与えます。例えば、観光客が宿泊施設や飲食店、土産物店などを利用すれば、そこで働く人の雇用や地域の事業者の収入につながります。さらに、交通機関や観光施設、農業や食品産業など、観光客と直接関わらない産業にも、経済効果が波及することがあります。

特にインバウンド(訪日外国人旅行)は「見えざる輸出」とも呼ばれます。外国人旅行者が日本国内で宿泊や飲食、買い物などにお金を使うことで、地域外・国外から新たな資金を地方へ呼び込む効果があるためです。2024年の訪日外国人旅行消費額は、約8.1兆円と過去最高を記録しました。

■地域の「宝」が、観光によって受け継がれる

その土地ならではの祭りや伝統芸能、工芸、郷土料理、歴史的な建造物などは、観光の大切な資源です。こうした文化を「観光客に見てもらうもの」として発信することは、地域の人々が自分たちの文化の価値を改めて知るきっかけにもなります。

文化庁も「文化観光」について、文化資源の保存を前提に、その魅力を発信し、文化の保存・継承と地域活性化、経済との好循環を生み出すことを重視しています。文化を守ることと観光を盛り上げることは、必ずしも相反するものではなく、うまく結びつけることで、次の世代へ文化を受け継ぐ力にもなるのです。

■観光客が「地域」へもたらす影響とは

観光は、人口減少や少子高齢化が進む地域にとっても重要な意味を持っています。旅行者が訪れるようになれば、宿泊施設や飲食店、交通、観光施設などで雇用が生まれます。また、地域の自然や歴史、食、伝統文化などを生かした新しい観光コンテンツがつくられることで、これまで地域の外にはあまり知られていなかった魅力が発見されることもあります。

さらに、観光をきっかけに地域を訪れる人が増えると、その土地に繰り返し訪れる「交流人口」だけでなく、地域と継続的に関わる「関係人口」につながる可能性もあります。観光庁も、国内外からの交流人口・関係人口の拡大を、地域社会の持続的な発展につながるものとして位置づけています。

■「人と人をつなぐ」のも観光の役割

観光には、異なる地域や国に暮らす人々が出会い、互いの文化や価値観を知る機会をつくるという役割もあります。例えば、日本を訪れた外国人旅行者が、日本の食文化や祭り、歴史、日々の暮らしに触れる。一方で、私たちが海外を旅すれば、現地の人々の暮らしや考え方を知ることができます。

こうした一人ひとりの出会いや体験の積み重ねは、異なる文化への理解を深めるきっかけになります。観光庁も、観光を文化・歴史を学び、地域交流や社会貢献につながる機会と位置づけ、世界の人々との交流は、国際相互理解を促し、平和の基盤にもつながるとしています。

■観光には「光」の部分だけではない

ただし、観光客が増えれば増えるほど、地域にとってよいことばかりが起こるわけではありません。人気の観光地では、交通機関や道路の混雑、ごみの増加、自然環境への負荷、文化財への影響などが問題になることがあります。また、観光客が集中することで、地域住民の日常生活に支障が生じる「オーバーツーリズム」も課題となっています。


【いま注目される「サステナブルツーリズム」とは?】

■「サステナブルツーリズム」って何?

観光には、地域経済を活性化したり、文化を受け継いだり、人と人との交流を生み出したりする力があります。一方で、観光客が増えすぎると、自然環境への負荷や文化財への影響、地域住民の生活への負担など、さまざまな問題が生じることもあります。

そこで近年、注目されているのが「サステナブルツーリズム」です。これは、観光による経済的な利益だけを追求するのではなく、訪れる地域の自然や文化、そこで暮らす人々の生活を守りながら、観光を将来にわたって続けていこうという考え方です。

■「観光客」「地域」「環境」のバランスが大切

サステナブルツーリズムでは、旅行者にとって魅力的であることだけでなく、観光客を受け入れる地域にとってもよいものであることが重視されます。例えば、自然豊かな地域では、観光客の増加によって自然環境が損なわれないよう、入場者数を制限したり、遊歩道などの利用ルールを設けたりする取り組みがあります。また、歴史的な町並みや文化財を観光資源として活用する場合も、観光によってその価値が失われないよう、保存との両立を図ることが重要です。

つまり、地域の魅力を守りながら、その土地を訪れる人に楽しんでもらい、なおかつ、地域の人々に利益が還元される。そのバランスが求められているのです。

■「オーバーツーリズム」との違いから考える

サステナブルツーリズムを考えるうえで、近年、日本でも大きな問題となっている「オーバーツーリズム」は重要なキーワードです。人気の観光地に旅行者が集中すると、道路や公共交通機関の混雑、ごみの増加、騒音などによって、地域住民の生活に負担がかかることがあります。観光客にとっても、混雑によってゆっくり観光できなくなるなど、旅行の満足度が下がる場合があります。

こうした問題を避けるため、観光客を一時期や一部の場所に集中させない工夫や、地域の実情に合わせた受け入れ態勢を整えることが求められています。


【旅する私たちにできる「責任ある観光」】

■「責任ある観光」とは?

「サステナブルツーリズム」を実現するためには、観光地や観光事業者だけでなく、実際に旅をする私たち一人ひとりの行動も大切になります。そこで意識したいのが「責任ある観光」という考え方。

「責任ある観光」とは、旅行先の自然や文化、地域の暮らしなどに配慮しながら、その土地を訪れ、楽しむこと。単に「観光客としてルールを守る」というだけでなく、訪れる地域にできるだけよい影響を与え、地域の人々と観光客の双方にとって心地よい旅を目指すことでもあります。

■旅先の「ルール」を尊重する

まず大切なのは、その地域に暮らす人々がつくってきたルールやマナーを守ること。

旅行者にとっては旅先での一時的な体験でも、そこは住む人にとっては日常の暮らしの場。住宅地で大声を出さない、私有地や立入禁止区域に入らない、指定された場所以外にごみを捨てないなど、基本的なマナーを守ることが、地域の暮らしを守ることにつながります。また、寺社や文化財、自然公園などを訪れる際には、それぞれの場所で定められたルールを確認することも大切です。

■「地元でお金を使う」ことも旅の一部

旅先での消費も、地域を応援する方法のひとつ。地元の飲食店で食事をしたり、地域でつくられた食品や工芸品を購入したり、地元の事業者が提供する体験に参加したりすることで、旅行中に使ったお金が地域の事業者に還元されます。「せっかく旅行に来たのだから、その土地ならではのものを楽しむ」。そんな選択が、地域の産業や文化を支えることにもつながります。

■「自然や文化を守る」ことも忘れずに

美しい自然や歴史ある町並み、伝統文化は、観光客にとって魅力的なものですが、地域にとっては大切な財産でもあります。写真を撮るために自然の中へむやみに立ち入らない、野生動物に餌を与えない、文化財に触れたり傷つけたりしないなど、訪れた場所の価値を損なわない行動を心がけましょう。

また、混雑する観光地を訪れる際には、時期や時間帯をずらしたり、少し離れた場所を訪れたりすることも、観光客の集中を避けるひとつの方法です。

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旅行は、私たちに新しい景色や文化、人との出会いをもたらしてくれます。その一方で、訪れる人が増えれば、地域の自然や文化、暮らしに負担がかかることもあります。だからこそ、「自分が楽しめればいい」という視点から一歩進んで、「この場所がこれからも大切にされていくためには、自分に何ができるだろう」という視点が、とても大切。

「世界観光の日」は、観光が国際的な交流や経済、文化などに果たす役割について関心を高めていく日です。旅先のルールを守る、地域のお店を利用する、自然や文化を大切にする――。そんな小さな選択の積み重ねが、訪れる人にも地域の人にも、そして次の世代にも旅の魅力を残していくことにつながるのです。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉プラス』(小学館)/国連「World Tourism Day:Background」(記念日の由来・目的)United Nations/UN Tourism「World Tourism Day Celebrations」(1979年の制定経緯)www.untourism.int/UN Tourism「2026年のテーマに関する発表」(2026年のテーマ)www.untourism.int/ 外務省「世界観光機関(UN Tourism)」(組織の沿革・所在地)mofa.go.jp/観光庁「世界観光機関(UN Tourism)」(活動内容)観光庁/観光庁「インバウンド消費動向調査・2024年暦年確報」/同・2025年暦年確報(訪日外国人旅行消費額)www.mlit.go.jp :