金にあかせて、ディーラーで「一番高いヤツをくれ!」という光景を、今までに何度か目にしたことがある。別に非難するつもりはないが、せっかくならいろんなグレードを乗り比べたうえで、一番しっくりするモデルを選んだほうが長く愛せるのではないだろうか。そういいつつも、ボルボはちょっと違う。トップモデルならではの充実装備は、ブランドの「意思」をより強く感じさせてくれるのだ。

日本で最も使いやすいミドルサイズSUV

SUVらしい風格をたたえながらも、柔らかなラインでまとめたスタイリングは嫌味がなく、長く乗っても飽きがこない。
SUVらしい風格をたたえながらも、柔らかなラインでまとめたスタイリングは嫌味がなく、長く乗っても飽きがこない。
新世代ボルボに共通する、縦長のテールランプが格好いい。
新世代ボルボに共通する、縦長のテールランプが格好いい。

 近頃のボルボがとても気になる、という人は多いはず。人気を集める第一の理由は、デザイン。新たに開発したプラットフォームを元に形づくられる、伸びやかで居住性に優れたデザインはモダンで、北欧特有の温もりが伝わってくる。

 新しいプラットフォームは優れたボディ剛性と足回りの緻密なセッティングにより、洗練された乗り味をも実現。なかでもミドルサイズのXC60は、腰高で乗り心地がバタバタしがちなSUVにもかかわらず、サルーンもかくやの上質ぶりだ。これに、将来の自動運転を見据えた先進の運転支援技術が加わり、このうえなくラグジュアリーなドライブを味合わせてくれる。

クリスタル製シフトノブが象徴する上質な空間

スイッチを減らし、操作系を大型モニター画面で行えるように設計されている。シフトノブは前半分がクリスタル製。またT8 Twin Engine AWDインスクリプション」の前席には、マッサージ機能やベンチレーション機能も装備され、最高の居心地が味わえる。
スイッチを減らし、操作系を大型モニター画面で行えるように設計されている。シフトノブは前半分がクリスタル製。またT8 Twin Engine AWDインスクリプション」の前席には、マッサージ機能やベンチレーション機能も装備され、最高の居心地が味わえる。
始動ボタンやローラータイプの走行モード選択ダイヤルなど、細かな部分も上質につくられている。日頃触れることの多い部分へのこだわりが、オーナーを満足させるのだ。
始動ボタンやローラータイプの走行モード選択ダイヤルなど、細かな部分も上質につくられている。日頃触れることの多い部分へのこだわりが、オーナーを満足させるのだ。

 広々とした空間を日本の道で走りやすいサイズでデザインしたXC60のパワーユニットには、ディーゼルエンジン、2種類のガソリンエンジン、そして外部充電可能なプラグインハイブリッドが用意されている。それぞれ甲乙つけがたい出来栄えで、走行フィールと装備の差で絞り込んでいただきたいが、静粛性と充実した装備を重視するなら、プラグインハイブリッドの「T8 Twin Engine AWDインスクリプション」がいい。

 ガソリンエンジンで前輪を、高出力モーターで後輪を動かし、あらゆる走行シーンに対応するハイブリッドAWD(全輪駆動)の懐の深さは、SUVの特性である走破性の高さに大きく貢献するものだし、足回りはエアサスペンションを標準装備し、雲の上を走るような乗り心地。

 快適装備も満載だ。とくに、ボルボ製SUVのT8モデルだけに採用される美しいクリスタル製シフトノブは、頻繁に触れる部分だけに満足度は高い。オプション装備のBowers & Wilkinsプレミアムサウンド・オーディオシステム (他モデルでも装着可能)のクリアで透明感のあるサウンドが、クリスタル製シフトノブの凛とした存在感によって、一層際立つのだ。「一番高いヤツ」を選ぶのは成金主義的ではあるけれども、少なくともボルボに関しては、とても建設的な行為であると思う。

〈ボルボ・XC60 T8 Twin Engine AWDインスクリプション〉
全長×全幅×全高:4,690×1,900×1,660㎜
車両重量:2,170kg
排気量:1,968cc
エンジン:直列4気筒DOHCターボ&スーパーチャージャー+モーター
最高出力:318PS/6,000rpm
エンジン最大トルク:400Nm/2,200〜5,400rpm
駆動方式:AWD
トランスミッション:8AT
価格:832万4,074円(税抜き)

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この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。