女性の「生き方」に迫る話題作が目白押し!の2018年夏ムービー

映画に造詣が深いライター・坂口さゆりさんが、「大人の女性が観るべき」映画作品を毎月、厳選してお紹介します。ちょっとした空き時間に、お友達との語らいに、パートナーとのデートの参考になれば幸いです。

2018年7月は『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』、『セラヴィ!』、『未来のミライ』、『ラ・チャナ』、『悲しみに、こんにちは』の、計5本の作品をご紹介していきます。すべて7月~公開の作品です。

■1:『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』|ヒューマンドラマ

©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation 

映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』は、男女平等を求める運動があちこちで起こっていた1970年代の米国が舞台。「男性優位」の証明をかけて73年に実際に行われた、全米女子テニスチャンピオンと55歳のかつての男子世界王者との世紀のテニスマッチを描きます。

©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

全米女子テニスチャンピオンとなったビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)は、女子の次期大会の優勝賞金が男子の8分の1であると聞いて猛抗議。しかし、全米テニス協会から、「観客を呼べるのは男子の試合だ」と断言されてしまいます。彼女は試合をボイコットし、著名なジャーナリストであり友人の力を借りて、仲間の選手たちとともに女子テニス協会を立ち上げることに。フィリップモリスをスポンサーにつけて上々なスタートを切ります。

ところがある日、かつての世界王者で55歳のボビー・リッグス(スティーブ・カレル)から試合をやろうとの挑戦電話が。男性至上主義のボビーは再び世間の脚光を浴び、離婚をしかけている妻の愛を取り戻したいと考えていたのです。一度は断ったビリー・ジーンですが、結局、女のプライドを賭けて「男と女の決戦」に挑むことに…。

女より男が上⁉︎今に通じる、世紀の一戦を見逃すな

©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

主演のエマ・ストーンは「ラ・ラ・ランド」で華麗な歌とダンスパフォーマンスで観る者を魅了しましたが、今回は超一流テニスプレーヤーに挑戦。実は彼女、それまでテニスの経験がなく、ラケットを握ったことさえほとんどなかったとか。しかし、4ヶ月の特訓に、7キロの筋肉をつけて見事、アスリートへと変身しました。 映画は昨今の「#Me Too運動」やセクハラ問題に通じるタイムリーな作品ですが、舞台となった’70年代から50年近く経った今も、「男は女より優れている」という主張がまったく変わっていないことに、改めて驚かされます。

さらに、この映画は男女のバトルのみならず、同性愛にきちんとスポットが当てられているのも今どきかもしれません。実際にあったこととはいえ、「こういう展開!?」と驚く人もいるはず。観る人は自然と、自身の性差別意識と対峙することになりそう。「視点のダイバーシティ」がピリッと効いた1本です。

作品詳細

  • バトル・オブ・ザ・セクシーズ
    監督:ヴァレリー・ファリス&ジョナサン・デイトン 出演:エマ・ストーン、スティーブ・カレル、アンドレア・ライズブローほか。
    TOHOシネマズシャンテ他全国順次公開中。

■2:『セラヴィ!』|コメディ

©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE

オマール・シーを一躍スターにした大ヒット映画『最強のふたり』の名監督コンビによるフレンチコメディ。引退を考えているベテランのウェディングプランナーの元に、17世紀の城を舞台にした豪華な結婚式の依頼が舞い込みます。“面倒くさい新郎”のリクエストに応え、スタッフやバンドなどを用意しますが、スタッフたちは自由すぎ、長年付き合いのあるカメラマンも仕事よりも飲食に忙しい。

©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE

挙げ句の果てに、冷蔵庫の電源が切れ料理に支障は出るわ、花火は惨事になるわ…次から次へと予想外のトラブルが勃発。笑ってしまいながらも、果たして結婚式は無事に終わるのか、ハラハラしっぱなし。それだけに、結婚式の結末は感動もひとしおです。

管理職の立場で観たら、「こんな人たちとは絶対一緒に仕事をしたくな〜い!」と思わず叫んでしまいそう。でも、生きていくためには、やっぱり「人生こんなもの(セラヴィ!)」という精神が必要なのかもしれません。

作品詳細

  • セラヴィ! 
    監督:エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ 出演:ジャン=ピエール・バクリ、ジャン=ポール・ルーヴ、ジル・ルルーシュほか。
    渋谷・シネクイントほか全国公開中。

■3:『未来のミライ』|アニメ

©2018 スタジオ地図

『時をかける少女』『サマーウォーズ』など次々にヒットを飛ばしてきた細田守監督の最新作。妹が生まれたばかりの男の子・くんちゃんが、時空をこえて家族と出会う冒険物語。くんちゃんを“お兄ちゃん”と呼ぶ、未来からやってきた妹・ミライちゃんに導かれ、くんちゃんは大きな冒険に旅立ちます。幼い頃の「おかあさん」と一緒に大暴れしたり、「おとうさん」に似た青年にバイクに乗せてもらったり。そんな時空を超えた不思議な出会いを通して、くんちゃんは少しずつ成長していきます。

©2018 スタジオ地図

くんちゃんの声を担当した上白石萌歌さんは、最初ミライちゃん役のオーディションを受けにきたそう。細田監督の発案でくんちゃんの声に挑戦し、見事主演を射止めたそうです。

繋がる命に思いを馳せつつ、自分が存在していることに感謝したくなる映画です。

作品詳細

  • 未来のミライ
  • 監督・脚本・原作:細田守 声の出演:上白石萌歌、黒木 華、星野 源、麻生久美子ほか。
  • 7月20日(金)より全国公開。

■4:『ラ・チャナ』|ドキュメンタリー

©2016 Noon Films S.L. Radiotelevisión Española Bless Bless Productions

71歳の現役フラメンコダンサー、ラ・チャナの情熱と波乱の人生を描いたドキュメンタリー。世界中の映画祭で観客賞を受賞しているというのも納得の面白さ! 幼いころに叔父に才能を見出され、フラメンコの才能を開花させたラ・チャナ。18歳で結婚、出産した後も、夫がマネージャーとなり、ダンサーとしての名声はうなぎ上り。ダリやピーター・セラーズをはじめ、著名人をも魅了し続けるのですが、ある日、突然引退することに。男性優位のジプシーの世界で、夫に「黙って従え」と引退を余儀なくされたのでした。しかし、日常的に夫に暴力を振るわれ、「踊っている間生きている実感があった」彼女にとって、引退は「魂を持って行かれたのと同じ」。

©2016 Noon Films S.L. Radiotelevisión Española Bless Bless Productions

「踊るために生まれてきた」ラ・チャナは、その後、夫と別れて華麗なる復活を遂げます。そして新たな出会い。「良い人との出会いはお金では買えない」との彼女の言葉通り、最高のパートナーを得たからこそ、今も現役を続けていられるに違いありません。

生きる目的がわからなくなっている人、情熱を失っている人、人生に失望している人は必見! ラ・チャナの熱い思いや彼女の笑顔に、へこたれない勇気をもらえるはずです。

作品詳細

  • ラ・チャナ
  • 監督:ルツィア・ストイェヴィッチ 出演:ラ・チャナ、アントニオ・カナーレス、カリメ・アマヤほか。
  • 7月21日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。

■5:『悲しみに、こんにちは』|ヒューマンドラマ

©2015,SUMMER 1993

親を亡くしたカルラ・シモン監督自身が、初めて生と死に触れた幼少期の出来事を元に、幼い少女特有の心の動きを描いています。スペイン国内ではスペインのアカデミー賞「ゴヤ賞」で新人賞を受賞。2018年アカデミー賞のスペイン代表にも選ばれた作品です。

©2015,SUMMER 1993

両親を亡くした少女フリダは、バルセロナの祖父母の家からカタルーニャの田舎に住む叔父夫妻に引き取られます。母親の入院中、祖父母に甘やかされて育てられた彼女は、田舎で自給自足の生活を送っている叔父夫妻と幼い従姉妹のアナとの生活に、なかなか馴染むことができません。ある日、両親のいるアナへの嫉妬心からフリダはちょっとしたイジワルを仕掛けてしまい大騒ぎに。悲しみをうまく表現できず、親の死を受け止め切れない孤独な姿に胸が詰まります。それでも、少しずつ確実に成長していくフリダ。

孤独も怒りも喜びも見事に映し出した彼女の瞳が、忘れがたい印象を残しています。

作品詳細

  • 悲しみに、こんにちは
    監督・脚本 カルラ・シモン 出演:ライア・アルティガス、パウラ・ロブレス、ブルーナ・クシほか。
    7月21日(土)より渋谷・ユーロスペースほか全国順次公開。
この記事の執筆者
生命保険会社のOLから編集者を経て、1995年からフリーランスライターに。映画をはじめ、芸能記事や人物インタビューを中心に執筆活動を行う。ミーハー視点で俳優記事を執筆することも多い。最近いちばんの興味は健康&美容。自身を実験台に体にイイコト試験中。主な媒体に『AERA』『週刊朝日』『女性セブン』『朝日新聞』など。著書に『バラバの妻として』『佐川萌え』ほか。 好きなもの:温泉、銭湯、ルッコラ、トマト、イチゴ、桃、シャンパン、日本酒、豆腐、京都、聖書、アロマオイル、マッサージ、睡眠、クラシックバレエ、夏目漱石『門』、花見、チーズケーキ、『ゴッドファーザー』、『ギルバート・グレイプ』、海、田園風景、手紙、万年筆、カード、ぽち袋、鍛えられた筋肉
WRITING :
坂口さゆり
EDIT :
難波寛彦
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