日本での発売を2年前にとりやめていたホンダ・CR-Vが、モデルチェンジを機に再び手に入るようになる。プレミアム化著しいSUVにおいて、CR-Vも大人の装いを身につけている。それだけではない。クルマにとって最も重要な走りの質感においても、海外の高級SUVに引けを取らないレベルにまで高めているのだ。日本発売に先駆けて海外仕様を試乗したモータージャーナリストの大谷達也氏が、その出来栄えをリポートする。

ヨーロッパの道で徹底的に走り込み!

CR-Vは1995年に初代が登場。乗用車ベースのSUVブームを巻き起こした。5代目となる新型は、基本骨格から一新。7人乗り3列シート車も設定される。
CR-Vは1995年に初代が登場。乗用車ベースのSUVブームを巻き起こした。5代目となる新型は、基本骨格から一新。7人乗り3列シート車も設定される。
全長は約4.6mで、ホンダのコンパクトSUV、ヴェゼルよりも大きなミドルクラス。
全長は約4.6mで、ホンダのコンパクトSUV、ヴェゼルよりも大きなミドルクラス。

「このままではヨーロッパで売れない」

 2016年にアメリカ仕様を発売したあとで、新型CR-Vの開発陣はそう感じたそうだ。

 平均速度が低く、道も荒れていることが多いアメリカでは足回りの柔らかいクルマが好まれる。でも、ヨーロッパの人たちは高いスピードでクルマを走らせる。道だってアメリカほど悪くないから、高速域でも安心してコーナーを曲がれるしなやかで強靱な足回りが求められる。ホンダは当初、アメリカ仕様のCR-Vをベースにヨーロッパ仕様を開発する計画を立てていたが、この手法ではヨーロッパ車と互角の走りを実現するのは難しい。そう判断した開発陣は何週間もヨーロッパに滞在して各国で徹底的に走り込み、ボディ補強まで立ち返って新型CR-Vを仕立て直したという。

 こうして完成したCR-Vに、オーストリアのチロル地方で試乗した。なお、間もなく日本でも発売される新型は、このヨーロッパ仕様に準じた内容になる見通しだ。

 試乗を終えたとき、開発陣の努力は見事に報われたように感じた。

 市街地では、しなやかにサスペンションが上下するので快適性は上々。ところが高速走行やコーナリングでは足回りが力強く踏ん張ってタイヤの性能を十二分に引き出してくれる。快適性と操縦性を高い次元でバランスさせた足回りは、ドイツ製の最新モデルと比べても引けをとらない。

これ見よがしではない質感の高さ

SUVらしい見晴らしのいい室内。木目調素材やピアノブラックのパーツ、ソフトパッド を随所にあしらい、質感や触感を高めている。
SUVらしい見晴らしのいい室内。木目調素材やピアノブラックのパーツ、ソフトパッド を随所にあしらい、質感や触感を高めている。
レザーシートはデザインにも力を入れている。表皮とクッション材を一緒にキルティング加工し、立体感をもたせ、ステッチが映える工夫も。
レザーシートはデザインにも力を入れている。表皮とクッション材を一緒にキルティング加工し、立体感をもたせ、ステッチが映える工夫も。

全長4.6mのSUVに敢えてコンパクトな1.5ℓターボエンジンを搭載するあたりも、最近のヨーロッパ車に近い発想といえる。その性能は必要にして十分。全力加速のときはそれなりにエンジン音も聞こえるが、これとタイヤが生み出す軽いロードノイズを除けば車内はまずまず静か。今回は試乗できなかったものの、日本仕様にはi-MMDというホンダの最新ハイブリッドもラインナップされるので、こちらも楽しみだ。

 内外装のデザインに派手なところはないが、いずれも質感が高く、プレミアムブランドに見劣りしない仕上がりといえる。

 いや、それはデザインだけに限らない。新型CR-Vのたたずまいそのものが、妙に力んだところがなく、それでいて走りがよくて質感が高いように思う。だから、これ見よがしな派手好きには見向きもされなくとも、ホンモノ志向の強い男には頼りになる道具として役立ってくれるはず。3列シート仕様も用意されるほど室内は広いので、遊び道具をたっぷり積んでひとり遠くまで旅するには最適のSUVだ。

※このページで紹介した写真は、すべて海外仕様です。

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この記事の執筆者
自動車専門誌で長らく編集業務に携わったのち、独立。ハイパフォーマンスカーを始め、国内外の注目モデルのステアリングをいち早く握り、わかりやすい言葉で解説する。
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