成熟したクルマ社会を見据えたボルボの技術
数あるインポートカーのなかで、いま最も勢いのあるブランドのひとつが、スウェーデンのボルボだ。その理由として、第7回(ボルボ・S60)でも書いたが、古くから安全装備の導入に取り組んできたことが挙げられる。いま各社が導入している自動ブレーキシステムも、日本で最初に国交省の認可を取り付けたのはボルボだった。さらに2012年には世界で初めて歩行者用のエアバッグ(衝突時にボンネット上部の隙間からエアバッグが展開される)も導入している。パフォーマンスや快適性の追求だけでなく、成熟したクルマ社会にふさわしい技術の取り組みを支持するユーザーは確実に増えているのだ。

往年の角張ったデザインがモダンに進化!

XC90(プラグインハイブリッドモデル)
XC90(プラグインハイブリッドモデル)

デザイン面でも"ボルボらしさ"は増している。スタイリングやインテリアに柔らかな曲線を巧みに取り入れ、ぬくもりを感じさせるデザイン哲学は、13年ぶりに一新され、2016年から日本に導入されたフラッグシップモデル、XC90でより明確になった。柔らかな曲線のディテールを生かしながら、1980~90年代に一世を風靡した角張ったスタイリングのテイストを融合させ、唯一無二の個性を主張している。インテリアも同様で、素材を吟味し、モダンにレイアウトしたその様は、北欧家具さながらだ。気品に満ちたこの新しいデザイン哲学は他のモデルにも随時取り入れられていくことになっていて、ベーシックモデルのV40は、改良を機にフロントマスク周辺の意匠変更が施された。

北欧らしさを増したV40
 

 
 
上・下ともにV40
上・下ともにV40


V40といえば、歩行者用エアバッグを初搭載した戦略モデル。7月から日本に導入が始まった改良版では、歩行者用エアバッグを全車標準装備し、グレード体系を見直したほか、フロントフェイスを一新。XC90と共通の意匠をもつLEDヘッドライトを取り入れ、グリルも新しいデザインとなり、洗練さを増した。新ボディカラーの「アマゾンブルー」(写真上)も新鮮だ。インテリアでは「シティ・ウェーブ」と呼ばれる、北欧のソファを想起させるテキスタイルのシート(写真下)が選べるようになったほか、コンソール周りのパネルはデザインの異なる3種類のアルミが用意される。お披露目イベントでは、スウェーデンで食され、強烈な発酵臭を放つことで知られるシュールストレミング(塩漬けニシン)の缶詰が展示され、来場者の注目を集めていたが、ボルボもまた、長年に渡る「人に寄りそうクルマづくり」を粛々と発酵させ、美味なるクルマを求める紳士の欲求に応えている。もちろん、こちらは人を寄せ付けないような臭いを放つことはないのでご安心あれ!

〈ボルボ・V40 D4 インスクリプション〉
全長×全幅×全高:4370×1800×1440㎜
車両重量:1540kg
排気量:1968cc
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼル・ターボ
最高出力:190PS/4250rpm
最大トルク:400Nm/1750~2500rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:8AT
価格:439万円(税込)
(問)ボルボお客様相談室 ☎0120-922-662

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2018.2.11 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。