10月公開の「大人の女性が観るべき映画」4選
映画ライター・坂口さゆりさんが厳選した、「大人の女性が観るべき」映画作品を毎月お届けする本シリーズ。今回は、2018年10月公開の映画、『クレイジー・リッチ!』、『赤毛のアン 初恋』、『マイ・プレシャス・リスト』、『ガンジスに還る』の4作品をご紹介します。
■1:『クレイジー・リッチ!』| ラブコメディ
Precious読者に向けて「これはないな」とスルーしかけていた『クレイジー・リッチ!』。ところが、これが侮れなかった! 予想外の面白さだったんです!
中国系米国人のレイチェル(コンスタンス・ウー)は生粋のニューヨーカー。恋人ニック(ヘンリー・ゴールディング)が親友の結婚式に出席するというので、彼と彼の故郷シンガポールを旅することに。空港に着くや案内されたのはファーストクラス。実はニック、かの国でもとりわけ裕福な一族の御曹司だったのです……。
見かけは中国人でも精神は米国人のレイチェルが、桁違いに裕福なニックの中国人の母親エレノア・ヤン(ミシェル・ヨー)と大激突。さらに、ニックの元カノからも陰湿な攻撃が。これはもしやアメリカ対中国の代理戦争???
「クレイジーなほどリッチな世界」で繰り広げられるパーティーの数々は、度を超えすぎていて笑うしかありません。バチェラーパーティーの会場がなんと洋上に浮かぶ貨物船ですよ。当然、みんなヘリコプターに乗って会場へ。独身最後のバカ騒ぎに一体いくらかけるんだか(苦笑)。極め付けがニックの親友の結婚式! その額なんと4000万ドル! 教会の中に赤提灯が並び、青草生い茂る“田んぼ”が出現。バージンロードに水が流れる演出って一体……。
見ているだけなら相当楽しいけど、こんな結婚式を挙げたいという日本人はまずいないでしょう。それだけに、米国人や中国人を知るのにこの映画はうってつけです。
レイチェルの周りは敵だらけですが、そこは映画。彼女を支えるエッジの効いたサブキャラたちもしっかり登場。彼らの奮闘ぶりも楽しめますよ。さて、母子家庭に育ったレイチェルは、果たして身分違いの恋を成就することはできるのか? 現代版シンデレラストーリーを楽しんでください。
(Story)母子家庭で育った女性が身分違いの恋で葛藤するラブコメディ。ヒロインと対立する母親の気持ちに共感する人も少なくないかも。ヒロインの味方となる脇役陣のキャラも充実。
作品詳細
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『クレイジー・リッチ!』
監督:ジョン・M・チュウ 原作:ケビン・クワン 出演:コンスタンス・ウー、へンリー・ゴールディング、ミシェル・ヨー、オークワフィナ、ソノヤ・ミズノほか。
新宿ピカデリーほか公開中。
■2:『赤毛のアン 初恋』|ヒューマンドラマ
カナダのプリンス・エドワード島を舞台にした日本人にとってなじみの深い名作『赤毛のアン』。昨年第1弾の公開に続いて、『赤毛のアン 初恋』(公開中)、『赤毛のアン 卒業』(11月2日(金)から)が公開されます。
『赤毛のアン 初恋』は、13歳前後という微妙なお年頃のアンが主人公。マリラにしょっちゅう小言を言われながらもマシューと3人で楽しい日々を過ごしています。腹心の友ダイアナとの固い友情はますます強固になる一方ですが、ギルバートとはお互いに気になりながらも素直になれません。ところが、ある日、劇の公演最中にアンが乗った筏が流されてしまい……。
想像力豊かでドジでおっちょこちょい。幾多の失敗にもめげず、落ち込んでもすぐに立ち直るアンのキャラクターは最高です。努力家で彼女の明るい笑顔は見ているだけで心を和ませてくれます。『赤毛のアン 卒業』もぜひ。
問い合わせ先
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『赤毛のアン 初恋』
監督・脚本:ジョン・ケント・ハリソン 原作:L.M.モンゴメリ 出演:エラ・バレンタイン、サラ・ボッツフォード、マーティン・シーン、ジュリア・ラロンド、ドゥルー・ヘイタオグルー、ゾーイ・フレイザー、アマリア・フォークナーほか。109シネマズ二子玉川ほか全国順次公開中。
■3:『マイ・プレシャス・リスト』|ヒューマンドラマ
ハーバード大卒の超天才。なのにコミュニケーション力はゼロという“屈折女子”が、6つのリストにチャレンジしながら、少しずつ成長していく姿を描きます。
主人公のキャリー・ビルビー(ベル・パウリーは)ハーバード大卒でIQ185。にもかかわらず、友達もいなければ仕事もなし。ほとんど引きこもりのように家で暮らすコミュニケーション力ゼロの女性です。そんな彼女がある日、セラピストのペトロフから「このリストをやり遂げれば幸せになれる」と6つの課題が書かれたリストを渡されます。キャリーは抵抗しながらも、まずは金魚2匹を飼い始める……。
毎日をなんとなく過ごしている人、「私の人生低空飛」だと感じている人に勧めしたい本作。人生なんとかしたい、なんとかしなくちゃと思っていても、なかなか簡単にはいかないものです。でも、ほんの少し踏み出すだけで人生の扉は開くかも。他人とうまく交流できなくても、力になってくれる人や好いてくれる人は意外と出てくるもの。
自分が特別だなんてことは実はなく、よくよく周囲を見渡せば、映画が示してくれるとおり、相当“変な人”がいるのでは? 映画を見終わるころにはキャリーとともに前向きな気持ちになっている、はずです。
問い合わせ先
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『マイ・プレシャス・リスト』
監督:スーザン・ジョンソン 出演:キャリー・ピルビー、ガブリエル・バーン、ネイサン・レイン、ヴァネッサ・ヴェイヤー、コリン・オドナヒュー、ジェイソン・リッター、イウィリアム・モーズリーほか。
10月20日(土)から新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開。
■4:『ガンジスに還る』| ヒューマンドラマ
死後を悟った父が、インドのガンジス川が流れる聖地「バラナシ」で最期を迎えるまでを、父親と息子の関係を軸に、人生の幸せや家族との関係をユーモアたっぷりに描きます。
ある日、不思議な夢を見たダヤは死後の訪れを察知し、聖地バラナシへ行くことを宣言します。父親をひとりで遠く離れたバラナシへ行かせるわけにもいかず、仕事一筋の息子のラジーヴはなんとか上司を説得して付きそうことに。たどり着いた解脱の家は「解脱しようとしまいと、滞在は最大15日まで」のはずが、中には18年もの間滞在している女性もいて……。
息子の都合に全くかまわずにバラナシへ向かったり、せっかく息子がつくってくれた食事を感謝もせず「不味い!」と怒って出て行ってしまったり。そんなお父さんの堂の入ったわがままっぷりがなんともご愛嬌。日々忙しい人なら、父に振り回される、マジメな息子に同情するかもしれません。
とはいえ、仕事人間の彼が何もない「解脱の家」で父親と過ごすうちに、徐々に変化していく姿を見ていると、人間にとって本当に大切なことはわずかしかないと改めて思わされます。聖地バラナシだからこそ、息子と父のわだかまりも自然と紐解ける。神の恵みをいただくような幸せな時間を体感してください。
作品詳細
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『ガンジスに還る』
監督・脚本:ショバシシュ・ブディアニ 出演:アディル・フセイン、ラリット・べヘル、ギータンジャリ・クルカルニ、パロミ・ゴーシュ、ナヴニンドラ・べヘル、アニル・ラストーギーほか。
10月27日(土)から岩波ホールほか全国順次公開。
- TEXT :
- 坂口さゆりさん ライター
- WRITING :
- 坂口さゆり