スケジュールやタスクが満杯の状態で仕事を依頼されたり、飲み会に誘われたりしたとき、あなたはうまく断ることができるでしょうか?

日本人は「NO」を伝えるのが苦手だとよく言われます。内心では「ちょっと無理…」とアラートが鳴っていても、「断るのは悪いから」とつい依頼や誘いに応じてしまう人も多いはず。

しかし、それでは自分がどんどんしんどい状況に追い込まれますし、仕事の場合は安請け合いした結果、期限内に間に合わせることができずに、相手に迷惑をかけてしまう恐れもありますよね。

そこで、今回は人材育成コンサルタントの能町光香さんから、印象を下げずに仕事の依頼やお誘いを断る一言について教えていただきました。

コンサルタントが教える「印象を下げずに依頼やお誘いを断る一言」6選

■1:「~ならできそうなのですが、いかがでしょうか?」

自分のできる範囲で協力する姿勢を示す

スケジュールまたは能力的に、自分では無理筋な依頼を受けたとき、「無理です。できません」とけんもほろろに断れば角が立ちますよね。そこで、おすすめしたいのは、「~ならできそうなのですが、いかがでしょうか?」と、自分のできる範囲での対案を出すこと。

「例えば、昔、私が秘書をしていたとき、隣の営業本部の秘書から『営業部用の年賀状を2,000枚準備してもほしい』という依頼がありました。その際、『2,000枚は難しいのですが、300枚はいかがでしょうか?』と提案して、納得していただいたことがあります。

仕事の分量ではなく内容面で難しい場合も、同様です。『明日の会議で通訳をお願いしたい』という依頼に対し、『メインの通訳は私では力不足ですので、議題のなかで比較的通訳が簡単な部分を補佐させていただくというのはいかがでしょうか?』など、相手との妥協点を探るようにしましょう。

また、“自分のできそうなライン”をその場で瞬時に判断できない場合は、相手に『他で何かお力添えできることはありませんか?』と尋ねてみるのもありです」(能町さん)

能町さんによれば、“断る”というのは決して悪いことではなく、一種のコミュニケーションであるとのこと。相手の依頼を全面的に受け入れることはできなくても、「自分はなんとか協力したい」という姿勢を示せば、同じ「NO」でも相手に与える印象はかなりよくなることでしょう。

■2:「今回に限っては見送らせていただけますでしょうか?」

仕事の依頼を断ることに苦手意識や強いプレッシャーを感じている人は、「NO」を伝えることが相手の存在そのものを拒絶するものであるかのように深刻に捉えすぎているのでは? そんな人におすすめしたいのは、「今回に限っては」というフレーズです。

一度断ったくらいでつむじを曲げてしまう人は滅多にいませんし、もし、万が一そんな人が存在したとしても、それはあなたが悪いのではなく、相手側の問題だといえます。「今回に限っては」と範囲を限定すれば、断ることに対する罪悪感も軽減できますし、相手も別の機会に気兼ねなくあなたに仕事を依頼できることでしょう。

■3:「私ではお役に立てないような気がしますので」

危険人物から距離をおくための断り術

職場にはいろんなタイプの人間がいて、なかには他人を利用したり振り回したりするのが自分の当然の権利だと思い込んでいる人物もいます。この手の輩は、相手の都合などおかまいなしに、次から次へと無茶ぶりをしてきて、素直に応じていると要求がエスカレートする一方……。

そうした危険人物との間に境界線を引きたいときに使えるフレーズが「私ではお役に立てないような気がしますので」です。

「誰にでもいい顔をしようと気を遣いすぎると、あなたの時間もエネルギーも奪われてしまいます。相手からどんなに理不尽なことを言われても受け入れていると、いつのまにかモラハラの犠牲者になってしまうこともありますので、きっぱりと断ることも大切です」(能町さん)

きっぱり断るといっても、「できません」「嫌です」では相手の感情を逆撫ですることになりかねません。また、引き受けられない理由を誠実に説明しようとすると、言葉尻をとらえられて、結局は相手のペースに巻き込まれてしまうこともあります。あくまで「私ではお役に立てない」と自分の力不足を言い訳にして、理不尽な要求は回避するようにしましょう。

■4:「ありがとうございます。あいにく~の予定がありますので」

理由をさらりと伝えれば嫌われない

飲み会などのお誘いの断り方は、極めてシンプル。誘ってもらったことに対して感謝は述べつつ、断る理由をシンプルに伝えるだけです。

「私たち日本人は、断ることを必要以上に恐れています。それで、気乗りしない誘いにも、その場では返事を保留して、『都合がつけば行きたい』などと言いがちです。

でも、そういった曖昧な返事をしたり、ハッキリしない態度をとったり、ギリギリになって返事をしたり、あまつさえ、ドタキャンしたりするほうが、結局は相手を困らせてしまうことになるのではないでしょうか。相手とよりよい信頼関係を築いていくためにも、断るならなるべく早めに断りましょう」(能町さん)

下手な社交辞令は、かえって立場を悪くするだけ。感じよく断るには、言葉よりもタイミングが重要だと心得ましょう。

■5:「勉強する時間をいただきたいのですが」

スキルアップのための勉強は理解が得られやすい

お誘いを断る際は、理由を一言説明する必要がありますが、仕事に関係する勉強と言えば、職場での納得を得られやすいとのことです。

「以前、ある秘書の方から、上司のランチの誘いを断るにはどうすればいいのか相談を受けたことがあります。というのも、彼女の前任の秘書は、上司と毎日ランチを一緒にとる習慣があったそうなのです。他方、彼女はお昼休みをマイペースで過ごしたいという考えでした。

そこで、彼女には『秘書検定の勉強の時間が必要ですので、ランチはひとりでとることをお許しいただけないでしょうか?』と上司に提案するようにアドバイスしました。仕事のスキルアップのためであれば……ということで、その提案は上司から快諾してもらえたそうです」(能町さん)

もちろん、公言したからには、しっかり勉強の成果を示す必要もありますが、角の立ちにくい断りフレーズとして押さえておくと重宝しそうですね。

■6:「30分だけご一緒できそうなのですが」

取引先と適切な距離を保つには?

取引先やお客様など、社外の人から飲み会やランチに誘われたら、無下に断るわけにもいきませんよね。とはいえ、気乗りしない相手からのお誘いに応じ続けるのは精神衛生上よくありませんし、場合によってはかえって距離感がおかしくなって仕事がやりづらくなることもあります。

あくまで仕事上の付き合いとして適切な距離を保ちたい相手からのお誘いをやんわり断りたいときには、自分から上限を示すのがおすすめとのことです。

「例えば、午前中の打ち合わせが終わった流れで、『一緒にランチでもいかがですか?』と異性の取引先から誘われたケースを想定しましょう。相手と一定の距離を保ちたい場合には、『ありがとうございます、あいにく午後からの仕事が立て込んでおり、30分でしたらご一緒できそうなのですが……』のように、自分のラインをはっきり示すのがよいかと思います」(能町さん)

仕事の依頼を断りたいときに対案を示すのと同じ原則ですが、ただ受身の姿勢になるのではなく、自分から「~でいかがでしょうか?」と提案をすることで、相手に嫌な思いをさせず、かつ、自分も無理しないで済むということなんですね。お互いにとってメリットのあるコミュニケーション術だといえるでしょう。

能町さんによれば、断ることは必ずしもネガティブな行為ではなく、むしろ、上手に断ることができるようになれば、それまで以上に相手とよい関係が築けるようになるとのことです。「断るのは申し訳ない」という思い込みは捨てて、ぜひ今回ご紹介したフレーズを活用しましょう。

能町光香さん
人材育成コンサルタント
(のうまち みつか)株式会社リンク代表取締役、日本秘書アカデミー代表。青山学院大学、The University of Queensland大学院卒業。10年間、ティファニー、バンクオブアメリカ・メリルリンチなどの外資系企業で10名の経営層を補佐するエグゼクティブ・アシスタント(社長・重役秘書)を務め彼らのパートナーとして活躍した後、独立。現在は、日本秘書アカデミーを主宰し、経営者や管理職と秘書が幸せに働く職場の環境づくりを目指し、コンサルティングや企業研修を行っている。21万部ベストセラー『誰からも「気がきく」と言われる45の習慣』など著書多数。
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この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美