研ぎすまされた感性で独創的な香りの世界を築く「トム フォード ビューティ」。その構築的なボトルからは、洗練と優美が香り立つ。男女どちらからも愛される稀有なブランドである理由は、素材と調香に贅を尽くし真のラグジュアリーを極めているからだ。選び方、愉しみ方を『Precious』で活躍しているビューティ・ディレクター、松澤章子さんが女の視点で、男が纏うべき香りを解き明かしてくれた。
Weekdayはコミュニケーションを意識して選ぶ『シグネチャー コレクション』。名前よりも肩書きよりも、香りは男の価値を語る
女はすでに知っている。香りは人と人とのコミュニケーションを円滑にする重要なツールであることを。名前よりも的確に個性を表し、肩書きよりもその人の価値を語り、言葉よりも雄弁に思いを伝えるものであることを。だから夫や恋人はもちろん、上司に部下、周りにいるすべての男たちに、薄っぺらな印象の香りや体臭をマスキングするための強い香り、男らしさを盛ることを狙ったあざとい香りなどつけてほしくはないのである。
「香りはあなたそのものだ」。デザイナー自身がそう語る『トム フォード シグネチャー コレクション』こそ、女が男に纏ってほしい香りの象徴といえるだろう。稀少な香料を贅沢に用いて完璧なるバランスを目ざしたフレグランスは、仕立てのいいシャツやジャケットがそうであるように、しなやかに体に寄り添い肌と一体化。動きに洗練と優雅を生み、揺るぎない自信を内から湧き立たせてくれるはずだ。
たとえば日中のビジネスシーンには端正なスーツを連想させる『グレイ ベチバー』を選択。軽快さと落ち着き、高揚と冷静の絶妙なバランスがスマートで有能な人と印象づける。そして仕事先からディナーやパーティに出席といった場面転換には、光沢感のある香り『ノワール』をひと吹きしてツヤを加えよう。スーツを着替えるほど大げさではなく、ポケットチーフだけチェンジするような気軽さで夜の装いへシフトが可能だ。
毎日、香りのクローゼットから時と場にふさわしい一品を選ぶことを習慣にしたい。着こなし、着替えることでフレグランスは「あなたそのものの香り」へと昇華するのだから。
仕立てのよい香りがクールエレガンスを体現
スモーキーなベチバーを核としたフレグランスは、「トム フォード」の真骨頂ともいえるスレンダーでクールなスーツスタイルを想わせる。「男くささ」がでしゃばることなく、洗練とモダニティが軽やかに香り立って女性にも好感度が高い。ビジネスシーンにふさわしい定番を探しているなら、迷わずこの香りを。
シルクのツヤを湛えた香りで夜の装いへとシフト
仕草や言葉にセンシュアルな男を感じさせながらも、少年のようにナイーブな表情が見え隠れ…そんな二面性に女は心を惹かれる。この香りは男の中にある美しき矛盾を映しだし、セクシーなのに品がいい。シルクの光沢となめらかな手触りを感じさせる「漆黒の香り」はフォーマルな席にも。
Vacanceに連れていきたい『プライベート ブレンド』。非日常を豊かで特別な時間に変えるために
だれかとのコミュニケーションを意識して香りを選ぶことも必要だが、一方で自分だけの愉しみとして香りを我儘に選ぶことも忘れてはいけない。「トム フォード」が「香りの実験室」と称し、自由な発想でつくり上げた『プライベート ブレンド コレクション』は、男と女がともに人生を謳歌するためのジェンダーレスなフレグランスだ。ラインナップは26種に及ぶが、それぞれに込められた物語が想像力を掻き立て、いくつも収集したい欲望に駆られてしまう。
とりわけプライベートな時間を豊かに彩ってくれるのは、旅をテーマにした香りだ。彼はかつて訪れた思い出のリゾートや未だ見ぬ幻想の楽園を、香りの絵筆で叙情的に、あるいは抽象的に描きだしている。それは私たちが旅にあるときも、いつもの場所から旅を想うときにも、非日常感を増幅してくれる魔法のエッセンス。香りを漂わせた瞬間、その空間は自分だけのサンクチュアリとなり、ハイダウェイとなるのだ。
この夏のパートナーには、ジョン スタインベックも愛した南イタリアの高級リゾートを描く『ソーレ ディ ポジターノ』はどうだろう。こんな香りを男がつけていたら、女は太陽にキスされているような温もりと幸福感に満たされる。あるいは男女ともにファンが多いという『ソレイユ ブラン』はふたりで仲よくシェアしたい香りだ。プライベート アイランドの休日をイメージした香りは、南国の花の蜜のように甘く、白昼夢のような心地よさで、何気ない時間を特別な記憶に変換する。人は常に「ここではない何処か」へ連れ去ってくれる香りを心から求めている。女も、そしてたぶん男も。
南イタリアの光があふれる、色鮮やかな香りの楽園
文豪スタインベックが「夢の場所」と語ったリゾート地の輝きを、「トム フォード」が鮮烈な香りに表現。はじまりは煌めくような太陽光と南イタリアの果実が弾けるグリーン シトラス。イランイランとサンダルウッドの官能が漂い、ムスクとグリーン モスの優しさに包まれるラストシーンへ。
蜜より甘い秘密を共有し、だれもこない島にエスケープ
究極の隠れ家というべきプライベート アイランド。そこで過ごすラグジュアリーな休日をロマンティックな映画のように綴る香りは、恋するふたりでシェアしたい。フローズン ココナッツ ミルクの甘い香りを乗せた風、みずみずしく咲き誇る花、エキゾチックなスパイスのBGMが心地いい。
※使用した商品の価格はすべて、本体のみ(税抜)の価格です。
問い合わせ先
- トム フォード ビューティ TEL:03-5251-3541
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- BY :
- 『MEN'S Precious夏号』小学館、2017年
- クレジット :
- 撮影/戸田嘉昭(パイルドライバー) スタイリスト/小倉真希 文/松澤章子 構成/五十嵐享子