【目次】

「ピアノの日」とは? 意味・由来・いつなのか解説

■7月6日は「ピアノの日」

江戸時代の文政6(1823)年に、日本に初めてピアノが持ち込まれたことに由来する記念日です。

■日本に持ち込んだのは誰?

ドイツ人医師のシーボルトが、来日時にピアノを持ち込み、それを日本人が目にした日が7月6日だとされています。

■日本初のピアノとの関係

シーボルトは、江戸時代後期に日本を世界に紹介した人物として知られていますよね。海外に日本のことを紹介しただけでなく、長崎の郊外に私塾兼診療所の「鳴滝塾」を開き、地域医療に従事するとともに、日本人に西洋医学や自然科学を教えて多くの優秀な医師を育成しました。

西洋の文化や芸術も日本に広めたい、文化的な交流も必要だと思い、その道具として美しい音色を聴かせ;るピアノを持ち込んだと言われています。


【シーボルトとピアノ|日本渡来の歴史をわかりやすく説明】

■鎖国中に来日

1796年、ドイツ南部の医学者の家に生まれたフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト。若いころから東洋に興味を持っていた彼は、1823年に長崎・出島のオランダ商館の医師として来日します。ドイツ人の入国は禁止されていたため、オランダ人と偽っての来日でした。当時はまだ鎖国中ですから来日した外国人は出島から出られませんが、オランダから「シーボルトは優れた医師なので、出島から出して日本の医術に役立ててほしい」という申し出があったため、長崎奉行は長崎郊外に鳴滝塾を開くことを許可し、シーボルトはさまざまな人と交流しました。塾生たちに最新の蘭方医学を教え、日本人女性と子どもをもうけますが、その女児はのちに「オランダおいね」の愛称で知られる、西洋医学を学んだ日本人初の産科医になるんですよ。

■日本地図で国外追放?

来日して5年、任期が切れて帰国することになりましたが、帰国の荷物の中に幕府禁制の品(日本地図)があることが発覚し、なんと国外追放に! これが俗に言うシーボルト事件です。

文政9(1826)年の春、オランダ商館長の使節団のひとりとして江戸へ出向いたシーボルトは、日本研究を深めるためにさまざまな資料を手に入れていましたが、その中にあったのが、伊能忠敬らが作成した地図「日本沿海輿地全図」でした。帰国のためシーボルトが乗る船が台風の被害に遭って座礁、奉行所は被害を報告するため積み荷の検査をしたところ、持ち出し禁止の日本地図や名所絵、日本刀などが発見されたという訳です。

■ドイツ帰国後、日本を世界に

こうしてドイツに帰国したシーボルトは、長崎や江戸で見聞きした日本について、『日本』や『日本植物誌』といった著書でヨーロッパに広く紹介しました。やがて江戸幕府が鎖国をやめて外国と貿易を行うようになると、シーボルトの追放処分は解かれ、幕末の安政6(1859)年に再び来日しています。

■外交のためのピアノ

シーボルトがオランダ船で長崎の出島にやってきた際、荷物の中にあったのがイギリス製のスクエアピアノ卓上型の横長ピアノです。言葉や文化の違いを美しいピアノの音色で埋めようという、シーボルトなりの外交の道具だったのです。

また、琴や三味線の楽曲や民謡などの日本の伝統音楽をピアノの音程で確かめ、五線譜に書き起こすことにも使われました。シーボルトは帰国後、生活文化や植物学だけでなく、日本の音楽をヨーロッパに体系的に紹介するという功績も残しています。

■現存しているシーボルトのピアノ

シーボルトが帰国する際、日本に置いていかざるを得なくなったこのピアノは、シーボルトが長崎で親交のあった萩の豪商・熊谷五右衛門義比に贈ったものと伝わります。現在は山口県萩市の熊谷美術館に保存・展示され、日本に現存する最古のピアノとして知られています。なお、熊谷美術館の建物である熊谷家住宅は、主屋・離れ座敷・本蔵・宝蔵が国の重要文化財に指定されています。


【ピアノは誰が発明した? 起源と歴史】

■ピアノの起源

現在のピアノの原型をつくったのはイタリアの職人、バルトロメオ・クリストフォリといわれています。彼はチェンバロの音が強弱の変化に乏しいことを不満に思い、1700年ごろにハンマーで弦を打って鳴らすという、現在のピアノにつながるメカニズムを発明。彼はこのメカニズムを備えた楽器を「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」と名付けました。直訳すると「弱音も強音も出せるチェンバロ」という意味ですが、この名前を短くして「ピアノ」と呼ばれるようになりました。

■時代や音楽家のタイプによって改良

18世紀後半、モーツァルトが活躍した時代には、ドイツの職人たちがクリストフォリの設計をさらに軽やかで弾きやすく改良しました。これが軽快な音色を好んだモーツァルトをはじめとする当時の一流音楽家に愛され、ピアノは一気にヨーロッパ中に広まりました。

そして19世紀。ヨーロッパの音楽の主役はベートーヴェンに移り、彼の情熱的で激しいプレイスタイルに耐えられる、丈夫で大きな音を奏でるピアノが開発されます。

19世紀半ばになると、フランスの「エラール」やアメリカの「スタインウェイ」といったメーカーが、現代のピアノとほぼ同じ仕組みを完成させます。 鍵盤が戻る前に次の音を連打できる「ダブル・エスケープメント」という仕組みなどが開発され、リストのように超絶技巧的演奏を得意とするピアニストが誕生しました。

■シーボルトのピアノは家庭用

シーボルトが日本に持ってきた「スクエアピアノ」は、ピアノが進化していくなかで家庭用として大流行していた、コンパクトな四角いタイプのピアノです。


【グランドピアノとアップライトの違いとは?】

現代のピアノは、「グランドピアノ」「アップライトピアノ」「電子ピアノ」と大きく3種類。ここでは、形以外の違いがよく分からないという人が多そうな「グランドピアノ」と「アップライトピアノ」の違いについて簡単に解説します。

■グランドピアノ

共鳴箱の中に弦を水平方向に張ったピアノ。「平型ピアノ」とも言います。大型で、3脚の脚が付いているのが特徴です。鍵盤を叩くと下から上にハンマーが跳ね上がり、重力で自然に落ちて戻るので、無駄な力が入らず、連打や震音(トリルとも)といった奏法もスムーズに行えます。

演奏音に関しては、小さな囁きから雷のような大音量までと自在で、全体から包み込むように響くのがグランドピアノ最大の特徴です。

■アップライトピアノ

直立した共鳴箱の中に弦を縦に張ったピアノ。「竪型(たてがた)ピアノ」とも言います。横から前に向かってハンマーが弦を叩くため、戻すためにバネの力を借りる必要があります。どうしても戻りが一瞬遅くなるため、連打や震音などではグランドピアノとの違いが出てしまいます。

響板が背中側に付いているため、多くの場合、壁に向かって音が放出される形になり、音が少しこもって聴こえがち。音量の幅がコンパクトなので、演奏ホールのような施設より、家庭で弾くのに向いています。


【ピアノはなぜ88鍵? 音の仕組みを解説】

初期のピアノは54鍵しかありませんでしたが、ピアノ音楽の発展と共に、より幅広い表現力を求める作曲家たちの求めに応じて鍵盤の数が増えていきました。鍵盤の数が増えるということは、音域が広がるということ。1890年代には、現在の88鍵が定着しました。

■「人間の聴覚の限界」で88鍵に

人間の耳は、約20ヘルツから20,000ヘルツまでの範囲の音を聴き取ることができると言われていますが、音程として聴き分けることができる上限はせいぜい4000ヘルツぐらいまで。88鍵以上増やして音域を拡大しても、人間の耳には低音はゴロゴロという唸りのような音に、高音は耳障りなノイズにしか聴こえないのだそう。88鍵以上あっても、音楽的には意味がないといわれています。


【日本の有名なピアニストは?】

「いま最もコンサートチケットが取れない」といわれる現代の人気ピアニストは? ぜひ知っておきたい方々をご紹介します。

■石井琢磨さん

演奏家としての実力に加え、発信力や親しみやすさでも支持を集める存在。ウィーンを拠点に本格的な演奏活動を展開するかたわら、YouTubeチャンネル「TAKU-音 TV たくおん」を通じて広くクラシック音楽の楽しさを届けています。ウィーン仕込みの気品あふれる美しい音色と、動画で見せる親しみやすいキャラクターのギャップも魅力。1989年、徳島県生まれ。

■牛田 智大さん

2012年2月、第16回浜松国際ピアノアカデミー・コンクールにて、最年少(12歳)で1位を受賞。クラシックの日本人ピアニストとして、最年少でユニバーサル ミュージックよりCDデビューを果たした若き天才奏者です。1999年、福島県生まれ。

■亀井聖矢さん

  • 現代の若手のなかで、最もダイナミックな超絶技巧をもつと言われる新世代の天才ピアニスト。2022年、ロン=ティボー国際音楽コンクールにて第1位を受賞。併せて「聴衆賞」「評論家賞」の2つの特別賞を受賞という快挙も。2024年7月から9月に開催された日本ツアーでは、全16公演で約2万人を動員し、若者を中心に熱狂的な人気を得ています。

■角野(すみの)隼斗さん

東京大学大学院卒の理系頭脳をもち、YouTubeでは「Cateen(かてぃん)」名義でチャンネル登録者数150万人を超える異色のピアニスト。クラシックの超絶技巧の土台を持ちながら、ジャズやポップスも演奏し、作曲・編曲も手がけるなど、ニューヨークを拠点に世界的な活動を加速させています。2024年の自身の誕生日には、1万3000人という、日本武道館での単独ピアニスト公演として史上最多の観客数となったコンサートを成功させました。1995年、千葉県生まれ。

■藤田真央さん

ドイツのベルリンを拠点に国際的な活躍を重ねながら、ますます存在感を高めている藤田真央さん。精緻さと詩情をあわせ持つ演奏は、世界中の指揮者やオーケストラからラブコールが鳴り止まないのだとか。極上のタッチと、天真爛漫な音楽性を武器に、多くのクラシックファンを魅了し続けています。1998年、東京都生まれ。

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クラシック音楽に親しむきっかけがない…という人もいるのでは? JポップやKポップのように身近ではないと感じるかもしれませんが、実は街中でもテレビでも、クラシック音楽はあちこちで使われています。「ピアノの日」をきっかけに、いつもの音楽ではなく、ピアノ演奏のクラシックを聴いてみるのもおすすめです。ご紹介した今人気のピアニストの演奏も、公式ホームページやYouTubeチャンネルなどで聴くことができますよ。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉プラス』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/小野ピアノ工房調律センター/YAMAHA :