大人の女性は、伝統ある和菓子屋店や高級な洋菓子店、例えば「とらや」や「ブルガリ イル チョコラート」などの実店舗へ、手土産を買いに行く機会がよくあるのでは?

そういったお店では、ぜひエレガントに振る舞って、買い物を楽しみたいものです。そこで、ラグジュアリーな菓子店での注文・買い物時の振る舞い方を、イメージコンサルタントやプロトコールマナー講師を育成するスクールを主宰する大松 茜さんに教わります。

高級菓子店でこれはNG!でもどうして?

まずはNGな行動からチェックしておきましょう。高級菓子店では、次のことがNGな行動と考えられます。なぜいけないのか、大松さんに教えていただきました。

■1:大きな声でしゃべりながら入店するのはNG

「ラグジュアリーな和菓子店や洋菓子店の店内では、静かに商品を選んでいる他ののお客様への配慮も必要です。また上質な立ち居振る舞いは、老舗や格式高いお店に対する敬意への現れでもあります。入店する際も相手に対する美しい心遣いを忘れず、心がけください」

■2:質問や注文時、店員さんに敬語を使わないのはNG

注文の際の言葉遣いは、他のお客様への配慮にもなります。
注文の際の言葉遣いは、他のお客様への配慮にもなります。

「質問や注文がタメ口では、店員さんもいい気分はしません。また、近くにいる他ののお客様もきっと嫌な気持ちになってしまいます。心地よい言葉選びをしながら話をできる人は、品性を感じ心地がよいものです。上質な空間を心地よく保つためにも美しい言葉遣いは大切なマナーです」

■3:店員からの声かけに無反応なのはNG

「無表情や無視は、やはり相手への思いやりに欠けます。気品のある人はいつも思いやりの心を忘れてはなりません。例えば、とらやなどであれば、期間限定の季節や行事に合わせた品が多くあります。次のように返すのはいかがでしょうか。

『とても春らしくて素敵なお品ですね。こちらをおひとついただけますか』。笑顔を添えるともっと素敵です。もちろん、必ず購入する必要はありません。ただしお断りする際も不作法な態度ではなく、『春らしくて素敵ですね。ただ、今回はお取引先のお客様が定番のこちらが大好物なものですから、今回はこちらをひとつお願いいたします」など、お断りする際も、心遣いのある美しい返答と笑顔で大人の余裕と気品ある対応をしましょう」

■4:店員さんに対して慣れ慣れしく、しゃべり倒すのはNG

「相手との距離をきちんと考慮したパーソナルスペースを配慮してコミュニケーションできることは、気品ある紳士淑女には必須条件です。パーソナルスペースとは、お相手との関係や文化などを考慮したちょうど心地のよい距離感のこと。格式高いお店の店員さんの距離感を考えると、正しくパーソナルスペースが守られていないことになり、相手が不快に感じてしまいます。

人懐っこくおしゃべりな方は、悪気はないのかもしれませんが、格式あるお店ではいつもより少し控えめに振る舞うよう心がけるとよいかもしれません。例えば、店員さんから話かけられたことに対して、すぐに急いで返すのではなく、大きくゆっくりと笑顔でうなずき、ひと呼吸、間をおいて話すことを心がけると気品のある話し方になります。ぜひお試しください」

■5:質問時や注文時に偉そうな態度を取るのはNG

美しい振る舞いは、品格を高めます。
美しい振る舞いは、品格を高めます。

「これは相手も不快ですし、自分自身の品を下げてしまいます。フランスでは、店員とお客様は対等という文化。入店した際は、外から入ってきたお客様から先に、店員へ挨拶するのが一般的です。挨拶やお礼の言えないお客様は歓迎されないのです。

日本ではおもてなしの文化が浸透しているからでしょうか。ついついお客様が偉いと思いがちになってしまうのかもしれません。しかしながら、美しい振る舞いは相手を心地よくさせるだけではなく客自身の品格を高めてくれるものです。『こちらのお品をおひとついただけますか』ときちんとお伝えしましょう。その際に贈り物の場合はその旨もあわせて伝えるといいですね」

その他の高級菓子店でのNGマナー

その他、服装や姿勢も気をつけるべきと大松さんは話します。

●カジュアルな服装

「ドレスコードはございませんが、格式ある高級店などへ行く際にはそのお店にふさわしい装いを心がけるといいです。カジュアルな装いは店内の格式高い雰囲気が一気に台無しになってしまい、ラグジュアリーな空間を楽しんでいる他のお客様も不快な気持ちにさせてしまうことがあるためです」

●姿勢や歩き方が不恰好

「姿勢や歩き方にも注意を払いましょう。姿勢が悪かったり、お尻を突き出してショーウインドウをのぞき込んだりするのは、とても不格好です。気品ある美しい姿勢を心がけましょう。

また歩き方においてはドタドタ音をたてて歩かず、静かに優雅に歩くよう心がけてみてください」

エレガントな入店から退店までの流れ

続いて、高級菓子店へ入店して買い物をし、退店するまでの流れに沿って、エレガントな女性としてのマナーある行動を見ていきましょう。

■1:入店前

お店に合わせた装いで入店しましょう。
お店に合わせた装いで入店しましょう。

「入店前に、服装や身だしなみをチェックしましょう。格式高いお店に対する敬意が感じられる装いができると上級者です」

■2:入店

「前述したように、フランスでは外からお店に入ってきたお客様が、先に店員へ挨拶します。日本でも軽く会釈をし、笑顔で挨拶できるだけでも、とても素敵です」

■3:商品チェック

「品物の前で、ほかのお客様のお邪魔にならないよう配慮しながらチェックします。また、ショーケースに手で触れてしまい、指紋が付くようなことがないよう配慮しましょう。姿勢を正して、少し口角を上げ、フォーマルな美しい表情を意識してみてください」

■4:店員への質問

「質問は、頭の中で一度整理し、すべての質問をまとめ、ある程度、どのお品を購入するのかふたつぐらいに絞ってから質問するといいですね。お店の方が質問へご回答くださった後にどれを購入するのか、またはしないのか、すぐに答えられる状態が望ましいでしょう。スマートな流れを意識すれば、お店の方と自分自身双方の心地よさにつながります」

■5:注文

注文の際に、用途を伝えると親切です。
注文の際に、用途を伝えると親切です。

「注文するときには、『それでは、こちらをおひとついただけますか』とはっきりと購入の意思をお伝えします。贈り物であれば、そのことも合わせて伝えてください。『のし』が必要な場合は、用途とあわせて、外のし、内のしのどちらにするかも伝えます。

また、のしに記載する名前の書かれた名刺を渡すとスマートです。記載する用紙に書く場合、なるべく分かりすい字で丁寧に記載します」

■6:支払い

「現金ではなく、カードでスマートに支払いをしましょう。ヨーロッパなどでは、現金は盗難やスリなどの危険があるため、ある程度、高額なものはカードで支払います。そのため現金のやり取りはカジュアルなお店がほとんどです。日本でも、格式のあるお店では、なるべく現金ではなくカードでスマートに支払いを済ませてみてはいかがでしょうか」

■7:退店

「ぜひ、退店時はお礼も忘れないよう、笑顔で素敵な買い物ができたことへの感謝の気持ちをきちんと伝えましょう」

最後に、大松さんは格式のあるお店での買い物マナー全般について次のようにアドバイスします。

「マナーは相手への思いやりです。高級なお店では、心地よい雰囲気も楽しみたいものです。また、周りのお客様やお店への敬意を表すことのできる心の美しさは、外側からあふれる気品として自然と現れるはずです。ぜひ、美しいマナーで優雅に心地よく、買い物を楽しんでください」


次に高級菓子店などを訪れる際には、ぜひ意識したいですね。

大松 茜さん
イメージコンサルタント、プロトコルマナー講師
(おおまつ あかね)2007年株式会社エレガンプロジェ設立。イメージコンサルタントおよびプロトコールマナー講師を育成するスクールを開講。TVも多数出演、著書「紳士淑女になるエレガンスの秘密」。ご卒業生へ、格式高い社交場に参加する機会を…と考え、社交場を体験できる、英国校も開講。プライベートではフランスにお城をもつ女主人。
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
石原亜香利