「王室御用達名品」が過去の遺産ではないということを教えてくれるのが、英国チャールズ皇太子の着こなしだ。ときにはサヴィル・ロウのスーツを、ときには味わい深いバブアーを凜々しく着こなす彼。そこには現代を生きる伊達男としてのプライドが満ちあふれている。

チャールズ皇太子のファッションに対するこだわり

毅然としたこだわりが感じられるチャールズ流スタイル

サヴィル・ロウ仕立てのダブルスーツに、ターンブル&アッサーと思われるロンドンストライプシャツ、そして鮮やかな小紋タイ……。コンサバティブだが、その奥に毅然としたこだわりが感じられるのがチャールズ流スタイル。弧を描くチーフのまろやかなドレープ感を見れば、その美学の強靭さは一目瞭然だ。

「次の国王にふさわしいのは誰?」かイギリス王位継承について度々特集が組まれたりし、ウィリアム王子と比較されていた時期もあった、チャールズ皇太子。たしかに、チャールズは新鮮味に欠ける。強力な指導力も感じない。しかし、王室を実力主義で捉えては見誤る。少なくとも彼は、国王になるための訓練を受けた男なのである。たとえば、エリザベス女王に毎日届けられる国事に関する決済案件、そのほとんどにチャールズも目を通している。旧植民地の独立、英連邦の国々の国家行事に女王の名代として立ち会うのも彼だ。むろん世界の王室との個人的繫がりも密である。チャールズは王室の歴史、伝統、慣習に通暁しているばかりでなく、クイーンとともに休むことなく英国の運命に関与してきた唯一のプロフェッショナルなのだ。その経験値を甘く見てはいけない。少なくとも他国の時期国王とは、格が違うのである。

さてプロをプロたらしめるには衣装が重要な役割を果たす。その点でもチャールズはパーフェクトだ。「王室の中の王室」と呼ばれる英国王室の皇太子の姿を王室御用達品の助けを借りて見事に実現している。

チャールズのスタイルは「タウン&カントリー」という言葉で要約することができる。タウンはロンドンのバッキンガム宮殿、カントリーはバルモラル城などの王室が所有するカントリーレジデンス。そういう地理的な分け方ができるし、10月から3月はタウン、4月から9月まではカントリーと季節で区切ることもできる。一週間も月曜日から金曜日午前までがタウン、金曜日の午後から日曜日までがカントリーとチャールズの頭の中では分かれているはずだ。

タウンライフはバッキンガム宮殿での公務を中心に、海外からの来賓の接遇、各種チャリティやオペラなどの文化行事。カントリーライフはハンティング、シューティング、フィッシングの三大野外系に加え、ピクニックも欠かせないお楽しみだ。

このタウン&カントリーの生活全般のパーツとなるのがプリンス・オブ・ウエールズ(チャールズの公称)や他の王室御用達製品なのである。タウンライフにかかせないサヴィル・ロウのスーツやタイが含まれるのは理の当然として、バブアーのジャケットやファーローのフィッシングジャケット、レンジローバーですら実際のカントリーライフで毎日使う日用品なのである。

ところが彼の着衣を見ると、20年もののアンダーソン&シェパードのダブルブレストスーツだったり、40年もののジョン ロブのオックスフォードを手を入れて身に着けている。目ざといマスコミはそれを称して「究極のリサイクリスト」と呼ぶほど。御用達品は、これほどまでに大切にされるのである。

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