最高級の3大靴ブランド「ジョン ロブ」、「トリッカーズ」、「ジェイ エム ウエストン」には、秋から冬にかけて履きたい、美しいブーツが揃う。ここでは、男らしさが漂う名品を厳選した。

1.ポロ競技が起源となる、軽快かつエレガントな一足

 くるぶしを覆うショート丈、ふたつあるいは3つのシンプルなひも穴のデザイン、一切の飾りを排除したストイックな甲革……。まさに正統派の紳士にふさわしい、完成されたスタイルを備えているのがチャッカブーツの魅力である。

 チャッカの誕生は、19世紀末、当時のポロ競技で選手がはいていたブーツにさかのぼる。ポロ競技では、7分間で行われるひとつのゲームの単位を「チャッカ」と呼び、それが後にブーツの名称に転用されたのである。

紳士のスポーツを代表する高貴なポロ競技から誕生した背景からも、チャッカは、エレガンスとスポーティな雰囲気をあわせもつブーツだといえる。

 表革のカーフであれば、クラシックなスーツに着こなしのアクセントを加え、あるいは、スエード素材なら、品格のあるカジュアルなコーディネートをつくり出す。チャッカブーツは、スーツに合わせてエレガントにはくのが正解である。

スポーティ・エレガンスの極み、ブランド屈指の名ブーツ

ロングノーズでシャープなつま先が魅力的な『ロムゼイ』。上質な革や正確なステッチワークから、繊細な仕上がりが伝わる名靴。アンクル部分のステッチから上は、カーフのみのアンライニング仕上げで、くるぶしに刺激を与えずやわらかく包み込むデザインだ。(ジョン ロブ ジャパン)※参考商品
ロングノーズでシャープなつま先が魅力的な『ロムゼイ』。上質な革や正確なステッチワークから、繊細な仕上がりが伝わる名靴。アンクル部分のステッチから上は、カーフのみのアンライニング仕上げで、くるぶしに刺激を与えずやわらかく包み込むデザインだ。(ジョン ロブ ジャパン)※参考商品

2.フォーマルから始まった紳士の香りが漂う名モデル

 表革やスエードを甲革に使い、ブーツの外と内側にエラスティック素材(ゴム)をデザインしたサイドゴアブーツ。足の甲を支える靴ひもがないため、流れるようなスマートなスタイルが絶妙である。

 サイドゴアブーツの歴史は古い。時は1800年代前半。ヴィクトリア女王の夫君であるアルバート公が、議会ではいたことで後世に広まる。そもそもの発祥は、フォーマルなスタイルに合わせるブーツだったのである。

 1960年代。スウィンギング・ロンドンでロンドンが沸き、ストリートカルチャーが注目されたころ、ビートルズのメンバー全員で愛用したのが、何を隠そうサイドゴアブーツ。ロンドンの中心地で起こったカルチャーだったことから、地名から転じてチェルシー・ブーツとも呼ばれ、今でもサイドゴアブーツの別称となっている。

 甲革のほかに、ソールの素材にも着目することで、サイドゴアがいかにファッションと完璧にマッチするかがわかる。スマートなレザーソールだけではなく、ゴツゴツとしたラバーソールも多く展開されているため、より着こなしに合ったタイプを選ぶことができる。名靴のサイドゴアブーツを自在に楽しみたい。

ごついラバーソールも人気!定番ながらも新鮮な顔つき

スマートなシルエットが持ち味となるサイドゴアブーツだが、甲革に重厚なウィングチップをデザインすることで、ラフでたくましい顔つきに変化する。この『ヘンリー』は、トリッカーズのカントリーコレクションのなかでも、隠れた人気を誇る、知られざるモデルだ。細身のラストが絶品である。(GMT〈トリッカーズ〉)※参考商品
スマートなシルエットが持ち味となるサイドゴアブーツだが、甲革に重厚なウィングチップをデザインすることで、ラフでたくましい顔つきに変化する。この『ヘンリー』は、トリッカーズのカントリーコレクションのなかでも、隠れた人気を誇る、知られざるモデルだ。細身のラストが絶品である。(GMT〈トリッカーズ〉)※参考商品

3.艶やかなるブーツの代表格、ジョッパーブーツ

シューレースで足首を支えるチャッカ。靴の側面にゴムをデザインし、フォーマルを起源とするサイドゴア。「3大ブーツ」の最後は、レザーストラップを巻きつける、実にエレガントなたたずまいのジョッパーブーツである。

つま先からつながる甲革と、かかとを包み込む革との2枚で構成され、レザーストラップを巻きつけるスタイルのジョッパー。英国の植民地だった、インドの街の名前が由来。乗馬用パンツのジョッパーズに合わせるブーツとして、19世紀末に考案されたものである。

激しい乗馬の際には、靴ひもが切れたり、不慮の事故を起こす可能性があるため、ひもに代わって足を固定するデザインが求められた。そこで、靴のデザインとしても相性のいいレザーストラップが採用されたのだ。

レザーストラップは、巻きつける方向がモデルによって異なるため、ジョッパーブーツを手がけるブランドの個性が、さりげなく表れる部分である。 ブーツ誕生の背景はもちろん、上品な表革を主要の素材としていることからも、ジョッパーは、まさにエレガントなブーツの代名詞的な存在として、今季再び注目が集まっている。

時代を超えて輝き続ける、伊達男好みの上品なデザイン

ブランドを代表する傑作モデルの『722 ジョッパーブーツ』。上質な革を使い、超絶技でつり込まれた、つま先からはき口までの流れるような美しいスタイルが絶品。レザーストラップは、後ろから前に巻きつけるタイプで、尾錠には、ブランドのイニシャルを刻印。まさにエレガントな一足だ。(J.M.Weston 青山)※参考商品ブランドを代表する傑作モデルの『722 ジョッパーブーツ』。上質な革を使い、超絶技でつり込まれた、つま先からはき口までの流れるような美しいスタイルが絶品。レザーストラップは、後ろから前に巻きつけるタイプで、尾錠には、ブランドのイニシャルを刻印。まさにエレガントな一足だ。(J.M.Weston 青山)※参考商品

個性豊かな英国3大ブーツを紹介しました。足元から大人の上品な着こなしを意識してみてはいかがだろうか?

この記事の執筆者
TEXT :
矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
BY :
MEN'S Precious2013年秋号 紳士の美学を足元に宿す、「3大ブーツ」スタイルより
ヴィットリオ矢部のニックネームを持つ本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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クレジット :
撮影/戸田嘉昭・唐澤光也(パイルドライバー/静物) 構成・文/矢部克已