とどまることを知らないBMWのSUV攻勢は、ついに初の3列シートを生み出した。

 その名も「X7」という大型SUVだ。文字通り、「X5」よりも大きい。現行のBMWのSUVの中で最も大柄になる。

 そのボディ寸法は、5151(全長)×2000(全幅)×1805(全高)ミリ、ホイールベースは3105ミリ。

 そのX7にアメリカで乗った。メキシコとの国境の町であるテキサス州エルパソから西へ向かい、ニューメキシコ州を抜けて、アリゾナ州スコッツデイルまでの約700kmを半日で走った。

エルパソから一路、西へ

X7が小さいのではなく、トレーラーが大きいのだ! アメリカならではの光景。
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見よ、この堂々たる姿を。ホテルのエントランスに乗りつければ扱いが別格であるのは確実だ。
見よ、この堂々たる姿を。ホテルのエントランスに乗りつければ扱いが別格であるのは確実だ。

 アメリカで見ても、X7は大きい。キャデラックの「エスカレード」やメルセデス・ベンツの「GLS」と変わらない存在感がある。大きさだけでなく、上下にハミ出るほど存在を主張しているフロントグリルや各部分のクロムメッキなどが目立っている。

 大型だからスペースに余裕があり、車内も至れり尽くせりだ。これまでのX5やX6などの機能的なインテリアの造形にプラスして豪華さも付け加えられている。例えば、シフトレバーのグリップはクリスタルガラス製だ。ウッドや革の配し方などもゴージャス志向。

 メーターパネルとセンターコンソール上のモニターは、ともに12.3インチの大型液晶。メーターのロジックも新型3シリーズと共通する、バーチャルのスピードメーターとタコメーターの針がそれぞれ左右の端から回るという新しいものだ。

 アメリカンテイストの豪華な雰囲気を感じながら、長距離ドライブに出発した。運転したのは、340馬力を発する6気筒ガソリンターボエンジンを搭載する「X7 xDrive40i」というモデル。

 エルパソの街中から高速道路に乗り、一路、西を目指した。

 最初に感じられてきたのは、ソフトで大らかな乗り心地だ。どちらかというとフラットで硬めの乗り心地を指向してきたはずのBMWとしては、異例にソフトな感覚だ。ただ、そのソフトさも不快ではまったくなく、むしろ余裕や心地良さを伴った抑制の効いたもので、大型SUVというX7のキャラクターにとても良く合っている。進化したエアサスペンションの効能が大きいのだろう。

 コンフォートモードでも、アダプティブモードでも快適さは変わらなかった。コンフォートモードはスピードが50マイル前後に達するとダンピングが引き締まってくる様子が体感できる。スポーツモードは常時、引き締まっているので走る場所を選ぶだろう。

きめ細かな運転支援システムを堪能

十分な広さをもつ3列目は、ほぼ水平にたたむことができる。荷物をたくさん積むドライバーには重要なポイントだ。
十分な広さをもつ3列目は、ほぼ水平にたたむことができる。荷物をたくさん積むドライバーには重要なポイントだ。
3列目をたたんだ状態。リアゲートは積み下ろしがしやすい上下2分割式だ。
3列目をたたんだ状態。リアゲートは積み下ろしがしやすい上下2分割式だ。

 X7はボディが大きな分、重量も2500kgもある。しかし、エンジンがパワフルなだけでなく、8速ATが賢いこともあって、加速にも不満は感じなかった。日本仕様はディーゼルエンジン版も設定されるので、違いが気になるところだ。

 アメリカの高速道路なので、直線路主体の空いた道を淡々と走り続けることになる。その際に強い味方となってくれるのがACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKAS(レーンキープアシスト)などの運転支援システムだ。

 ACCは設定した車間距離と最高速度を維持しながら前車に追従しながら走ることができる。筆者は、自分のクルマでも試乗車でもACCを必ずONにして走るようにしているが、アメリカで高速道路を長距離走るような場合にこそ絶対に必要なものと考えている。実際に、X7でも可能な限り、ACCを用いた。車間距離や速度を調整することをある程度クルマに任せることができるので、その分の脳のキャパシティが空くので、確実に疲労が少なかった。

 同じように、LKASも長距離走行を安全かつ快適になるようサポートしてくれた。BMWのLKASは新世代に更新されたようで、新型3シリーズからもそれは感じられた。白線を越えようとすると、かなり強い力で戻される。右コーナーと左コーナーとでもアシストの強弱や作動時間も異なっている。実にキメ細かい制御となった。

オフロードを走ってもすごいらしい!

こちらの写真はメーカー提供のもの。金子氏は叶わなかったが、X7はオールラウンダーとしての性能も高いという。
こちらの写真はメーカー提供のもの。金子氏は叶わなかったが、X7はオールラウンダーとしての性能も高いという。
こちらもメーカー提供の写真。大型高級SUVで岩場をがんがん走ってこそ、真の贅沢といえまいか。
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 繰り返すようだが、ACCもLKASも運転をサポートしてくれ、疲労を軽減し、事故を未然に防いでくれる。今回のような長距離ドライでこそ、その効能が最大限に生かされる。フロントガラス越しに広がるアメリカ南西部の広大な絶景を堪能しながら走ることができた。

 プロジェクトマネージャーのヨルグ・ブンダー博士は、X7の開発で最も注力したのは「乗り心地と静粛性だ」と語っていた。その狙いは十分に達成されていると思う。700kmの移動がまったく苦にならずに行えたからだ。

 ただ、ひとつ心残りだったのは、オフロードを走れなかったことだ。X7はほぼ同時期にモデルチェンジしたX5とともに、車高を5段階に変えられる初めてのBMWのSUVとなったので、4輪駆動システム「xDrive」と併せたその実力のほどを試してみたかった。ブンダー博士にそれを伝えると、「それは残念だった。きっと満足してくれたと思う」と自信のほどを伺わさせていた。

 いずれにしても、大型ボディと3列シートに注目が集まるであろうX7だったが、このクルマの本質はX4や先代X5、そしてX6のようなオンロード志向の強いSUVではなく、オンオフを問わないオールラウンダーであることがわかった。これまでのBMWのSUVとは趣を異にしている、乗り心地と静粛性に秀でた快適性の高い高級SUVである。Xシリーズの幅を広げるものに仕上がっていた。

この記事の執筆者
1961年東京生まれ。新車の試乗のみならず、一台のクルマに乗り続けることで得られる心の豊かさ、旅を共にすることの素晴らしさを情感溢れる文章で伝える。ファッションへの造詣も深い。主な著書に「ユーラシア横断1万5000km 練馬ナンバーで目指した西の果て」、「10年10万kmストーリー」などがある。
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