小料理屋にカラオケがある不思議
店の前に立った時から気になっていたのだ。小料理と名乗っているのに、スナックでいいのだろうか、と。スナックに明確な定義はないし、ここにはカラオケがあるのでスナック的に利用する者もいるだろう。しかし、なぜ小料理屋にカラオケがあるのか。
大分出身のママは、大阪のキャバレーなどで舞台に経つ歌手だった。その後、北新地で店を出すも、大阪万博で立ち退きとなる。そして上京し、開店したのがこの店だ。それが約40年前。
ママが歌手だったからか、オープン当時から8トラのカラオケがあった。『小料理 有明』では歌詞を見ながら歌う8トラ、レーザーディスクを経て、今の通信カラオケになった。
そういう背景があるからこそ、歌好きの常連も多いのだろう。
大好きな松田聖子を熱唱!
早く歌いたくてうずうずしている原田さんのセレクトは、同郷の松田聖子。シングルではなくアルバム収録曲の『時間旅行』をチョイスする。原田さんは母子揃って聖子ファンのため、選曲が通だ。
「小さい頃から母親と一緒に練習してたんです」と言うだけあって、歌声を聖子ちゃんに寄せている。可愛い声だ。
原田さんの美声に聴き惚れて、もう1曲リクエストする。高橋真梨子の『for you…』も伸びやかな声で歌い上げた。
自由が丘から昭和の灯りが消える前に
カラオケが落ち着いた時、大ちゃんがぽつりと言った。
「自由が丘デパートにもいくつかスナックがありますが、継ぐ人がいないという話をよく聞きます。寂しいですが、自分がどうにかできるわけではないし……」
どんどん消えていく昭和の自由が丘。『小料理 有明』は今後も続いていくが、この地のスナックの灯りが消えてしまう前に、その情緒を感じに行ってはいかがだろうか。
【小料理 有明】
問い合わせ先
- 小料理 有明 TEL:03-3723-3637
- 住所:東京都目黒区自由が丘1-31-10
- 営業時間:19:00〜26:00
- 定休日:日曜日
- メニュー:瓶ビール¥800、金魚¥700、焼酎ボトル・ウイスキーボトル¥5,000〜、熊本馬刺¥1,200、手羽先明太¥900、〆鯖¥800、カラオケ1曲¥200
- TEXT :
- 津島千佳 ライター・エディター
- PHOTO :
- 小倉雄一郎