1984年、19歳でデビューを果たし、50歳でこの世を去ったモデル・雅子さん。映画『モデル 雅子 を追う旅』は雅子さんの夫であり、TBSでプロデューサーを務める大岡大介氏がメガホンを取りました。そのきっかけは、「夫でありながら実は『モデルとしての雅子』をほとんど知らないことに気づいた」からと言います。

大岡さんに限らず、パートナーの職業を知っていても、仕事の内容やパートナーの仕事ぶりを詳しく知っている人は案外、少ないのではないでしょうか。大岡さんは、家に残された数多くの雑誌やビデオを見ながら、モデルとしての雅子さんの存在に思いを馳せ、動き出しました。

50歳で他界したモデル・雅子さんの半生を追ったドキュメンタリー映画

©️2019 Masako,mon ange.
©️2019 Masako,mon ange.

女性ファッション誌をバイブルのようにしてきた世代にとって、モデルの雅子さんは憧れの存在。20代では『an・an』『装苑』『流行通信』、30代は『LEE』『クロワッサン』『ミセス』、40代では『家庭画報』『美しいキモノ』など数々の雑誌に登場。『Precious』や『Domani』『和楽』といった小学館のファッション誌にも多く登場してくださいました。

CMにも多く出演していましたが、大ヒットホラー映画『リング』で貞子の母・志津子を演じた雅子さんの和服姿も印象深く残っています。モノを言わずして語る雅子さん独特の雰囲気がピタッとはまっていました。雅子さんはめまぐるしく変わる時代のなかで、常に自然体な生き方を追求。その姿が多くの女性たちから支持されていました。

©️2019 Masako,mon ange. 撮影/中川真人
©️2019 Masako,mon ange. 撮影/中川真人

時代を生きる女性たちへ、良きメッセージとなる雅子さんの生き方

映画では、雅子さんを知る写真家、モデル仲間、スタイリスト、編集者、俳優、映画監督など、40人近くの人が彼女について証言しています。そこから浮かび上がってくるのはまず、彼女の仕事に対する真摯な姿勢です。

例えば、仕事のある前日は決して夜遊びしなかったバブル時代。「油断3秒、シミ一生」と紫外線ケアを怠らず、友人の子どもの運動会では大きなつばの帽子にサングラス、どこから見ても怪しい人であっても完全防備でカメラを回すほどの徹底ぶり。モデルのあり方を追求し続けました。

©️2019 Masako,mon ange. 撮影/高橋ヒデキ
©️2019 Masako,mon ange. 撮影/高橋ヒデキ

年齢を重ねることにシビアに向き合わなければならないモデルという職業にあって、年齢どころか何も隠さないオープンマインド。「年齢を重ねる恐怖よりも経験値を積む喜び」を味わえる雅子さんは、同世代からするとただただ尊敬のひと言。

年を重ねるとつい、年齢を隠したくなっちゃうのは女の性、くらいに筆者は思っていますが、雅子さんはこう言います。「いまの時代の方がいい。無理に若づくりはしたくないけれど若々しくはいたい。無理せず自然な形で見せられたらいいなと思っています」と。

無理せず自然にーー。それが終始一貫した雅子さんのスタイルだったに違いありません。日常生活でも何人もの人が彼女の気さくな性格を振り返ります。

漫画が大好きで、スターモデルだったにもかかわらず、グラビア撮影でスタッフみんなと雑魚寝も辞さない。いつもスタッフ側に心を寄せているような敷居の低さ。「雅子と会うとみんなに優しくなる」。雅子さんはそんな多くの人に愛を与えていた人でした。

2013年11月、雅子さんが10万人に1、2人の希少がんに侵されていることが発覚。手術を受け、一時退院したものの14年秋に転移が発覚しました。右肺、骨盤への転移、右脳、脊椎、背骨が潰れて変形し、車椅子生活になった雅子さんでしたが、「ビューティーならやれる」と不敵に笑ったそうです。

そこまで仕事に打ち込めたのはなぜでしょう? 生きるってなんでしょう? その姿を想像して涙があふれそうになりました。

生涯、真摯に人生に向き合い続けた雅子さん。写真家の安珠さんが言います。「モデルという仕事はひとつ。どう生きていくがすごく大事」だと。映画を見ながら彼女の生き方に思いを馳せつつ、見終わったあとはずっと、彼女に生きることの意味を問いかけられている気がします。

©️2019 Masako,mon ange.
©️2019 Masako,mon ange.
©️2019 Masako,mon ange.
©️2019 Masako,mon ange.

作品詳細

  • 『モデル 雅子 を追う旅』
  • 監督・プロデューサー:大岡大介 出演:雅子、安珠、田村翔子、藤井かほり、高嶋政宏、中田秀夫、石井たまよほか。
  • 2019年7月26日(金)から8月15日(木)まで、東京・UPLINK吉祥寺にて公開、全国順次公開予定。
この記事の執筆者
生命保険会社のOLから編集者を経て、1995年からフリーランスライターに。映画をはじめ、芸能記事や人物インタビューを中心に執筆活動を行う。ミーハー視点で俳優記事を執筆することも多い。最近いちばんの興味は健康&美容。自身を実験台に体にイイコト試験中。主な媒体に『AERA』『週刊朝日』『女性セブン』『朝日新聞』など。著書に『バラバの妻として』『佐川萌え』ほか。 好きなもの:温泉、銭湯、ルッコラ、トマト、イチゴ、桃、シャンパン、日本酒、豆腐、京都、聖書、アロマオイル、マッサージ、睡眠、クラシックバレエ、夏目漱石『門』、花見、チーズケーキ、『ゴッドファーザー』、『ギルバート・グレイプ』、海、田園風景、手紙、万年筆、カード、ぽち袋、鍛えられた筋肉
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