知る人ぞ知る『ティファニー ブルーブック』。日ごろなかなか目にすることができない、希少なハイジュエリーの最新コレクションを集めた名品カタログです。ティファニーの優良顧客にのみ配布されているこのカタログは、手に入れるだけでも名誉なことといわれています。

そんな羨望のハイジュエリー・カタログ『ティファニー ブルーブック』(以下『ブルーブック』)は、なぜそこまでもセレブリティを魅了し続けているのでしょうか? その歴史と魅力をひも解いていきます。

驚異!172年もの歴史がある『ブルーブック』

『ブルーブック』の初版が刷られたのは、1845年。ティファニーの創始者、チャールズ・ルイス・ティファニーがニューヨークに店を開いてから、わずか8年後のことでした。表紙にコマドリの卵の色である「ティファニー ブルー」が使われて以来、この色はブランドを象徴するカラーになったのだとか。ティファニーで扱うジュエリーのメールオーダーカタログとして誕生し、現在は年一回発行されています。

ティファニー ブルーブック表紙
ティファニー ブルーブック表紙

アメリカでヨーロッパのダイヤモンドを購入できる、元祖・カタログ販売!?

初期には、ヨーロッパ上流社会で所有されてきたダイヤモンドが、数多く掲載されていました。この名品カタログによって、遠い地でも購入できるという、現代にも通じるような画期的なシステムを、170年あまり前に生み出したのです。こうしてティファニーは、アメリカに希少なジュエリーを紹介、やがて「キング・オブ・ダイヤモンド」と呼ばれる世界屈指のジュエラーになってゆきます。

ティファニー「ブルーブック」の歴史
ティファニー「ブルーブック」の歴史

1845年 世界初のメールオーダーカタログとして発行

(写真左)ゴールドジュエリー、シルバーの扇子、真珠といった一流品を取り扱うティファニの商品カタログとして、顧客向けに発行されました。

1876年 ダイヤモンドを用いたジュエリーを大々的に発表

(写真中)最高級のダイヤモンドを扱うようになり、自社で制作したジュエリーを紹介。19世紀末のパリ万博では、ティファニーのダイヤモンド展示がグランプリを受賞するほどに。

1920年 ルイス・コンフォート・ティファニーによる芸術的な作品も登場!

(写真右)インドのムガール王朝時代のジュエリーから着想を得た、ジェムストーンのジュエリーによって、芸術性の高さも評価される時代へ。


ティファニー ブルーブック表紙ジュエリーの流行を担い、希少価値の高い宝石を世に送り出す役割へ

その後、ジーン・シュランバーゼー、エルサ・ペレッティ、パロマ・ピカソといった、ジュエリー史に名を残す専属の有名デザイナーの作品も掲載され、ジュエリーの流行を発信する役割をも担うようになります。

ティファニー「ブルーブック」20世紀の中面
ティファニー「ブルーブック」20世紀の中面

1954年 掲載ジュエリーにモダンさが加わり、スタイルが進化

アメリカが黄金期を迎える時代。思いがけない素材の組み合わせで、自由な発想のデザインへと進化し、誌面もモダンな賑わいを見せました。

ティファニー「ブルーブック」有名デザイナーの作品
ティファニー「ブルーブック」有名デザイナーの作品

1980年 パロマ・ピカソによるチェーンチョーカーは羨望の的に

(写真左上)パブロ・ピカソの娘であるパロマ・ピカソがティファニー社に加わり、よりファッショナブルに。

1985年 エルサ・ペレッティのデイリーな星座のカフリンクス

(写真左下)1974年からティファニーのデザイナーとなったエルサ・ペレッティもまた、有機的なフォルムでデイリーにも似合うジュエリーを生み出し、ブームを巻き起こしました。

1998年 ジーン・シュランバーゼーのクリエイティブなクリップも

(写真右)自然界にインスパイアされた彼のデザインは、今も想像力あふれるハイジュエリーの象徴的存在。写真は伝説の女神・メデューサのクリップ。

 

また、地球上のすみずみまでジェムストーンを探し続け、20世紀にはタンザナイトやツァボライトのほか、新しいジェムストーンを世に送り出し、美しいジュエリーへと息吹を与え、その誌面で紹介しています。『ブルーブック』の歴史はまさに、ジュエリー史の壮大な記録なのです。

近年、ハイジュエリーの新作は、『ブルーブック』に先駆け、アカデミー賞の授賞式でレッドカーペットを彩ってきました。ハリウッドでもティファニーのハイジュエリーをまとうことは一流の証であり、憧れ。今年も希少価値の高い宝石が、高度な職人の技術により、ひときわ目を引くハイジュエリーとなって、今をときめく女優たちを輝かせています。

ティファニーを着用するジェシカ・ビールとエマ・ストーン
ティファニーを着用するジェシカ・ビールとエマ・ストーン

2017年 今年のアカデミー賞では数々のセレブが新作を着用!

(写真左)2017年2月、アカデミー賞授賞式に出席した女優のジェシカ・ビール。ゴールドのスパンコールドレスの襟元を飾るのは、ヤシの葉をモチーフにしたチョーカー。350枚を超えるゴールドのヤシの葉を、合計60カラット以上のバゲットダイヤモンドのベルトで留めたもの。

(写真右)映画『ラ・ラ・ランド』で、主演女優賞を受賞したエマ・ストーンもまた『ブルーブック コレクション2017』から、ジュエリーをセレクト。ゴールドのビーズ刺しゅうのドレスに、ゴールドピアスと、イエローダイヤモンドのリングが美しく調和して。


『ブルーブック コレクション2017』は美しさに息を呑む究極の最新ジュエリーがずらり

「ブルーブック」のなりたちと進化を理解したところで、いよいよ2017年の最新版の中身を一部ご紹介。今年のテーマは「アート オブ ザ ワイルド」。大自然への畏敬とその美しさへの賛美から生まれた究極のジュエリーのたたずまいに、ただただ感動を覚えます。

2017年度版の『ブルーブック』を手がけるにあたり、熱帯の島へと旅立ったティファニーのデザインチーム。野生の驚異を体験して気づいたのは、「自然の無慈悲なまでの圧倒的な力と、対極にある癒し」でした。そうして生まれたデザインには、最高峰の宝石と、熟練の職人技、さらに実現不可能とも思われる、革新的なクリエイションがあります。日常を潤すジュエリーとは別次元の美しさ。至高のコレクションの扉を開けると、そこにはティファニーが長く愛される理由がありました。

ティファニー「ブルーブック」2017掲載 楽園の鳥のブローチ
ティファニー「ブルーブック」2017掲載 楽園の鳥のブローチ

【楽園の鳥のブローチ】

悠然とたたずみ、気品に満ちあふれた姿に圧倒される美しい鳥。ダイヤモンドのグラデーションとゴールドの羽根が、生き生きと豊かな表情を描き出します。ホワイトとイエローのダイヤモンドで覆われた優美な尾羽根が、動くたびに眩まばゆい輝きを放って。[イエローゴールド×イエロー&ホワイトダイヤモンド×ブルーサファイア×エメラルド×スピネル]¥38,750,000/予定価格(税抜)

ティファニー「ブルーブック」2017掲載 ヤシの葉のブレスレット
ティファニー「ブルーブック」2017掲載 ヤシの葉のブレスレット

【ヤシの葉のブレスレット】

熱帯雨林に生息するヤシの木の葉を、目にも鮮やかなツァボライトのグリーンで再現したバングル。みずみずしい葉脈を感じさせ、先が絡みつくような、繊細かつ大胆なゴールド細工に、ため息がもれます。ツァボライトは1974年にティファニーによってアフリカで発見された希少な石。神秘的なフォレストグリーンの表現に欠かせません。[イエローゴールド×ツァボライト×イエローサファイア]¥32,450,000/予定価格(税抜)

ティファニー「ブルーブック」2017掲載 ヤシの葉を束ねたブレスレット
ティファニー「ブルーブック」2017掲載 ヤシの葉を束ねたブレスレット

【ヤシの葉を束ねたゴールドブレスレット】

ユニークなシェイプを施した200本を超えるイエローゴールドの葉は、その軽やかな仕上がりにも驚きます。地金にはダイヤモンドをちりばめたり、艶あり、艶なしを組み合わせたりと、表情もさまざま。そして優美な葉をつなぐのは、パヴェダイヤモンドでステッチをかけた、迫力のバゲットカットのダイヤモンドベルト。[イエローゴールド×プラチナ×ダイヤモンド]¥94,700,000/予定価格(税抜)

ティファニー「ブルーブック」2017掲載 ベリーのリングとイヤリング
ティファニー「ブルーブック」2017掲載 ベリーのリングとイヤリング

【ベリーのリングとイヤリング】

上/深く、強く、鮮やかなベリーレッドのルベライトは、サイズ、輝き、彩りのすべてが希少で、印象的。シュロの葉で支えた、20カラットを超えるみずみずしい美しさのカボションシェイプにひと目惚れ。リング[YG×ルベライト×ダイヤモンド]¥6,750,000/予定価格 下/ベリーは、繊細なゴールドの編み込みにダイヤモンドが煌くメタルワークの進化系。イヤリング[YG×ルベライト×スペサタイト×イエロー&ホワイトダイヤモンド]¥14,900,000/予定価格(ともに税抜)

ティファニー「ブルーブック」2017掲載 リーフに包まれた色石のリング
ティファニー「ブルーブック」2017掲載 リーフに包まれた色石のリング

【リーフに包まれた色石のリング】

繊細なリーフモチーフに、ダイヤモンドや色石が煌くシャンクのリング。上から/神秘的で癒しを感じさせるグリーントルマリンは、カボションカットでもそのクラリティの高さをキープ。[イエローゴールド×グリーントルマリン35.9ct×ダイヤモンド×ツァボライト]¥7,450,000/予定価格・心地よい中間色調を放つブルーに、グリーンのニュアンスも備えた、ブルートルマリンのなかでも最も理想的な色。[プラチナ×ブルートルマリン22.72ct×ダイヤモンド×トルマリン]¥6,750,000/予定価格・フォレストグリーンの鮮やかで深い色調が美しく調和する、希少なツァボライトのペアは羨望の的。[イエローゴールド ×ツァボライト9.5ct×ダイヤモンド]¥16,900,000/予定価格・完璧な一対をなす、スカイブルーの色調と透明感に惹き込まれそう。[プラチナ×アクアマリン23.32ct×ダイヤモンド]¥10,800,000/予定価格(すべて税抜)

ティファニー「ブルーブック」2017掲載 流水を象るネックレスとイヤリング
ティファニー「ブルーブック」2017掲載 流水を象るネックレスとイヤリング

【流水を象るネックレスとイヤリング】

上/プラチナの存在を感じさせないシームレスなパヴェセッティングのダイヤモンドネックレス。流れ落ちる水柱は、バゲット&スクエアカットと、ラウンドブリリアントカットの2本で立体感を添えて。ネックレス[プラチナ×ダイヤモンド]¥43,950,000/予定価格 下/パヴェダイヤモンドのフープイヤリングは、大粒のペアシェイプダイヤモンドのしずくが揺れて、眩い煌きを放ちます。イヤリング[プラチナ×ダイヤモンド]¥23,700,000/予定価格(ともに税抜)

ティファニー「ブルーブック」2017掲載 天空に舞う 鳥のイヤリング
ティファニー「ブルーブック」2017掲載 天空に舞う 鳥のイヤリング

【天空に舞う 鳥のイヤリング】

ティファニーが1968年に発見して命名した宝石、タンザナイト。その彩度の高いブルーバイオレットの美しさで、顔周りを華やかに彩るイヤリング。ダイヤモンドの羽根も、空気をはらみながら、流れるような曲線を描き、耳たぶに優しく寄り添う。イヤリング 上/イエローゴールドに鮮やかな色が響き合う。[イエローゴールド×タンザナイト計11.29ct×ツァボライト×ダイヤモンド×ブルーサファイア]¥8,100,000/予定価格 下/エレガントな長い尾とクールな輝きが端正な横顔をつくる。[プラチナ×タンザナイト計17.79ct×ダイヤモンド×ブルーサファイア]¥8,800,000/予定価格(ともに税抜)

ティファニー「ブルーブック」2017掲載 移ろう花の色を捉えた ブレスレットとリング
ティファニー「ブルーブック」2017掲載 移ろう花の色を捉えた ブレスレットとリング

【移ろう花の色を捉えたブレスレットとリング】

ピンクの繊細なグラデーションや、ダイヤモンドとの組み合わせが醸し出すやわらかな色調を愛でるジュエリー。上/ピンクサファイアとダイヤモンドが織りなす、チェックのモチーフが美しいブレスレットは、しなやかで動くたびに色が変わり、チャーミングな表情に。ブレスレット[プラチナ×ピンクサファイア×ダイヤモンド]¥24,350,000/予定価格 下/熱処理をしていない希少価値の高いピンクサファイアは、鮮やかなピンクにレッドとパープルを秘めた色味が魅力。リング[プラチナ×ピンクサファイア6.05ct×ピンクダイヤモンド×ホワイトダイヤモンド]¥20,950,000/予定価格(ともに税抜)

 

魅惑的な『ブルーブック コレクション2017』のジュエリーの数々、いかがでしたか? 私たちの心を魅了してやまないジュエリーの世界の頂点には、こんな圧倒的なクリエイティビティと、職人技術が冴えわたる名品が佇んでいるのですね。その名品が語りかける物語を、毎年新しく紡いでいる『ティファニー ブルーブック』。世界のセレブリティたちがこのカタログを心待ちにする理由が、ここにあります。

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この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
BY :
『Precious6月号』小学館、2017年 / 2017.7.4 更新
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クレジット :
【Precious2017年6月号掲載時スタッフ】撮影/戸田嘉昭(パイルドライバー) 構成/藤田由美、中村絵里子(Precious) 【Web構成】安念美和子(LIVErary.tokyo)