真夏でもネクタイをすること。酷暑の日本において、これほどかっこよく、贅沢な装い方はほかにない。多くのビジネスマンが白い半袖の開襟シャツを着ている中で、タイドアップしたスタイルを守るのは、紳士のたしなみだ。もちろん、毎日でなくてもかまわない。今日はあえてネクタイをしてみようかな、と思えることが、一番大事なのだ。
そんなときに必要なネクタイを、まずは1本、新調したい。ネクタイを襟元に華やかさを演出することが出来るシルクタイは、紳士のスーツスタイルには必携な存在。ゆえに、センスは当然問われる! 昔も今も、伊達男たちから圧倒的に支持される世界トップクラスのE・マリネッラ、ターンブル&アッサー、シャルベを例に、シルクタイが持つ魅力を、今一度確認しよう。
ツヤ、織り、色、柄、ハリ。個人的に気にしている、タイを見定める5つの要素だが、最も心が動かされるのはツヤだ。明るく軽やかなツヤや後光が広がるような華やかなツヤ、わずかな光で浮き上がる品のいいツヤは世界有数のタイに備わる。
ナポリの名店、E.マリネッラは、夏にふさわしいライトウエイトのシルク生地に施したプリントが新鮮。評判のピンドットの落ち着きとは異なる、矩形の柄に表れる軽快なツヤは、楽しさを誘う。
華やかさならシャルベのジャカードタイを超えるものはない。先染め糸で織り上げたシルク地は、甘く撚った糸のふくらみでツヤが拡散する。強い光にタイをかざすと、フワフワと蜃気楼のようなツヤを放つのは、シャルベのタイだけである。
ポルカドットを配したボウタイは、いぶし銀のような静寂なるツヤが魅力だ。ロンドンの名門ターンブル&アッサーは、英国老舗の品格を漂わせる控えめなツヤを守る。
男の服飾において、色気をも漂わせるタイは、やはり魅惑的なツヤなくして、名品とは呼べないのである。
いかがだろう、センスのいい店には、そのシーズンの人気色・柄がそろっているのは当たり前。そこからお気に入りの1本を選ぶには、いかにツヤっぽさがあるか、ここに着目するのが肝心なのである。
※価格はすべて税抜です。※価格はすべて2016年夏号掲載時の情報です。
- TEXT :
- 矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
- BY :
- MEN'S Precious2016年夏号「絹」名品の華奢な艶めきよ
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- クレジット :
- 撮影/戸田嘉昭・小池紀行(パイルドライバー/静物) 文/矢部克已