真夏でもネクタイをすること。酷暑の日本において、これほどかっこよく、贅沢な装い方はほかにない。多くのビジネスマンが白い半袖の開襟シャツを着ている中で、タイドアップしたスタイルを守るのは、紳士のたしなみだ。もちろん、毎日でなくてもかまわない。今日はあえてネクタイをしてみようかな、と思えることが、一番大事なのだ。

そんなときに必要なネクタイを、まずは1本、新調したい。ネクタイを襟元に華やかさを演出することが出来るシルクタイは、紳士のスーツスタイルには必携な存在。ゆえに、センスは当然問われる! 昔も今も、伊達男たちから圧倒的に支持される世界トップクラスのE・マリネッラ、ターンブル&アッサー、シャルベを例に、シルクタイが持つ魅力を、今一度確認しよう。

 ツヤ、織り、色、柄、ハリ。個人的に気にしている、タイを見定める5つの要素だが、最も心が動かされるのはツヤだ。明るく軽やかなツヤや後光が広がるような華やかなツヤ、わずかな光で浮き上がる品のいいツヤは世界有数のタイに備わる。

写真上/英国紳士の襟元に欠かせないボウタイは、意外とタイよりラフに遊べる。彼のウィンストン・チャーチルも愛した、同社のロングセラー。¥12,000(ヴァルカナイズ・ロンドン〈ターンブル&アッサー〉) 左/裏地なしのセッテピエゲ仕上げ。剣先の裏に「E.M.PER TOKYO」と記された、「東京ミッドタウン」限定モデル。¥35,000(マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン〈E.マリネッラ ナポリ〉) 右/ジャカード織りで繊細な柄をつくりだす、シルクスカーフのような華やかさが香る一本。¥24,000(日本橋三越本店〈シャルベ〉)
写真上/英国紳士の襟元に欠かせないボウタイは、意外とタイよりラフに遊べる。彼のウィンストン・チャーチルも愛した、同社のロングセラー。¥12,000(ヴァルカナイズ・ロンドン〈ターンブル&アッサー〉) 左/裏地なしのセッテピエゲ仕上げ。剣先の裏に「E.M.PER TOKYO」と記された、「東京ミッドタウン」限定モデル。¥35,000(マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン〈E.マリネッラ ナポリ〉) 右/ジャカード織りで繊細な柄をつくりだす、シルクスカーフのような華やかさが香る一本。¥24,000(日本橋三越本店〈シャルベ〉)

 ナポリの名店、E.マリネッラは、夏にふさわしいライトウエイトのシルク生地に施したプリントが新鮮。評判のピンドットの落ち着きとは異なる、矩形の柄に表れる軽快なツヤは、楽しさを誘う。
 華やかさならシャルベのジャカードタイを超えるものはない。先染め糸で織り上げたシルク地は、甘く撚った糸のふくらみでツヤが拡散する。強い光にタイをかざすと、フワフワと蜃気楼のようなツヤを放つのは、シャルベのタイだけである。
 ポルカドットを配したボウタイは、いぶし銀のような静寂なるツヤが魅力だ。ロンドンの名門ターンブル&アッサーは、英国老舗の品格を漂わせる控えめなツヤを守る。
 男の服飾において、色気をも漂わせるタイは、やはり魅惑的なツヤなくして、名品とは呼べないのである。

いかがだろう、センスのいい店には、そのシーズンの人気色・柄がそろっているのは当たり前。そこからお気に入りの1本を選ぶには、いかにツヤっぽさがあるか、ここに着目するのが肝心なのである。

※価格はすべて税抜です。※価格はすべて2016年夏号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
矢部克已 エグゼクティブファッションエディター
BY :
MEN'S Precious2016年夏号「絹」名品の華奢な艶めきよ
ヴィットリオ矢部のニックネームを持つ本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
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クレジット :
撮影/戸田嘉昭・小池紀行(パイルドライバー/静物) 文/矢部克已