サヴィル・ロウの老舗「ヘンリープール」で、カッターを務めていた平野史也が仕立てるスーツは、一点一点、細かなディテールにいたるまで、卓越した技術の高さが光る。そんな日本人テーラーの美意識が詰まった、ブリティッシュスタイルのスーツを紹介する。

 平野史也さんがロンドンで仕立てるスーツは、サヴィル・ロウにある、どのテーラーのスーツにも似ていない。だからといってそれは、非・英国的という意味ではない。むしろ逆で、驚くほど英国的なのだ。バストから肩甲骨にかけてのボリューム感や、強く絞ったウエスト、そして高い位置に設定された小さなアームホール……。

日本人テーラーの美意識が生んだ唯一無二のブリティッシュスタイル

スーツ¥300,000( トゥモローランド〈フミヤヒラノ〉) シャツ¥33,000〈バルバ〉・タイ¥13,000〈イコライ〉/以上ストラスブルゴ チーフ¥4,000(ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館〈フィオリオ〉)

 そこから描かれる優雅なシルエットは、彼がこの地で学んだ、英国伝統のイングリッシュドレープそのもの。しかも襟の取り付けからボタンホールのかがりにいたるまで、かなりの箇所が手縫いで仕上げられている。サヴィル・ロウではほぼ途絶えてしまったこの繊細な縫製技術は、彼が日本で習得したものだという。

 そう、彼は英国スーツだけが放つにおいをこの地で身につけ、日本の技術によってそのルーツを現代によみがえらせた。だからこそ彼のスーツは極めて古典的であり、なおかつ新鮮に見えるのだ。

※価格は全て税抜です。※価格は2016年秋号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
山下英介 MEN'S Preciousファッションディレクター
BY :
MEN’S Precious2016年秋号 紳士の心を昂ぶらせる「英国名品」のすべてより
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。
クレジット :
撮影/戸田嘉昭・唐澤光也・小池紀行(パイルドライバー/静物) スタイリスト/武内雅英(code) 文/山下英介