紳士靴の基本は昔も今もイギリスにある。変わらぬ伝統とたゆまぬ革新を続ける5大ブランドを改めて深く知りたい。

イギリスの靴を愛好する男性なら知らぬ者のない、「エドワード グリーン」「チャーチ」「アンソニー クレバリー」「グレンソン」「ジョセフ チーニー」。紳士の国イギリスを代表する5大靴ブランドである。このブランドを選べば安心、というイギリス靴の定番でもあるが、その最新動向は意外と知られていない。そこで、間違いない靴選びのために、紳士が履くべき5大ブランドの新作を取材した。

「名品」ぞろいのブランドに新たに加わったマスターピース

「エドワード グリーン」の『デューク』

¥220,000(エドワードグリーン 銀座店)
¥220,000(エドワードグリーン 銀座店)

かつて靴職人エドワード・グリーンも手がけた、ウィンザー公が愛用していたローファーから発想されたというモデル『デューク』。モカステッチと、やや短めのヴァンプ部のコンビネーションが、クラシックなカジュアル感を醸し出している。新ラストNo.137を使用。細部に目を凝らせば、センターシームのないトウ部等、高品質な素材と高い職人性がもたらす仕様が見てとれる。さりげなくも確かな存在感は、まさに英国靴そのもの。

イギリス高級既製靴の雄が生み出す、
新たな最高級「チャーチ」の『エリオット』

¥240,000(チャーチ 表参道店)
¥240,000(チャーチ 表参道店)

20世紀半ばから、イギリスを代表する高級既製靴としてその名が知られていた「チャーチ」。その長年にわたるノウハウをつぎ込んで生み出されたのが、直営店のみで展開される『クラウン・コレクション』(写真)。一足を製作するのに58日を費やし、アッパーの革質からスキンステッチなどのディテールまで、同社の製靴技術の粋が追求されている。クラシックなアーモンドトウの新ラストを使用。各モデルには英国の作家たちの名が付けられている。

伝説的靴職人の名を冠したビスポーク由来の既製靴

「アンソニー クレバリー」の『デ レデ』

¥250,000(伊勢丹新宿店〈アンソニー クレバリー〉)
¥250,000(伊勢丹新宿店〈アンソニー クレバリー〉)

ロンドンのビスポーク靴店「ジョージ クレバリー」が手がける、かつての名靴職人の名を冠したブランド。クレバリー得意の「チゼルトウ」の流れを汲むトウシェイプ、インサイドにえぐったソールの土踏まず部など、ビスポークのクオリティを反映した既製靴だ。各モデルは同店の顧客が愛用したスタイルに由来し、『レデ』とは稀代のプレイボーイとして知られるレデ男爵(バロン・ド・レデ)のこと。

斬新なスタイルで知られるブランドが手がける正統派
「グレンソン」の『バーント』

¥68,000(大塚製靴〈グレンソン〉)
¥68,000(大塚製靴〈グレンソン〉)

近年ではウェルト部を3層にした「トリプル・ウェルト」など、ラギッドなスタイルの靴で注目を集めた「グレンソン」。その一方で、ノーザンプトン地域でも屈指の歴史を持つ同社は、オーセンティックなドレスシューズも得意としている。ブラウンスエードをアッパーに使ったキャップトウオックスフォードは、スクエアトウのクラシックなラストとスエードのカジュアル感が独特なバランス。今日のライフスタイルに納まりやすい一足といえるだろう。

エリザベス女王も認めた靴の担い手が生み出す古きよきイギリス靴の存在感
「ジョセフ チーニー」の『ジョージ』

¥69,000(ビームスF 新宿〈ジョセフ チーニー〉)
¥69,000(ビームスF 新宿〈ジョセフ チーニー〉)

2009年にジョナサンとウィリアムのチャーチ一族がオーナーとなった「ジョセフ チーニー」。2016年は「国際貿易における女王顕彰事業」に選ばれるなど、イギリス既製靴の担い手としてその存在感は増している。上の写真は、同社の人気定番モデル『ジョージ』に、ブローグ(穴飾り)やステッチ、ヒールカップの高さ等を、「ビームス」が別注したもの。往年のイギリス既製靴を彷彿させるトウシェイプも特徴だ。素材は、ドイツ製のボックスカーフを採用。

いかがでしたか?知っているようで知らなかったイギリス靴の動向。これを機にイギリス靴の魅力を再発見してみてはいかがだろう。可能ならばすべて手に入れ履き比べていただきたい。

※価格はすべて税抜です。※価格は2016年秋号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
TEXT :
菅原幸裕 編集者
BY :
MEN’S Precious2016年秋号 紳士の心を昂ぶらせる「英国名品」のすべてより
『エスクァイア日本版』に約15年在籍し、現在は『男の靴雑誌LAST』編集の傍ら、『MEN'S Precious』他で編集者として活動。『エスクァイア日本版』では音楽担当を長年務め、現在もポップスからクラシック音楽まで幅広く渉猟する日々を送っている。
クレジット :
撮影/戸田嘉昭・唐澤光也・小池紀行(パイルドライバー/静物) スタイリスト/武内雅英(code)