アラーキーこと荒木経惟さんといえば、誰しもが知る日本を代表する写真家のひとり。2016年にフランス国立ギメ東洋美術館にて開催された大規模展「ARAKI」は、世界的に大きな話題となりました。
この展覧会で発表された新作「東京墓情」が、2017年6月22日(木)~7月23日(日)の期間、銀座のシャネル・ネクサス・ホールにて、日本初公開されました。この注目の展覧会「東京墓情 荒木経惟xギメ東洋美術館」展の会場の様子をレポートします。
ギメ東洋美術館とは?
1887年、リヨンの実業家の息子、エミール・ギメ氏が「世界中の宗教に関する美術館」を建てることを目的に創設。最初は故郷リヨンにつくったものの、集客がふるわず、実業家の息子らしくリヨンに見切りをつけ、1889年パリに移転。1929年に国立美術館となり、ルーブル美術館の一部門となったことから、それぞれの専門性を高めるためにコレクションの入れ替えを実施。ギメが所有していた中東などのコレクションがルーブルに、ルーブルが所有していたインドなどアジアのコレクションがギメに移動しました。
現在では、横軸ではアフガニスタンから日本、縦軸ではモンゴルからインドネシアのアート作品をカバーしています。
今回の展覧会の見どころは?
この展示会では、ギメ美術館で2016年に展示された「東京墓情」のほか、同館所蔵の写真コレクションより、荒木氏がセレクトした幕末、明治期の貴重な古写真も展示されています。それに加えて、今回の展覧会用に撮り下ろした新作も発表。
これらがジャンル別ではなく、流れに沿ってMIXして展示がされているため、19世紀の日本を描いた古写真と、現代作家の荒木氏の創造世界が交差している、不思議な感覚を体験することができるのです。
たとえば、荒木氏の撮る花と…
19世紀に撮影された菊の花。
この古写真は「手採色」という、モノクロ写真に手で彩色をする手法でつくられたもので、現代の写真とは違う、独特の味わいがあります。
たとえば、荒木氏が入れ墨の男性を撮影すると、こう(下写真左)なりますが…
19世紀の入れ墨の男性の写真は、こんな感じ。
展示されている荒木氏のカラー写真は、ギメ美術館で展示されたモノクロの「東京墓情」シリーズに加え、今回のために撮り下ろしたもの。
緊縛されたレディー・ガガの写真は、本人たっての希望で実現したのだそう。
19世紀に撮影された上野の大仏。
自身の作品と、19世紀の写真群を並べて展示することを荒木氏が了承した理由は、「現代の写真のルーツとなる日本の写真」だと捉えたから。
1839年に写真機が発明され、1848年にオランダ人が長崎の出島に持ち込んだのが、日本に写真機と写真技術が伝わった初めといわれています。すでに1860年代には、日本でも写真技術者の養成がされるまでに。「写真と日本の文化」には、実に200年に近い長い歴史がある…関わらず、私たち日本人が「日本で撮影された古写真」を目にする機会は多くありません。
本展は日本の写真の今と昔、という大きな枠組みでの捉え方で見ても、楽しむことができるのです。
「僕の写真はおしゃべりだよ」と語っていた荒木氏。レセプションの楽しいスピーチをPreciousのInstagramにて5本に分けてお届けしています。そちらもチェックしてみてくださいね。
問い合わせ先
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東京墓情 荒木経惟xギメ東洋美術館
会期/2017年6月22日(木)~7月23日(日) ※開催終了
TEL:03-3779-4001 (シャネル・ネクサス・ホール事務局)
住所/東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
- クレジット :
- 構成/安念美和子