多彩なジャンルや業態の飲食店が無数に存在し、世界的に見てもエキサイティングな東京のフードシーン。そのなかでも、この連載ではニューオープンを中心に、「今」行きたい、「人」を連れていきたい、そんな“大人のためのレストラン”をご紹介します。第3回は、2017年5月18日にオープンした池尻大橋の「プリベドゥリアン」です。

フレンチがお好きなら、店名を見て「おっ」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。パリのミシュラン星付きレストラン「エレーヌ・ダローズ」などで修業をした上原浩一シェフが、2014年の年末にオープンして以来、リピーターを中心に連日賑わう人気フレンチ「リアン」。そこから15秒ほど、歩いてすぐの場所にオープンしたのが姉妹店の「プリベドゥリアン」です。

プライベート感を大切にした、本店とはまた別の魅力をもつ新店

白を基調にした本店の上品で清潔感のある雰囲気を踏襲しながら、「プリベドゥリアン」では黒いパーテーションやシックな色の壁材を配してよりモダンで落ち着いた空間に。店舗奥には4名まで対応可能な完全個室を備えています。
白を基調にした本店の上品で清潔感のある雰囲気を踏襲しながら、「プリベドゥリアン」では黒いパーテーションやシックな色の壁材を配してよりモダンで落ち着いた空間に。店舗奥には4名まで対応可能な完全個室を備えています。

「『リアン』のオープンから約2年半が経ち、リピートしてくださる方も増えて予約をお断りする日も多くなりました。できるだけたくさんの方をお迎えしたいという思いと、お客様の『家族や親しい人とゆっくり過ごしたい』『記念日など特別な日に落ち着いて食事をしたい』というご要望に応えるため、よりプライベート感のある店をつくることにしました」と上原シェフ。

フランス語でプライベートという意味の「プリベ(privé)」を店名に冠し、ゲストが親しい人たちとゆったりと食事が楽しめるよう、本店には無いパーテーションや個室を用意。新しい店舗には、オープンキッチンでカウンター席もあってライブ感たっぷりの「リアン」とはまた別の魅力をもつ空間が広がります。

八皿¥5,000のコースで「月1回来てもらえる店」を目指して

コースは前菜3皿、チーズとサラダ、スープ、魚料理、肉料理、デザートに食後のコーヒーかお茶がついて¥5,000。こちらは肉料理の「青森シャモロックのガランティーヌ キャベツのソテー」。上原シェフの地元である青森から最上級のシャモロックを仕入れ、胸肉のムース、アンチョビ、オリーブなどを詰めて蒸し、中はしっとり、皮はしっかり焼いて香ばしく仕上げた一品。
コースは前菜3皿、チーズとサラダ、スープ、魚料理、肉料理、デザートに食後のコーヒーかお茶がついて¥5,000。こちらは肉料理の「青森シャモロックのガランティーヌ キャベツのソテー」。上原シェフの地元である青森から最上級のシャモロックを仕入れ、胸肉のムース、アンチョビ、オリーブなどを詰めて蒸し、中はしっとり、皮はしっかり焼いて香ばしく仕上げた一品。

コンセプトが違えば、それに合わせてメニューも本店とは異なる構成に。上原シェフの地元・青森を中心に全国から産直で届く旬の食材を贅沢に使った、ボリュームもコストパフォーマンスも抜群のプリシックスコースで知られる「リアン」。対して「プリベドゥリアン」は、8皿¥5,000(!)のコースのみ。お値段にも驚きますが、これが本店と同じ上質な食材を使って一皿一皿丁寧に美しく仕上げられた料理たちで……実際に伺ってみると価格以上の満足感が得られるはずです。

「『プリベドゥリアン』はプライベート感を大切にしていますが、2店に共通して『リアン』の根本にあるのが普段使いの店という意識。どちらも月1回くらいのペースで頻繁に来ていただける店を目指しています。そのなかでも、わいわいしたいときは本店、落ち着いて食事したいときは『プリベドゥリアン』と使い分けていただけたらと。プリフィックススタイルの本店は前菜16品、メイン12品、デザート12品から選ぶ楽しみがあって、おまかせ1本の新店は少量でいろいろな料理が味わえる楽しみがあります」(上原シェフ)

おまかせ1本だからこそ、ゲストに合わせた細やかな調整を

デザートから「青リンゴのソルベ マンゴーのムース ココナッツ風味のチュイル」。白ワインでマリネしたフレッシュマンゴーやパンジーを添えて、彩りも鮮やかに。「季節感を表現しつつ、7皿の後でもさっぱり食べていただけるよう、デザートには旬のフルーツをいかしています」(塚本シェフ)。
デザートから「青リンゴのソルベ マンゴーのムース ココナッツ風味のチュイル」。白ワインでマリネしたフレッシュマンゴーやパンジーを添えて、彩りも鮮やかに。「季節感を表現しつつ、7皿の後でもさっぱり食べていただけるよう、デザートには旬のフルーツをいかしています」(塚本シェフ)。

厨房を任されたのは、「リアン」のオープン時からスーシェフを務めてきた塚本アキラ氏。ゲストひと組ずつ最初と最後に挨拶をし、料理の説明も自ら行います。そうしてゲストをしっかり「見る」ことで、各人の年齢や食べるペース、量に合わせて料理を調整しているとか。「味覚は人それぞれですし、体調や気分によってもおいしいと感じるものは変わってきます。コースは1種類ですが、そのなかでどのお客様にも満足していただくため、できる限りその方に合わせた細やかな対応を心がけています。ソースを変えたり、塩や胡椒の種類や量を変えたり。本店と共有しているので、食材の種類が通常の店の2、3倍あるのも強み。NGな食材がある方にも柔軟な対応が可能です。また、自分はソムリエでもあるので、飲まれるワインの種類、ペース、量によっても料理を調整することができます。おまかせ1本だからこそ、それぞれのお客様のためにベストを尽くしたいですね」(塚本シェフ)

ワインは料理に合わせたペアリングメニューをメインに提案。3杯¥2,500、4杯¥3,500、5杯¥4,500、8杯¥5,000と、料理同様に良心的な価格設定です(写真のボトル8本は、左端のシャンパーニュから右端の食後酒まで、コースの8皿全品に合わせるときのラインナップ)。グラスは¥1,000〜。ボトルは本店のセラーから用意することも可能。
ワインは料理に合わせたペアリングメニューをメインに提案。3杯¥2,500、4杯¥3,500、5杯¥4,500、8杯¥5,000と、料理同様に良心的な価格設定です(写真のボトル8本は、左端のシャンパーニュから右端の食後酒まで、コースの8皿全品に合わせるときのラインナップ)。グラスは¥1,000〜。ボトルは本店のセラーから用意することも可能。

心と身体に優しい、大人が「普段使い」するための2軒

ゲストへの細やかな配慮は、「目に見える」工夫と「目に見えない工夫」となって「プリベドゥリアン」の料理に反映されています。旬の食材を量・種類共にふんだんに使った料理は「目に見える」部分で彩りも美しく、ボリュームもしっかり。重たい食後感にならないよう、「目に見えない」部分として塩や油の量、調理法を考慮してヘルシーに。料理、ワイン共に明朗でストレスフリーな価格設定も特筆。心と身体、さらにはお財布にも優しいのが「プリベドゥリアン」。メンバーや気分、オケージョンに合わせて本店と使い分けることができるのも大きな魅力です。この2軒が大人の「普段使い」をより上質に、より豊かなものにしてくれる存在になることは間違いありません。

左から「プリベドゥリアン」の塚本アキラシェフ、「リアン」の上原浩一オーナーシェフ。メニューはふたりで考案。基本は月替りですが、旬の食材に合わせて日々少しずつ変わっていくそう。
左から「プリベドゥリアン」の塚本アキラシェフ、「リアン」の上原浩一オーナーシェフ。メニューはふたりで考案。基本は月替りですが、旬の食材に合わせて日々少しずつ変わっていくそう。

問い合わせ先

  • プリベドゥリアン TEL : 03-6413-8552
  • 営業時間/18:00〜22:00L.O.
    定休日/月曜
    8皿¥5,000のコースのみ。
    全16席(4名まで対応可能な個室1含む)。
    ※着席16名、立食30名程度で貸し切りも相談可能。
    住所/東京都世田谷区池尻3-18-16 1F

この記事の執筆者
早稲田大学卒業後、アシェット(現ハースト)婦人画報社に入社。『エル・ジャポン』、『エル・ガール』、「エル・オンライン」編集部を経て独立。現在はフリーランスのエディター、ライターとして紙/Webの両媒体を中心に、主にファッション、フード、ライフスタイルのジャンルで活動。セレクトショップ「ドローイングナンバーズ」ではワイン&フードのセレクトも担当。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。
PHOTO :
平松唯加子