ファブリックの組成から取り組んだ画期的な試みは、互いにリスペクトしあう美学と共に、真に独創的な「Between(ビトウィーン)」コレクションとしてここに結実した。
既存のイメージを覆す画期的なコラボレーション
膨大なアーカイブからインスピレーションを得る
1663年創業、イタリア最古のミル「ヴィターレ・バルベリス・カノニコ(以下 VBC)」。6月16日、ミラノ・モーダ・ウォモの期間中、同社のミラノショールームでは「Between(ビトウィーン)」コレクションのプレビューとローンチパーティが盛大に開催された。
このコレクション最大の特徴はVBC社がカモシタ ユナイテッドアローズ〟のために、ファブリックの開発から行った世界限定、完全なるエクスクルーシブファブリックである。
通常の同社の製品とはまったく異なる質感、カラー、フィニッシュを持つ4種類のファブリックを使用したカプセルコレクションはスーツ、オーバーコートなど7ピースで構成。今秋、世界ではMRPORTER日本ではユナイテッドアローズから販売される。
加えて、このカプセルコレクションに使用されているニットウエア、グローブ、スカーフ、帽子といったアクセサリーは英国を代表するメンズウエアストア「アンダーソン&シェパード ハバダッシャリー」から鴨志田氏自身がセレクト。このコレクションのための限定商品も用意されたのだ。
日本、イタリア、英国と各国を代表するメンズウエアブランド、ファブリックメーカー、メンズウエアストアが一堂に会した、過去にはない世界規模のプロジェクトである。
鴨志田氏によればコレクションのテーマ「Between(ビトウィーン)」が意味するものは、現代におけるファッションとクラシック、シティとカントリーウエア、グレーとグリーンといったコレクションを構成する要素すべての双方の間のデリケートなバランスを象徴している。
VBCのクリエイティブ・ディレクター、創業者一族13代目のフランチェスコ・バルベリス・カノニコ氏の監修と、同社デザインチームとの密接な連携のもと、Autumn/Winter 2019/2020シーズンに向けて製作が始まった。
このプロジェクトのために鴨志田氏が選んだ素材はグレーフランネル。色はグレーとグリーンの間、微妙な色彩感覚と今までにないマットな質感を追求した。
「Between」コレクション
「グレーフランネルはメンズウエアの象徴的存在であり、最もスタンダードなファブリックです。それをどうアップデートさせるのか。自分流の解釈でできあがったのが今回のコレクションです。機能性素材にも注目して裏地のラミネート加工や、圧縮してフィニッシングの方法を変えるところまでやりました。特にフィニッシングはメーカーのキモですからなかなか変えることはできないことですが、それを快くやってくれ、今までにない独特の風合いのフランネルができた。カモシタというブランドがつくりたかったエフォートレス(気負わない)なクラシックスタイルがこれで完成したと思います」
フランチェスコ・バルベリス・カノニコ氏はコラボレーションをこう語る。
「私の期待をはるかに超えた結果に喜んでいます。弊社は年間1000万m以上の服地を製造し、メイド・イン・イタリーのウールの服地では最大のプロデューサーです。生産規模が大きいため、今回のようにファブリック開発から共同で取り組むプロジェクトは非常にまれです。しかし、鴨志田氏には優れた色彩感覚と控えめでエレガントなスタイルがあり、日本と西洋、双方の折衷的な美しさがあります。私はファブリック製造のプロですから、鴨志田氏がどのように共同開発したファブリックからコレクションをつくるのか、大変興味深く思っていました。結果、今まで見たことのないファブリックが完成しました。鴨志田氏によってVBCの製造するファブリックの可能性と新しい魅力が引き出されたことに感謝しています」
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2019年秋号より
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- PHOTO :
- Lyle Roblin、James Holborow
- EDIT&WRITING :
- 長谷川喜美