小さなクルマにすし詰め状態でバカンスに出かける若者や家族。中に入りきらない荷物を屋根に積んで、えっちらおっちら進む姿が微笑ましい。最近はそんな光景を見かけなくなったが、同じような気分で楽しく遊びに行けるクルマが登場した。それが、フォルクスワーゲンのコンパクトSUV「T-Cross」だ。
「レス・イズ・モア」を思わせる設計
欧州でむかしから見かける光景。男たちがぎゅう詰めになりながら、小さなクルマに乗っている。それも楽しそうなのだ。街中ではコンパクトカーが当たり前の欧州では、楽しい気分にさせてくれるクルマが出てくる。
さいきんだと、フォルクスワーゲンのT-Cross(ティークロス)がいいと思う。全長4115ミリのクロスオーバー型ハッチバックで、車高は1580ミリとやや高めで、背髙のっぽなスタイルがなかなかユーモラスである。
エンジンは999ccの3気筒。7段ツインクラッチ変速機を介して前輪を駆動する。3気筒はじつは振動の面で4気筒よりすぐれる。日本でもトヨタなど3気筒を新開発しているぐらいだ。
すこしおおげさだけれど、バウハウスでも教鞭をとっていた建築家ミース・ファン・デル・ローエの「レス・イズ・モア」(より少なくしてより豊かなものを追究する)を思わせるではないか。
ハンドリングといって、カーブなどでステアリングホイールを切って走るときのクルマの動きが、とてもいい。重くないステアリングホイールは、抵抗もなく、ドライバーが望んだとおりのラインを外れずに、すっと曲がってくれるのだ。
乗り心地も、路面の凹凸をきれいに吸収するサスペンションのおかげで快適。室内に路面からのノイズが入ってこないよう遮音もしっかりされている。比較的小さなクルマだけれど、クオリティ感はクラスを超越している。
楽しさが滲み出るスタイリング
85kW(116ps)の最高出力と200Nmの最大トルクを持つエンジンは、上り坂や急な加速時にギアをDレンジに入れたままだとやや苦しい場面があるけれど、そういうときは、マニュアルシフトといって、手動でギアを選べばよい。
燃費を考えてギア比が高く設定されているのと、シフトアップするタイミングが早めなのだろう。クルマのキャラクターを理解して、ドライバーが補うように走ればそれなりに活発だ。
デザインはおとなにもウケそうだ。SUV的なスタイルだが、過剰な装飾はなく、理知的な線と面とで構成されている。それでいて、フロントマスクは、グリルに入った横基調のクロームのラインと、ヘッドランプに組み込まれたLEDのポジションランプがつながって、アクティブなかんじが出ている。
つまらないクルマという印象がないのが、なによりよい。とりわけ、「デザインパッケージ」というオプションを選ぶと、ホイールやミラーとボディ、それにダッシュボードやシート表皮までカラーコーディネートされるのだ。
日本にはまず「T-Cross TSI 1st」(299万9000円)と、「T-Cross TSI 1st Plus」(335万9000円)が導入される。どちらもボディもエンジンも共通だ。
後者は、ホイールリム径が2インチ上がって18インチになることをはじめ、車線逸脱防止のレーンキープアシスト、ハイビームアシスト、パドルシフトとスポーツコンフォートシート、それに「デザインパッケージ」が用意される。
【フォルクスワーゲンT-Cross TSI 1st Plus(導入記念特別仕様車)】
ボディサイズ:全長4,115×全幅1,760×全高1,580㎜
駆動方式:2WD
トランスミッション:7速AT(DSG)
エンジン:999cc 直列3気筒ターボ
最高出力:85kW(116PS)/5,000~5,500rpm
最大トルク:200Nm/2,000~3,500rpm
価格:¥3,359,000(税込)
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- TEXT :
- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト