「銀座メゾンエルメス」の空間を活かした、幻想的で美しいインスタレーション

独自性のある展覧会で知られる「銀座メゾンエルメス」8階のギャラリー、「メゾンエルメス フォーラム」。現在開催中の展覧会「コズミック・ガーデン」は、ブラジル・サンパウロを拠点に制作を続けるサンドラ・シントさんによる、ドローイングをいかした個展。

レンゾ・ピアノ氏が設計したガラスブロックの空間と、シンクロしながらさまざまな表情を見せる、神秘的で美しいインスタレーションです。

ペン1本を使ったドローイングで、自然と時間を描き出すサンドラ・シントさん

2週間をかけて5名のアーティストとともに「銀座メゾンエルメス フォーラム」の壁全体にドローイングを施し、青の世界を創り上げたサンドラ・シントさん。

ブラジル・サンパウロを拠点に活動するシントさんは、星や結晶、波などをモチーフとしたドローイングを用いて、建築や空間と密接に関わったインスタレーションを、数多く手がけてきたアーティストです。

彼女が主に使うのは、ペン1本。誰にでもできる原始的な手法を使ってメッセージを発信するということを、非常に大切にしているのだといいます。

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白いペン1本で繊細かつ緻密なモチーフを描くシントさん。  PHOTO : Nacása & Partners Inc./Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès

朝・昼・夜、ガラスブロック越しに時間と光の移ろいを感じて…

会場は大きくふたつに分かれています。まず、エレベーターを降りて右側に広がる、明るい青の世界。壁一面に描かれたドローイングを、ガラスブロックを通して刻々と変わる、日の光が照らします。

「空間を活かした作品が多い私にとって、建築との対話や関係性は非常に重要です。レンゾ・ピアノ氏による建築のなかで制作できたことを、うれしく誇りに思います。この空間のなかで最も特徴的な要素が、ガラスブロック。光を取り込むこのブロックを活かして、会場全体で時と光の移ろいを表現しました」(シントさん)

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白と銀の細かな線によって描かれたのは、橋や風にゆれるブランコ、波、天空、宇宙といった人間の力が及ばない光景。シントさんは、自然の強大な力そのものではなく、そういったものと直面したときに、私たちが向き合う感情について問いかけます。  PHOTO : Nacása & Partners Inc./Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès
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会場に点在するキャンバスの作品は、すべてサンパウロで描かれたもの。これらの作品を出発点として、「コズミック・ガーデン」のドローイングが制作されました。日系人が多いブラジルにあって、日本の文化が身近にあったというシントさん。今回のドローイングは、日本の浮世絵や版画からも影響を受けているといいます。  PHOTO : Nacása & Partners Inc./Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès
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夜の空間に続く空間には、星空や星あかりを思わせるモチーフが描かれています。  PHOTO : Nacása & Partners Inc./Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès

シントさんの長年の願いが実現した、全身でアートを感じる空間

会場を進むにつれて、明るいブルーは濃く深く、紺碧へと変化します。奥の空間が、夜を表現したもうひとつのスペース。こちらでは靴を脱いで鑑賞します。

「深い夜の世界へようこそ! ここではリラックスして、ゆったりと過ごしてください。座ったり寝転んだりもできますよ」(シントさん)

床には星空を描いた絨毯やクッションが設置され、文字通り腰を下ろすのも寝そべるも自由。見渡せば、周りには神秘的な宇宙空間が広がります。

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ここに描かれたのはブランコやシャンデリア、リングなど。動きを表すモチーフや光を表現したモチーフなど、それぞれに意味が込められています。ひとつひとつの意味に思いを馳せながら鑑賞してみてはいかがでしょう。  PHOTO : Nacása & Partners Inc./Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès

実は、カーペットを使ったインスタレーションは初めてなのだとか。

「長年の間、よりトータルに作品を体感できる、親密な空間が創りたいと考えていました。ブラジルでは実現ができていなかったのですが、やっと願いがかないました。これは私にとって、頭に思い描いたことをすべて形にすることができた、初のインスタレーションです」(シントさん)

この空間でぜひ注目したいモチーフが、星に架かる橋。

「アートを通して人と自然の橋渡しをしたいと思っています。人工的に創り出された自然ではありますが、私の作品が自然に思いを巡らせる、きっかけになればと願っています。また、国と国の争いが続く現代にあって、アートは人と人を繋げる役目を担うことができるのではないか?と。そういった思いを込めて、橋を描きました」

「コズミック・ガーデン」展に込められた願いがもうひとつあります。それは、「この親密でリラックスできる空間を通して、訪れる人に元気になってほしい」という、シンプルで温かなメッセージ。

「ここに来て、より皆さんの気分が明るくなるように、もし落ち込んでいる方がいたら、少しでも気分が晴れるように。そんな願いを込めて制作しました」

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笑顔がチャーミングなサンドラ・シントさん。PHOTO : Nacása & Partners Inc./Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès

モダンアートやインスタレーションというと、構えたり難しく考えたりしてしまいがちですが、「コズミック・ガーデン」展ではもっと直感的に、空間に身を委ねて、ただただリラックスすることができます。

もしかしたらこの展覧会は、あなたのなかのアートという概念をやわらかく変えてくれる、きっかけになるかもしれません。

「コズミック・ガーデン」 サンドラ・シント展  詳細

会場/銀座メゾンエルメス フォーラム
会期/2020年2月11日(火・祝)〜5月10日(日)
開館時間/11:00〜20:00(月曜〜土曜/入場は19:30まで)、11:00〜19:00(日曜/入場は18:30まで)
定休日/エルメス銀座店の営業時間に準ずる
入場料/無料
住所/東京都中央区銀座5-4-1 8F

 

問い合わせ先

銀座メゾンエルメス

TEL:03-3569-3300

この記事の執筆者
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WRITING :
門前直子
EDIT :
石原あや乃