オーダーに、レストアも!ヴィンテージカーのあれこれ


■1:憧れのコノリーの風合いを手に入れる方法

コノリーといえば英国車、特にロールス・ロイスとの関係が深く、かつては最優先でトップグレードの革が納められたという。滑らかな手触り、そして使うほどに味がでるコノリーのシートに思いを焦がす人は多いはず。とはいえ、ヴィンテージカーの状態は千差万別。特に革は劣化が心配だ。

ロールス・ロイスやベントレーのスペシャリストとして世界的に有名な「ワクイミュージアム」館長の涌井清春氏は語る。

「いかにコノリーでも30〜40年経つと傷んできます。その使用感も味わいのひとつという人もいれば、一方で修復や張り替えを望む人もいたりと、様々です」

それでも、どんなオーダーにも対応できるのが、「ワクイミュージアム」のスペシャリストたるゆえん。

’78年式〝ベントレー〟『コーニッシュ』のオリジナル〝コノリー〟シート。本来は丈夫だが、使用頻度の高い運転席は傷みやすい。『ビスポーク』では、ほかのシートとの風合いと合わせた張り替えも可能だ。
’78年式ベントレー『コーニッシュ』のオリジナルコノリーシート。本来は丈夫だが、使用頻度の高い運転席は傷みやすい。『ビスポーク』では、ほかのシートとの風合いと合わせた張り替えも可能だ。

大きく破れていなければ部分的な修復は可能で、張り替えた場合でも、「オーナーの希望や予算にもよりますが、可能な限りコノリーの風合いに近づける技術はあります」(涌井氏)とのこと。

そして、もちろんエンジンやボディ、足回りもよみがえらせることはできる。その名も『ビスポーク』というレストアメニューで、全身に手を入れることで新車のような味と輝きを取り戻せるという。コノリーを始めとする英国の伝統を体感できる、価値あるオーダーだ。

「ワクイミュージアム」の『ビスポーク』でよみがえった’72年式〝ロールス・ロイス〟『シルバーシャドウ』のシート。厳選された12~13頭分の牛皮の、さらにいいところだけを使用し、〝コノリー〟に近い、しっとりとした風合いを再現。内装の参考価格は400万円前後。
「ワクイミュージアム」の『ビスポーク』でよみがえった’72年式ロールス・ロイス『シルバーシャドウ』のシート。厳選された12~13頭分の牛皮の、さらにいいところだけを使用し、コノリーに近い、しっとりとした風合いを再現。内装の参考価格は400万円前後。
外観も美しい仕上がり。
外観も美しい仕上がり。

■2:名車の修理・復元は「ヤナセ」にお任せ!

今でこそ海外自動車メーカーの日本法人が多数設立されているが、メルセデス・ベンツを始めとする輸入車の存在をわれわれに知らしめたのは、「ヤナセ」の功績だ。

2020年に創立105周年を迎えた輸入車販売の老舗は、昨年、乗って楽しむクラシックカーをテーマにしたレストア修理部門、「ヤナセ クラシックカー センター」をオープン。対象となるのは「ヤナセ」及びグループ会社が輸入・販売してきたメルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、アウディに加え、多くのインポーターのサポートを受けて輸入されたクルマも含まれる。

世界的にも希少な〝メルセデス・ベンツ〟『600プルマン』も、1年半かけて新車同様によみがえらせた。
世界的にも希少なメルセデス・ベンツ『600プルマン』も、1年半かけて新車同様によみがえらせた。

レストア修理にあたっては、神奈川県横浜市内にあるファクトリーか、遠方のオーナーにはスタッフが訪問し、依頼内容を仔細に検討。最善の方法で元気な状態に修復・復元する。世界的にも評価が高い「ヤナセ」の技術、そして長年輸入車に携わってきた知識と経験があってこそ可能なサービスだ。

「レストア修理を通じて、ベテランから若手のメカニックへ技術を継承していくことも重要な使命です」(ヤナセ クラシックカーセンター 担当取締役の梶浦誠治氏)という言葉の、なんと心強いことか。ヴィンテージカーライフを後押しする「ヤナセ」で、愛車をよみがえらせたいと考えるオーナーは確実に増えている。

全長6m強の巨体も余裕で収まるファクトリー。
全長6m強の巨体も余裕で収まるファクトリー。
塗装はすべて剝離して下地から仕上げた。漆黒の輝きを得て往年の風格をまとうその姿に、オーナーも心から満足していた。(ヤナセクラシックカー センター)
塗装はすべて剝離して下地から仕上げた。漆黒の輝きを得て往年の風格をまとうその姿に、オーナーも心から満足していた。(ヤナセクラシックカー センター)

■3:’50年代の気品を新車で!『ラ・サルト』という選択

現代のクルマにはないデザインや操作感は、ヴィンテージカーの大きな魅力。理想の一台を見つけるのは容易ではなく、それもまた楽しみのひとつではあるが、目線を変えればこんな選択肢もある。それが、ル・マン24時間レースの舞台となるサーキットの名前を与えられた『ラ・サルト(La Sarthe)』。

クラシックロールス・ロイス&ベントレーのレストアで豊富な経験を持つ英国のスペシャリスト「BENSPORT」が、最新の技術とクラフトマンシップを投入してつくりあげた。

参考価格はおよそ8,000万円~。(ワクイミュージアム「ヘリテージ」)
参考価格はおよそ8,000万円~。(ワクイミュージアム「ヘリテージ」)

一見すると往年のベントレーに見えるが、このクルマは実在したものではない。「1950年代にベントレーが2シーターのリアルスポーツをつくっていたら、こんなクルマになったのでは」というストーリーに基づいたオリジナルカーなのだ。

中身は’50年代前半のベントレー『Mk6/Rタイプ』のコンポーネンツを流用し、ボディはオールハンドメイドの総アルミ合金製。世界限定24台のピュアなスポーツカーだ。1924〜’30年の間に、ル・マン24時間レースを5度制した、ベントレースポーツカーのスパルタンな雰囲気が色濃く漂うその姿は、息をのむ美しさ。ル・マン24時間レースにちなみ、生産台数は24台。日本での販売は「ワクイミュージアム」が行っている。


■4:メイド・イン・ジャパンの名車は今が買い時だ!

魅力的なヴィンテージカーは、日本にも存在する。有名なのはトヨタ『2000GT』や日産『スカイラインGT-R』。だが、この2台は希少価値が高く、ビギナーが手に入れるのは難しい。そこでおすすめするのは、もう少し現実的でファッション性も高い、写真の3台だ。

いすゞ『117クーペ』は、ジョルジェット・ジウジアーロがデザインを手がけた傑作。特にハンドメイドボディの初期型は価値が高い。

いすゞ『117クーペ』1968~’81年に製造。写真は初期型で、流通量は少ない。中古車相場は130万~600万円。
いすゞ『117クーペ』1968~’81年に製造。写真は初期型で、流通量は少ない。中古車相場は130万~600万円。

また、ファストバックスタイルが美しい日産の初代『フェアレディZ』は、一部の高性能版を除けば、手頃な中古車が比較的多く流通している。

日産『フェアレディZ』1969~’78年に製造。中古車相場は300万~1000万円。探しやすいが、改造車が多い。
日産『フェアレディZ』1969~’78年に製造。中古車相場は300万~1000万円。探しやすいが、改造車が多い。

もう1台はマツダの初代『サバンナRX-7』。ヨーロピアン・スポーツカーを思わせるスタイリングは、今見ても新鮮だ。

マツダ『RX-7』1978~’85年に製造。中古車相場は130万~400万円と低めだが、やはり改造車が多い。
マツダ『RX-7』1978~’85年に製造。中古車相場は130万~400万円と低めだが、やはり改造車が多い。

国内外のヴィンテージカーに詳しいカーショップ、「CGクラフト」の小林和夫氏いわく、「いちばん探しやすいのは『フェアレディZ』で、初期型の『117クーペ』はエンジンの調子と、ハンドメイドボディのゆがみが判断のポイント。『RX-7』はリトラクタブルライトの作動具合など、細かい部分まで念入りにチェックしましょう」とのこと。

近年は日本車も海外流出の傾向にあり、この3台もいずれ入手困難になること確実。今のうちに、ベストな一台を手に入れたい。

※2019年秋号掲載時の情報です。

この記事の執筆者
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篠原晃一