ビジネスシーンにおいて、男のドレスシャツは、絶対にシンプルなものでなくてはならない。決してそれ自体は出しゃばらないのに、なぜか合わせるスーツやジャケットを 上質に見せてくれるような......。それには、あくまでも白シャツの生地や縫製、仕立ての全てが一流でなくてはならない。ここにあげた12のブランドに代表されるような、そんな白シャツだけが「正解」なのである。
ファッションプロが認める究極の白シャツ。和魂洋装、蝶矢シャツの名品
白シャツが格好よいと感じたのはミラノだった。街中の人々が粋に白シャツを着こなす姿を見て驚いた。それから名だたる舶来白シャツを着たけれど、どこかしっくりこなかった。どの白シャツも品質は高いのだが、華奢な自分には濃すぎると感じた。そこで、日本人に合う白シャツを想い、脳裏に浮かんだのは、小津安二郎の映画に出てくる笠智衆だった。タフガイではないけれど、いかにも真面目そうで日本のジェントルマンを感じさせる。白シャツの着こなしもネクタイを結ぶと襟がピッタリ合うくらいで、飾り気はなかった。
そんな笠智衆をイメージして、かつて企画を手がけた蝶矢シャツでつくったのがこの白シャツである。襟は襟元をピッタリ合わせ、襟先が上着に隠れる開きのセミワイドに設定して、ディテールはフレンチフロントと英国調の白蝶貝ボタンでシンプルにまとめた。各国の仕様のいいとこ取りをしたような脈絡のなさはあるものの、そのミックス感が東京らしさであろう。本場仕込みのミラノ風カツレツを堪能しつつ、お座敷で食べるトンカツ定食も外さない食生活のように、どこかホッとする着心地があった。その後、この仕様は廃番になったけれど、変貌する東京では白シャツも進化するのである(ライター・織田城司)
しなやかな生地や、硬質な襟……。美しいドレスシャツは、スーツを着た男の背筋を伸ばす
ハンドメイドのステッチはそでを通した者と調和し、自然な表情を引き出す
夏のスーツスタイルに自然な色気と清涼感を添える
Avino Laboratorio Napoletano
アヴィーノ ラボラトリオ ナポレターノ
ストイックさの中にさりげない主張を秘めたモードの白シャツ哲学
いかがだろう、シンプルな白シャツこそ、いいものを着て差をつけたい。画一的なサラリーマンルックの白シャツとは一線を画す名品の肌触りを、是非とも体験していただきたい。
- TEXT :
- 山下英介 MEN'S Preciousファッションディレクター
- BY :
- MEN’S Precious2017年夏号 これぞ究極の「白シャツ」列伝!より
- クレジット :
- 撮影/川田有二(人物)、小池紀行(パイルドライバー/静物) スタイリスト/村上忠正 ヘア&メーク/ Kazuya Matsumoto(W management) モデル/ Trayko レイアウト/武藤一将デザイン室 構成/山下英介(本誌)