ビジネスシーンにおいて、男のドレスシャツは、絶対にシンプルなものでなくてはならない。決してそれ自体は出しゃばらないのに、なぜか合わせるスーツやジャケットを 上質に見せてくれるような......。それには、あくまでも白シャツの生地や縫製、仕立ての全てが一流でなくてはならない。ここにあげた12のブランドに代表されるような、そんな白シャツだけが「正解」なのである。

ファッションプロが認める究極の白シャツ。和魂洋装、蝶矢シャツの名品

白シャツが格好よいと感じたのはミラノだった。街中の人々が粋に白シャツを着こなす姿を見て驚いた。それから名だたる舶来白シャツを着たけれど、どこかしっくりこなかった。どの白シャツも品質は高いのだが、華奢な自分には濃すぎると感じた。そこで、日本人に合う白シャツを想い、脳裏に浮かんだのは、小津安二郎の映画に出てくる笠智衆だった。タフガイではないけれど、いかにも真面目そうで日本のジェントルマンを感じさせる。白シャツの着こなしもネクタイを結ぶと襟がピッタリ合うくらいで、飾り気はなかった。

そんな笠智衆をイメージして、かつて企画を手がけた蝶矢シャツでつくったのがこの白シャツである。襟は襟元をピッタリ合わせ、襟先が上着に隠れる開きのセミワイドに設定して、ディテールはフレンチフロントと英国調の白蝶貝ボタンでシンプルにまとめた。各国の仕様のいいとこ取りをしたような脈絡のなさはあるものの、そのミックス感が東京らしさであろう。本場仕込みのミラノ風カツレツを堪能しつつ、お座敷で食べるトンカツ定食も外さない食生活のように、どこかホッとする着心地があった。その後、この仕様は廃番になったけれど、変貌する東京では白シャツも進化するのである(ライター・織田城司)

織田さんが2010年に自ら企画し、着込んだ〝蝶矢〟の白シャツ。生地は繊細さよりも耐久性を意識して、しっかりした綿の100番手双糸を使用している。

しなやかな生地や、硬質な襟……。美しいドレスシャツは、スーツを着た男の背筋を伸ばす

 

1 Grosvenor グロヴナー 現代の装いにフィットするモダンな英国シャツ 厚めの芯が入った襟やカフスなど、〝ターンブル&アッサー〞をややソフトにしたかのような、デイリーに取り入れやすい英国製シャツ。洗うほどに味が出る、ヘリンボーン織りの生地を使っている。¥20,000(シップス 銀座店〈グロヴナー〉) 2 Orian オリアン ドレッシーなツイル生地が新鮮! エレガントな光沢感を放つ、ツイル生地のワイドカラーシャツ。ボディはほどよいスリムフィットだ。マシンメイドながらよいシャツの要諦をきっちり押さえた、バランスのよい一枚である。¥23,000(ビームス ハウス 丸の内〈オリアン〉) 3  Isaia イザイア 背筋を伸ばしてくれる精悍なタブカラー ビスポークスーツによく似合う、ラウンドのタブカラーシャツ。生地は100番手のブロードで、シャキッとした心地よい肌触り。ハンドによるそで付けや精密なステッチなど、つくりも抜群だ。¥38,000(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン) 4   Luigi Borrelli ルイジ ボレッリ ドラマティックな表情を描くダイアゴナル(斜め縞)織り! 高番手生地とくっきりとした畝感が相まって、シルクのような光沢を放つ一枚。『ファビオ』というワイドカラーは、タイドアップしたときはもちろん、ノータイで着てもエレガントだ。¥35,000(バインド ピーアール〈ルイジ ボレッリ〉)

ハンドメイドのステッチはそでを通した者と調和し、自然な表情を引き出す

1 Tie Your Tieタイ ユア タイ ハズしの美学を具現化した軽やかなドレスシャツ 薄手で軽やかなブロード製ドレスシャツは、カラーステイを入れずやわらかく仕立てたワイドカラーが魅力。スーツに合わせたときの剣先のハネ感が、実に洒落ているのだ。シルク製のガセットも美しい。¥66,000(タイ ユア タイ 青山) 2 100 Hands ハンドレッドハンズ その名のとおり、常識を超えたハンドメイドシャツ! 〝職人の100の手" を意味するオランダブランド。インドの職人が生地を手裁断し、32か所を手で縫うという、驚きのハンドメイドシャツだ。生地はコットンリネンで、素朴な味わいがある。¥42,000(ザソブリンハウス〈ハンドレッドハンズ〉) 3 Finamore フィナモレ 襟まわりの表情を豊かにするハンドステッチの味 英国製のオックスフォード生地と、ナポリ伝統のハンドメイド技術が融合した、セミワイドカラーのドレスシャツ。製品洗いの仕上げと相まって、手縫いされたソフトな襟の表情が実に味わい深い。¥33,000(アマン〈フィナモレ〉) 4 Barba バルバ 日本人の体型を研究し尽くした動きやすい細身シャツ ナポリの名門ブランドに、日本人の体型に合わせて別注。光沢感あるロイヤルオックスフォード生地と、洗練された細身シルエットの組み合わせは、抜群のバランスだ。¥29,000(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター〈バルバ〉)

 夏のスーツスタイルに自然な色気と清涼感を添える

Avino Laboratorio Napoletano

アヴィーノ ラボラトリオ ナポレターノ

強撚糸を織ったボイル生地のシャツは、ナポリのファクトリーらしいソフトな襟と、夏っぽい涼やかな表情が魅力。やや明るいネイビースーツと合わせれば、清潔な色気が香り立つ。シャツ¥35,000(ビームス ハウス 丸の内〈アヴィーノ ラボラトリオ ナポレターノ〉) スーツ¥700,000(タイ ユア タイ 青山) タイ¥29,000(キートン) チーフ¥3,800(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店〈ユナイテッドアローズ〉) 時計¥2,110,000(ブレゲ ブティック銀座)

ストイックさの中にさりげない主張を秘めたモードの白シャツ哲学

1 Hermèsエルメス 切れ味鋭いレギュラーカラーと、清潔なブロード 生地を組み合わせた、フランスらしいプレーンなドレスシャツ。カフスには「クルー・ド・セル(鞍の鋲)」をモチーフにしたメタルボタンが使われており、スーツスタイルの品のよいアクセントになってくれる。¥57,000(エルメスジャポン) 2 Pradaプラダ 寡黙さを追求したモダンなドレスシャツ ストレッチの効いたブロード生地による、シャープなシルエットのシャツ。ステッチをほとんど露出させない縫製や、前立てのないフレンチフロント、低い台襟、ツヤ消しの白蝶貝など、隅々にまでモダンな寡黙さを貫いている。ぜひとも5㎝幅のネクタイを合わせたい。¥55,000※予定価格(プラダ ジャパン)

 いかがだろう、シンプルな白シャツこそ、いいものを着て差をつけたい。画一的なサラリーマンルックの白シャツとは一線を画す名品の肌触りを、是非とも体験していただきたい。

この記事の執筆者
TEXT :
山下英介 MEN'S Preciousファッションディレクター
BY :
MEN’S Precious2017年夏号 これぞ究極の「白シャツ」列伝!より
MEN'S Preciousファッションディレクター。幼少期からの洋服好き、雑誌好きが高じてファッション編集者の道へ。男性ファッション誌編集部員、フリーエディターを経て、現在は『MEN'S Precious』にてファッションディレクターを務める。趣味は買い物と昭和な喫茶店めぐり。
クレジット :
撮影/川田有二(人物)、小池紀行(パイルドライバー/静物) スタイリスト/村上忠正  ヘア&メーク/ Kazuya Matsumoto(W management) モデル/ Trayko レイアウト/武藤一将デザイン室 構成/山下英介(本誌)