車高があるSUVは、ボディサイズが大きくなるほど迫力が増す。運転する側は、慣れてしまえばそれほど扱いづらさを感じることはないが、知らず知らずのうちに、周囲に威圧感を与えてしまう可能性はある。高級車ブランドのメルセデス・ベンツならなおさらだ。高級だから、有名だからというだけでなく、あらゆる運転レベル・世代のドライバーをリラックスさせるクルマづくりにこそメルセデスの本質があることを、ぜひ知ってほしい。3列シートの新型「GLS」にも、変わらぬ哲学が貫かれている。
大柄な人にも対応する3列シートを装備
新型「GLS」は従来型と比べ、ホイールベースを60mm延長したことで居住性、さらには積載性を向上させている。とくに2列目シートには電動の前後スライド機能が採用されている。もっとも後方にスライドさせた場合、リアシートの足元には旧型より87mmも広いレッグルームが出現する。大人がゆったりと足を組むことができる広さだ。
全モデル標準装備である3列シートへの乗降性も向上。同時に、これまでならエマージェンシー的な扱いだった2人掛けの3列目シートも、身長194cmの乗員まで対応できるほどのゆとりを実現している。ちなみに3列目シートは可倒式(2列目も)で、5人乗車時のラゲッジルームのスペースは広大だ。
余裕を感じさせるインテリアの仕上げは、実にエレガント。その質感はメルセデスのスタンダードを大きく上回る。もちろん、高度なデジタル技術にも抜かりはない。ダッシュボードには12.3インチのワイドディスプレイが鎮座。コックピットディスプレイと1枚のガラスカバーのように仕上げられ、未来的な眺めだ。
V8ツインターボもラインアップ
キャビン拡大に一役買ったホイールベースの延長は、走りにも影響を与えているはず。直進安定性の向上とピッチングの少ない、ゆったりとした、まさにフラッグシップSUVにふさわしい乗り心地になったことは、スペックからも想像できる。「GLS 400 d 4MATIC」に与えられたパワートレインは、最高出力330馬力、最大トルク700Nmを発生する3Lの直列6気筒ディーゼルエンジン。重量のあるSUVながら、低回転域からトルクフルな走りを披露してくれるだろう。
さらに「GLS 580 4MATICスポーツ」には、最高出力489馬力、最大トルク700Nmの4.0L、新型のV型8気筒直噴ツインターボエンジンが搭載される。最高出力22馬力、最大トルク250Nmを発生する電気モーターが組み合わされたマイルドハイブリッドで、よりリッチな乗り味を楽しめるはず。
そうしたゆとりある走りを包み込むエクステリアは、最新のメルセデスの流儀に則ったデザイン思想で貫かれている。フロント部分を見れば8角形の大型ラジエーターグリル、クローム仕上げのアンダーガード、2本のパワードームを備えたボンネットなど、その流儀を守りながら、SUVとしての存在感を存分に表現できている。これだけの大きさでありながらもエアロダイナミクスの改善も追求し、Cd値は0.32。同じセグメントを見渡しても、かなり優秀な空力性能を実現している。
優越感に浸れるのは確実だが、目立つことを認識しつつ、謙虚なドライビングに務めるのが、同乗者や周囲への最高のおもてなしといえる。それは乗員をリラックスさせることでは随一の、メルセデスならではの「流儀」でもある。
写真の車両はすべて本国仕様(GLS 580 4MATICスポーツ)です。
【メルセデス・ベンツ「GLS 400 d 4MATIC」】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:5,210×1,955×1,825mm
車両重量:2,540kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:9速AT
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ/2,925cc
最高出力:243kw(330PS/3,600~4,200rpm)
最大トルク:700Nm/1,200~3,200rpm
価格:¥11,481,819
問い合わせ先
- TEXT :
- 佐藤篤司 自動車ライター