「ムービングダイヤモンド」を生み出した「Chopard(ショパール)」とは、どんなブランド?
創業者:ルイ-ユリス・ショパール
創業地:スイス・ソンヴィリエ
創業年:1860年。自由に動き回る「ムービングダイヤモンド」を生み出した、ハイジュエリー&ウォッチメゾン。カンヌ国際映画祭のオフィシャルパートナーとしても知られている。2018年7月以降、すべてのジュエリーとウォッチに「100%エシカルゴールド」を使用するなど、サステナブルな取り組みにも力を注いでいる。
クラフツマンシップと独立精神を支える、愛と幸せに満ちたファミリービジネス
■創業当時のエピソード
ショパールの歴史が幕を開けたのは、1860年。スイス・ジュラ地方の小さな村、ソンヴィリエに生まれた創業者のルイ-ユリス・ショパールが、24歳の時に地元に開いた懐中時計とクロノメーターを専門とする時計工房からスタートしました。
優れた精度と信頼性、そして斬新なデザインを兼ね備えたルイ-ユリスの時計は、多くの時計愛好家から高く評価され、19世紀末から20世紀初頭にかけては、ロシア皇帝ニコライ2世の宮廷でも愛用されていました。
その後、1915年にルイ-ユリスの息子であるポール-ルイ(ポートレートの中央上)が会社の経営を引き継ぎます。そして1937年、国際的な時計製造と取引の中心地であるジュネーブに本社を移転させました。
■ブランドの転機
1943年にはポール-ルイの息子、ポール-アンドレ(ポートレートの左)が3代目を継ぎましたが、戦後の困難な時期でもあり、経営は衰退へ。ポール-アンドレは自分の息子たちに後を継ぐ意思がないことを知り、会社を売却することを決意します。
そして1963年に出会ったのが、ドイツのフォルツハイムで時計や宝飾品の職人として代々事業を営んできたカール・ショイフレ3世でした。
スイス、特にジュネーブの時計マニュファクチュールを買収することで、さらなる事業拡大を考えていたカールと、ポール-アンドレはすぐに意気投合。出会ってからわずか30分後に契約が成立したのです。
これにより時計製造とジュエリー製作の技術が融合したショパールは、ジュエリーウォッチを手がけるトップメゾンとして新たなステージへと進むとともに、家族経営のスタイルを貫くことで独自のクラフツマンシップを守っていきます。
1976年に誕生したのが、ショパールを代表する「ハッピーダイヤモンド」ウォッチです。2枚のクリスタルサファイアの間で、クルクルと回りながら自由に動き回る「ムービングダイヤモンド」は、後に特許を取得。時計業界に驚きを与えた革新的な技術は、同時に世界中の女性を虜にしました。
従来の固定されたダイヤモンドとは異なり、枠から解き放たれて躍動的に動くダイヤモンドの「幸せそう」な様子から名づけられた「ハッピーダイヤモンド」というコレクション名。そこには、創業以来メゾンが大切にしてきた「ジョワ・ド・ヴィーヴル(生きる喜びや楽しみ)」への想いが込められています。
そして、1985年に迎えたもうひとつの大きな転機が、本格的なジュエリーラインのスタートです。
カールの娘であるキャロラインが、ティーンエイジャーのころに描いたピエロの絵をもとにジュエリーをデザイン。おなかの部分にムービングダイヤモンドとカラーストーンが収められた「ハッピークラウン」は人気を博し、ブランドマスコットにもなりました。
■ブランドのアイコン・定番アイテム
ショパールを継承したショイフレファミリーにとって、「愛」は最重要テーマのひとつ。それを最高の形で表現するために、普遍的なシンボルである「ハート」のプロポーションとラインを突き詰め、メゾンを象徴する唯一無二のモチーフへと昇華させました。
そんな「ハート」の中でムービングダイヤモンドが躍る、陽気な愛らしさを湛えた「ハッピーダイヤモンド アイコン」は、お守りのように身につける女性も多いという人気コレクションです。
1993年に誕生した「ハッピースポーツ」は、ショパールの共同社長兼アーティスティック・ディレクターのキャロライン・ショイフレが「日常にダイヤモンドを」という発想からデザインしたウォッチ。
ゴールドではなく、ステンレススティールという日常的なマテリアルを用いることで、より軽やかでカジュアルにも合わせやすいタイムピースへと仕上げられています。
2018年に「ハッピースポーツ」誕生25周年を記念して登場した「ハッピースポーツ オーバル」は、初代モデルに採用されていたガレ(小石)デザインのブレスレットを継承。流麗なオーバルシェイプのケースと相まって、より洗練された女性らしさを醸し出しています。
■ブランドを愛用するセレブリティーとエピソード
ショパールとセレブリティーの関係を語る上で外せないのが、カンヌ国際映画祭です。
1998年にショパールはカンヌ国際映画祭のオフィシャルパートナーとなり、キャロライン・ショイフレは、当時の映画祭会長から、「パルム・ドール」トロフィーのデザインの刷新を依頼されました。
以来、ショパールはこの映画祭をさまざまな形で支援。パルム・ドールだけでなく、閉会式で授与されるすべてのトロフィーを制作しているのです。
また2001年には「ショパール・トロフィー賞」を創設し、2004年のマリオン・コティヤールや、2009年のレア・セドゥなど前途有望な若手俳優に贈呈しています。
さらにオフィシャルパートナー10周年となる2007年からは、「レッド カーペット コレクション」と名付けたハイジュエリーコレクションを発表。毎年、レッドカーペットを彩るにふさわしいラグジュアリーなハイジュエリーを生み出し続けています。
そしてもうひとつ、メゾンとセレブリティーを結び付けているのが、2015年からスタートした「グリーン カーペット コレクション」コレクションです。
フェアマインド認証ゴールドおよび、責任あるジュエリー協議会(RJC)の認証を受けた生産者から調達されたダイヤモンドを用いて製作された「グリーン カーペット コレクション」のハイジュエリーは、ジュリアン・ムーアをはじめ、サステナビリティへの意識が高い多くのスターたちから支持されています。
■現在のアーティスティック・ディレクターとサステナブルな取り組み
現在、兄のカール-フリードリッヒとともに共同社長を務めているキャロラインは、レディースコレクションのアーティスティック・ディレクターも兼任しています。
彼女はかねてから、「真のラグジュアリーとは、原料の供給元を知ることによってこそ叶うもの」と考え、2013年にはファッションにおけるサステナビリティを目指して設立された「Eco-Age(エコエイジ)」とのパートナーシップのもと、長期的なプログラム「The Journey to Sustainable Luxury(サステナブル・ラグジュアリーへの旅)」を始動。
2014年より「パルム・ドール」トロフィーにフェアマインド認定ゴールドを使用したり、「グリーン カーペット コレクション」などの取り組みを経て、ショパールは2018年7月よりメゾンのすべてのジュエリーとウォッチに、トレーサビリティが明確なエシカルゴールドを100%使用することを発表しました。
ショパール家からショイフレ家に引き継がれ、今もなお現存するウォッチ&ジュエリーメーカーでは数少ない家族経営のスタイルが守られているショパール。
メゾンの重要なアイデンティティである「家族」「愛」そして「倫理観」は、これからもクリエーションやビジネスに反映されていくでしょう。
Chopard(ショパール)の問い合わせ先
Chopard(ショパール)の公式サイト
Chopard(ショパール)のSNS
- EDIT&WRITING :
- 谷 花生