いま、日本の自動車メーカーで最も勢いのあるマツダ。快進撃のきっかけとなったのが、独自の新世代技術群「スカイアクティブ」を取り入れたSUV、CX-5だ。今年春には2代目へと進化し、スポーツカーのようなキレのあるスタイリングと欧州の名だたるブランドにもひけをとらない上質な走行性能に磨きをかけた。
多彩な用途に応えるSUVというキャラクターではあるが、真価を発揮するのはなんといってもロングドライブ。欧州なら国境越えのグランドツーリングなど当たり前。今回は、愛知県名古屋市を出発し、愛知、岐阜、富山、石川の各県を走破した。太平洋側から日本海側への旅は、お国柄もそれぞれ違う、いわば異国への旅。欧州車のテイストに限りなく近いCX−5で走ると、日本の風景もエキゾチックに一変するのである。
静かで疲労の少ない高速クルージング
試乗に選んだのは、ディーゼルエンジン車の「XD Lパッケージ」。マシーングレーメタリックと呼ばれるボディカラーが、ロングノーズのスタイリングをいっそう引き締まった印象に見せている。近年、ディーゼルエンジン搭載車は国産・輸入車問わず増えていて、マツダのそれは決して抜きんでたパフォーマンスを発揮するものではないが、それでも低速からみなぎるようなトルクで加速し、かつ車内への音の侵入を念入りに抑制した設計もあって、市街地走行から高速巡航まで実に快適だ。また、試乗車には自動ブレーキやレーン・キープ・アシストなどの運転支援システムが標準装備されていたおかげで、5時間を超えるドライブにもかかわらず、意外なほど疲れを感じなかった。
ドライバー本位の設計を実感!
CX-5が疲れにくいのは、ドライバーに寄り沿った設計にも起因している。正しい運転姿勢でシートに座ったとき、手足を自然と伸ばした先に、ステアリングやペダルがある。当たり前と思うかもしれないが、エンジン配置などの関係で微妙に操作系の位置がずれているクルマは少なくない。しかも、CX-5はアクセルペダルもよくある吊り下げ式ではなく、欧州車によく見られるオルガン式だ。かかとを支点にして踏み込むアクセル操作では、足の踏み込みと同じ動きをするオルガン式のほうが繊細にコントロールしやすいうえ、万が一の踏み間違いも少ない。
よくできたクルマは取り回しが楽である
近年、マツダが積極的に採用している、「エンジンでシャシー性能を高める」と謳う技術、『G-ベクタリングコントロール』は、正直体感できるほどではなかったが、本来こうした技術は乗員に自覚させないほど自然に作用するのが正しいわけで、少なくとも重心の高いSUVでありながら、カーブで不安を感じることが少なく、かつスムーズに曲がっていけたのは、間違いなくこの技術の恩恵といえる。一方で、取り回しのしやすさはいくつかの場所ではっきりと実感できた。CX-5のボディは全幅が1840㎜と、国産車ではワイドな部類に入るが、高い着座姿勢とクリアな視界のおかげもあり、狭い道で神経質になることが少ない。今回、岐阜県郡上市の郡上八幡城に立ち寄った際に、城の入り口に至るタイトな山道をすいすいと上り下りできたのは、ちょっとした感動体験だった。旅先では必ずしも十分な道幅が確保されているとは限らないし、道を間違うことも多い。その点、CX-5は、ドライバーに余計な負担をかけないという意味で、実に優秀なツアラーである。
〈マツダ・CX-5 XD Lパッケージ 〉
全長×全幅×全高:4545×1840×1690㎜
車両重量:1600~1630kg
排気量:2188cc
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
最高出力:175PS/4500rpm
最高出力:175PS/4500rpm
最大トルク:420Nm/2000rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:6AT
価格:352万6200円(4WD・税込)
■お問い合わせ
マツダコールセンター
TEL:0120-386-919
http://www.mazda.co.jp/
- TEXT :
- 櫻井 香 記者