いま、日本の自動車メーカーで最も勢いのあるマツダ。快進撃のきっかけとなったのが、独自の新世代技術群「スカイアクティブ」を取り入れたSUV、CX-5だ。今年春には2代目へと進化し、スポーツカーのようなキレのあるスタイリングと欧州の名だたるブランドにもひけをとらない上質な走行性能に磨きをかけた。

多彩な用途に応えるSUVというキャラクターではあるが、真価を発揮するのはなんといってもロングドライブ。欧州なら国境越えのグランドツーリングなど当たり前。今回は、愛知県名古屋市を出発し、愛知、岐阜、富山、石川の各県を走破した。太平洋側から日本海側への旅は、お国柄もそれぞれ違う、いわば異国への旅。欧州車のテイストに限りなく近いCX−5で走ると、日本の風景もエキゾチックに一変するのである。

静かで疲労の少ない高速クルージング​

長良川とその支流の吉田川が流れる郡上市街(八幡町)に立ち寄る。川で遊ぶ子供たちの光景は、「日本の音風景100選」にも選出されている。
長良川とその支流の吉田川が流れる郡上市街(八幡町)に立ち寄る。川で遊ぶ子供たちの光景は、「日本の音風景100選」にも選出されている。

試乗に選んだのは、ディーゼルエンジン車の「XD Lパッケージ」。マシーングレーメタリックと呼ばれるボディカラーが、ロングノーズのスタイリングをいっそう引き締まった印象に見せている。近年、ディーゼルエンジン搭載車は国産・輸入車問わず増えていて、マツダのそれは決して抜きんでたパフォーマンスを発揮するものではないが、それでも低速からみなぎるようなトルクで加速し、かつ車内への音の侵入を念入りに抑制した設計もあって、市街地走行から高速巡航まで実に快適だ。また、試乗車には自動ブレーキやレーン・キープ・アシストなどの運転支援システムが標準装備されていたおかげで、5時間を超えるドライブにもかかわらず、意外なほど疲れを感じなかった。

天守閣が木造で再建された(1933年)城としては日本最古の郡上八幡城。城の入り口近くまでクルマでも行ける。道幅はかなり細くカーブもきついが、取り回しに優れるCX-5で難なく走れた(トップページの写真を参照)。
天守閣が木造で再建された(1933年)城としては日本最古の郡上八幡城。城の入り口近くまでクルマでも行ける。道幅はかなり細くカーブもきついが、取り回しに優れるCX-5で難なく走れた(トップページの写真を参照)。
郡上八幡城の天守最上階から郡上市内をのぞむ。ふもとまでは東海北陸自動車道の郡上八幡ICから10分ほどで行ける。
郡上八幡城の天守最上階から郡上市内をのぞむ。ふもとまでは東海北陸自動車道の郡上八幡ICから10分ほどで行ける。

ドライバー本位の設計を実感!

先代モデルのデザインを継承しつつ、よりシャープでスポーツカー的な印象を強めた。マツダは景色に映える塗装にもこだわっている。
先代モデルのデザインを継承しつつ、よりシャープでスポーツカー的な印象を強めた。マツダは景色に映える塗装にもこだわっている。

CX-5が疲れにくいのは、ドライバーに寄り沿った設計にも起因している。正しい運転姿勢でシートに座ったとき、手足を自然と伸ばした先に、ステアリングやペダルがある。当たり前と思うかもしれないが、エンジン配置などの関係で微妙に操作系の位置がずれているクルマは少なくない。しかも、CX-5はアクセルペダルもよくある吊り下げ式ではなく、欧州車によく見られるオルガン式だ。かかとを支点にして踏み込むアクセル操作では、足の踏み込みと同じ動きをするオルガン式のほうが繊細にコントロールしやすいうえ、万が一の踏み間違いも少ない。

よくできたクルマは取り回しが楽である

五箇山(富山県)と共に世界文化遺産に登録されている、白川郷(岐阜県)の合掌作り集落にて。「日本むかし話」に出てくるような古里の風景は、外国人観光客にも人気だ。グレーカラーのCX-5は、すんなりと景色の中に溶け込んでいた。東海北陸自動車道・白川郷ICからすぐ。
五箇山(富山県)と共に世界文化遺産に登録されている、白川郷(岐阜県)の合掌作り集落にて。「日本むかし話」に出てくるような古里の風景は、外国人観光客にも人気だ。グレーカラーのCX-5は、すんなりと景色の中に溶け込んでいた。東海北陸自動車道・白川郷ICからすぐ。

近年、マツダが積極的に採用している、「エンジンでシャシー性能を高める」と謳う技術、『G-ベクタリングコントロール』は、正直体感できるほどではなかったが、本来こうした技術は乗員に自覚させないほど自然に作用するのが正しいわけで、少なくとも重心の高いSUVでありながら、カーブで不安を感じることが少なく、かつスムーズに曲がっていけたのは、間違いなくこの技術の恩恵といえる。一方で、取り回しのしやすさはいくつかの場所ではっきりと実感できた。CX-5のボディは全幅が1840㎜と、国産車ではワイドな部類に入るが、高い着座姿勢とクリアな視界のおかげもあり、狭い道で神経質になることが少ない。今回、岐阜県郡上市の郡上八幡城に立ち寄った際に、城の入り口に至るタイトな山道をすいすいと上り下りできたのは、ちょっとした感動体験だった。旅先では必ずしも十分な道幅が確保されているとは限らないし、道を間違うことも多い。その点、CX-5は、ドライバーに余計な負担をかけないという意味で、実に優秀なツアラーである。

正位置にこだわりぬいたコクピットは、細部のディテールも上質。
正位置にこだわりぬいたコクピットは、細部のディテールも上質。
トップグレードの「XD Lパッケージ」には、程良い張り感のあるレザーシートが付く。
トップグレードの「XD Lパッケージ」には、程良い張り感のあるレザーシートが付く。
主力エンジンの2.2リッター・直4ディーゼルターボ。ボンネットを開けるとそれなりの音がするものの、制振・静音にこだわった車内では、そうといわれなければ気付かないほど快適。
主力エンジンの2.2リッター・直4ディーゼルターボ。ボンネットを開けるとそれなりの音がするものの、制振・静音にこだわった車内では、そうといわれなければ気付かないほど快適。

〈マツダ・CX-5 XD Lパッケージ 〉

全長×全幅×全高:4545×1840×1690㎜
車両重量:1600~1630kg
排気量:2188cc
エンジン:直列4気筒DOHCターボ 
最高出力:175PS/4500rpm 
最高出力:175PS/4500rpm 
最大トルク:420Nm/2000rpm 
駆動方式:4WD 
トランスミッション:6AT 
価格:352万6200円(4WD・税込) 
■お問い合わせ 
マツダコールセンター 
TEL:0120-386-919 
http://www.mazda.co.jp/

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。