創業1906年の「ヴァン クリーフ&アーペル」は、7月、著名な顧客が所有していたアイコニックなジュエリーにオマージュを捧げる傑作3点「メルヴェィユ デメロード ネックレス」、「ルビー アン セーヌ ブレスレット」、「タンドレス エタンスロント イヤリング」を披露しました。
王女や女優が身につけた「伝説的な逸品」からインスピレーションを得た新コレクション3点
■1:並外れたエメラルドに圧倒される「メルヴェィユ デメロード ネックレス」
「メルヴェィユ デメロード ネックレス」は、メゾンの伝説となっているエジプトの王女ファイーザが所有したコラレット ネックレスにオマージュを捧げるピースです。
10石の見事なドロップシェイプのエメラルドが飾るコラレット ネックレスは、1947年に、エジプト王室が代理人を通して王女のためにフランスで入手したもの。王女が数回にわたって着用したのち半世紀を経て、2014年に「ヴァン クリーフ&アーペル」コレクションに加わったそうです。エキゾチックな物語をもつ逸品です。
合計70.40ctもの大粒のコロンビア産エメラルド5石が目を引きます。ペアシェイプには多面的なカットが施され、鮮やかなグリーンの色彩を放っています。
5石のうち、ふたつのエメラルドはかつてペンダントに使われていたひとつのもので、このネックレス製作のために2石のペアシェイプのエメラルドに分割されたそうです。ふたつに分割してもこの大きさですから、元は大変な大きさだったというのは想像に難くありません。
ペアシェイプ エメラルドを最大限に際立たせるため、ラウンドカット、バゲットカット、トライアングルシェイプのダイヤモンドが組み合わされています。
このピースはまた、装いの機会にあわせて、さまざまなつけ方を楽しめるそうです。エメラルドはネックレスから取り外し、クラスプを飾るペアシェイプ ダイヤモンド1石(5.81ct)、ペアシェイプダイヤモンド2石(各3.59ct)と付け替えることができます。
さらに、エメラルドとダイヤモンドともに、セットになっているイヤリングにも付けることができ、ペンダントが揺れるショートタイプとロングタイプのデザインを楽しむことができます。至高の美を湛えるだけではなくて機能性も兼ね備えているのです。
■2:ディートリッヒにオマージュを捧げる「ルビー アン セーヌ ブレスレット」
女優マレーネ・ディートリッヒのお気に入りのジュエリー「ジャルティエ ブレスレット」にオマージュを捧げたのが、「ルビー アン セーヌ ブレスレット」です。
「ジャルティエ ブレスレット」は1937年にマレーネ・ディートリッヒが「ヴァン クリーフ&アーペル」から購入したもの。ルビーとダイヤモンドがセットされた複数の大きなループで構成されています。
ディートリッヒは撮影の際、好んでこのブレスレットを着用しており、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『舞台恐怖症』(1950年)でもこのジュエリーをつけていました。
※写真入る:「ルビー アン セーヌ ブレスレット」
■3:高貴なダイヤモンドに魅せられる「タンドレス エタンスロント イヤリング」
「タンドレス エタンスロント イヤリング」は、1968年にウェディングギフトとしてアリストテレス・オナシスがジャクリーン・ケネディ・オナシスに贈った「ヴァン クリーフ&アーペル」のイヤリングに着想を得ています。
このイヤリングは、大粒のカボションカットのルビーで彩られた、ダイヤモンドが花芯のように輝くフローラルモチーフ。この愛らしくラグジュアリーなイヤリングから着想し、「ヴァン クリーフ&アーペル」が今回、新しく披露したのは、10ct以上のダイヤモンドがきらめくイヤーカフタイプ。
「ヴァン クリーフ&アーペル」は、個性ある貴石、自然を慈しむ思いを、この「タンドレス エタンスロント イヤリング」に込めたそうです。つまり自然への賛歌なのです。
可憐にしてプレシャスなフラワーモチーフを引き立てているのが、取り外し可能なペアシェイプ ダイヤモンド2石(計20.21ct)。なんと、このふたつのダイヤモンドは、同じ原石からカットされたそうです。
見事な大きさと、10倍で見ても内包物や傷、欠けのないフローレスという最上級のクラリティ(透明度)をもつことからその希少性の高さが誰の目にも明らかです。
プレシャスストーンを集め、見るものを圧倒した「ヴァン クリーフ&アーペル」の新コレクションは、まさにヴァンドーム広場のハイジュエラーの原点といえるもの。歴史あるメゾンの真骨頂を見せてくれました。
今回、メゾンはこのアイコニックなクリエーションを大粒のビルマ産ルビー72石(計84.74ct)で彩り、再解釈しました。ヴァン クリーフ&アーペルの歴史においても、これだけの数の上質なルビーを集めることは、そう容易ではありませんでした。
メゾンが誇る熟練の宝石鑑定士によって慎重に組み合わされたルビーが、改めてクッションシェイプにカットされています。
ビルマ産のルビーの典型である鮮やかで深みのある印象的なカラーが、明るいレッドからパープルまでの色のハーモニーが輝きと溶け合うように目に移ります。ふたつの異なるサイズの楕円形のルビーが大胆に散りばめられることで互いを引き立てあい、まるで贅沢なベルベットのように手首を美しく彩ります。
それを支えるのは、オープンワークが施されたホワイトゴールド。快適な着け心地とバランスに配慮して入念にデザインされた作品には、ラウンドカット、スクエアシェイプ、バゲットカットのダイヤモンドがセットされています。
オリジナルの作品を際立たせるそのデザインへの憧憬が、新作のブレスレットの緻密な構造と豊かな貴石のセレクションに映し出され、色と輝きが奏上する見事な調和を生み出します。
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- TEXT :
- 安田薫子さん ライター&エディター