ロールス・ロイスがつくるクルマは、どれもラグジュアリーな大人の乗り物というイメージが強い。だが、スピードが好きで、レースに熱中してきた英国の伝統を継承する老舗には、スポーティな面が確かにある。コンバーチブル(ドロップヘッドクーペ)の「ドーン」をベースにした特別なモデル「ドーン・シルバーブリット」には、そんな若々しくてエレガントな表情が見て取れる。

「全長5m強の2座フルオープン」という贅沢仕様

古典的なロードスターの現代的解釈といわれるシルバーブリット。
古典的なロードスターの現代的解釈といわれるシルバーブリット。
優雅なスタイルが身上。
優雅なスタイルが身上。

英国のロールス・ロイスが、「ドーン・シルバーブリット」なる新型車を発表した。2座のフルオープンで、運転席背後にエアロカウルを備えているのが特徴だ。

伝統を大事にする英国のブランドだけあって、シルバーというサブネームには、戦前からのロールス・ロイスのスポーツモデルのヘリティッジがこめられているという。

シルバーブリット、銀の弾というサブネームのとおり、エレガントであるいっぽう、スポーティな雰囲気も強く感じさせる。「速度と正確性」をこの名に込めたといい、すぐれたグランドツアラーであることを、ロールス・ロイスでは喧伝しているのだ。

レザー張りのエアロカウリングは、50年代のグランプリカーとのつながりを感じさせるもので(当時ロールス・ロイスはグランプリレースには出走していないものの)、その名のとおり、ドライバーの頭部を保護しつつ、空力効果を生み出すはたらきを持つ。

エアロカウリングは、2018年に英国でドーンのオプション装着車として発表され、翌19年に日本市場にも導入された経緯がある。脱着可能で、はずせば後席が使えて4座になる仕様だ。

50台のみの生産

北イタリアのガルダ湖畔を走る。
北イタリアのガルダ湖畔を走る。
エアロカウリングは大きく見えないように左右独立型。
エアロカウリングは大きく見えないように左右独立型。

今回のシルバーブリットは、基本的にはエアロカウリングのアイディアを引き継ぎつつ、1920年代のファントムやシルバーゴーストなど、戦前のロールス・ロイスがスポーティなモデルはアルミニウムの地肌を活かした仕立てにしていたことを彷彿させるモデルである。

ロールス・ロイスでは、同時に、「シルバー」(RRの用語でいえばBrewster  Silverという車体色)をスポーティさやビスポーク(フルオーダー)を表現するキーワードとしている。近年も、「シルバースペクター」や「シルバーキング」といったビスポークモデルが個人オーナーむけに作られている。

50台のみ生産されるというシルバーブリットのメカニズムは明らかにされていない。おそらく、ドーンに搭載されている6.6リッターV12気筒ツインターボエンジンが用意されるのではないだろうか。

現在、ロールス・ロイスではスポーツモデルのラインナップ「ブラックバッジ」シリーズが、比較的若いオーナー層に人気を集めているそうだ。

シルバーブリットは、ブラックバッジのような、いわゆるバッドな印象でなく、それよりエレガントよりの、おとなっぽいスポーティさを強く感じさせるモデルである。

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。