クルマは人生を豊かにする大切なパートナーである。従ってモデル選びにあたっては、デザインやパフォーマンスのみならず、内外装の色や素材にも注力すべきなのはいうまでもない。そして、ドライバーたる自分の着こなしにもこだわりたい。贅を尽くしたラグジュアリーブランドにTシャツ・短パンで乗っているようでは、そのクルマの本質を見極めることなどできない。英国の雄、ベントレーのハンドルを握って、改めてそう感じた次第である。

身だしなみを整えてからのドライブは気分が昂ぶる!

アルフレッド ダンヒル 銀座本店2階にある、ザ バーバーにてフェイスグルーミングを体験。ドライブ前のリフレッシュには最高だ。
アルフレッド ダンヒル 銀座本店2階にある、ザ バーバーにてフェイスグルーミングを体験。ドライブ前のリフレッシュには最高だ。

 ベントレーは、時代に則した製造工程を取り入れながらも、いまだに手しごとを重視している。特に内外装は、顧客が多様な選択肢から吟味したパターン・オーダーであるうえ、求めに応じて1点ものの付属品まで作り上げるビスポークにも対応している。当然、納車までに時間はかかるが、オーダーとはそういうものだ。欧州の富裕層は、ただベントレーが欲しいのではなく、自分の生き方に則した理想の1台を思い描きながら、職人の腕を信頼して対価を払っているのである。

 そして彼らは然るべき服装で赴き、然るべき場所へ走らせる。そこをどうするかはオーナー次第だが、ひとつ提案するなら、同じ英国のブランドに頼るのが良いのではないかと思う。たとえばダンヒル。銀座の中央通りに構えるアルフレッド ダンヒル 銀座本店は、創業期からクルマを愛する紳士のために数々の服や小物を提案してきた歴史が凝縮された、ダンディズムの拠り所である。ヴィンテージの革小物がさりげなく展示された店内にはバー&ラウンジのジ・アクアリウムがあり、かつて大陸横断の夢を巡らせた先人を想いながら、週末ドライブのアイデアを思案するには最高の場所だ。そして、ここを訪れたらぜひ利用したいのが、グルーミングサロンのザ バーバー。カットや洗髪だけでなく、フェイスケアやハンドケアもメニューに揃えるここで、身だしなみを整えてからベントレーの座席に身を預ければ、その後のドライブも気分が昂ぶるというものだ。

サルーンとSUVを乗り換えてのTOKYOドライブ

フライングスパー W12Sのボディカラーはダムソン=暗紫色。派手に見えるが、光の加減で雰囲気が変わり、渋い一面も見せる。
フライングスパー W12Sのボディカラーはダムソン=暗紫色。派手に見えるが、光の加減で雰囲気が変わり、渋い一面も見せる。
内装もダムソンカラーを組み合わせた2トーンでコーディネート。レザーの素材の良さが引き立つ。
内装もダムソンカラーを組み合わせた2トーンでコーディネート。レザーの素材の良さが引き立つ。
W12Sはフライングスパーシリーズのフラッグシップとして、2017年春から日本に導入された。試乗車両のウッドパネルはピアノブラック仕様で、素晴らしい艶を放つ。
W12Sはフライングスパーシリーズのフラッグシップとして、2017年春から日本に導入された。試乗車両のウッドパネルはピアノブラック仕様で、素晴らしい艶を放つ。

 ドライブにあたっては、ベントレージャパンからタイプの異なる2台を提供してもらった。まずは、流麗なスタイリングを誇るサルーンのフライングスパーに乗る。それも、6リッターW12ツインターボエンジンを積んだ、最上級モデルだ。大胆にして、大人の着こなしにもしっくりと合うパープル系のインテリアに心を奪われながらアクセルを踏むが、交通量の多い都会でその真価を堪能することはできない。目指すは郊外、それにつきる。

 フライングスパーの引き締まった乗り心地と淀みなく湧き出る大パワーは、高速走行でこそ活きる。交通集中で起きる若干の渋滞さえも苦にならないラグジュアリーな空間を堪能しているうちに、わずか1時間ほどで東京の西の外れ、高尾に着いた。山の中にひっそりとたたずむ、隠れ家的な料亭、うかい鳥山で晩夏の食材をいただいたのち、今度はSUVのベンテイガに乗って再び都心を目指す。

 荘厳な美をたたえる巨体は驚くほど静かに走り出し、高いアイポイントも相まって気分は上々だ。遅い時間ゆえ、高速道路の交通量も減りつつあるなか、ちょっと深めにアクセルを踏んでみたが、腰高なSUVにありがちな不安定な挙動は微塵もなく、それでいて足回りはしっとりとストロークして路面の段差を上手にいなしていく。これなら、もっと早い時間から遠方まで往復しても疲労を感じることはないだろう。身も心もリフレッシュして、最良の素材で仕立てられたベントレーで出かける時間は、濃密で心地良い。

ドライブの目的地、うかい鳥山にて。往路で左奥のフライングスパー W12S、復路で中央のベンテイガのハンドルを握った。右手前のオレンジカラーの車両は、クーペのコンチネンタルGTスピード。
ドライブの目的地、うかい鳥山にて。往路で左奥のフライングスパー W12S、復路で中央のベンテイガのハンドルを握った。右手前のオレンジカラーの車両は、クーペのコンチネンタルGTスピード。

〈ベントレー・フライングスパー W12S〉
全長×全幅×全高:5315×1985×1490㎜
車両重量:2540kg
排気量:5998cc
エンジン:W12気筒DOHCツインターボ
最高出力:635PS/6000rpm
最大トルク:820Nm/2000rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:8AT
価格:2665万円(税込)

〈ベントレー・ベンテイガ〉
全長×全幅×全高:5150×1995×1755㎜
車両重量:2530kg
排気量:5945cc
エンジン:W12気筒DOHCツインターボ
最高出力:608PS/6000rpm
最大トルク:900Nm/1350〜4500rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:8AT
価格:2739万円(税込)
■お問い合わせ
ベントレー・コール
TEL:0120-97-7797
https://www.bentleymotors.jp/

■アルフレッド ダンヒル 銀座本店
住所:東京都中央区銀座2-6-7
TEL:03-3562-1893
https://www.dunhill.com/jp
営業時間/月〜土曜11:00〜20:00、日曜11:00〜19:00

■うかい鳥山
住所:東京都八王子市南浅川町3426
TEL:042-661-0739
http://www.ukai.co.jp/toriyama/
営業時間:平日11:30〜22:00(L.O 20:00)、
土曜11:00〜22:00(L.O20:00)、日曜・祝日)11:00〜21:00(L.O19:00)
定休日/火曜(時期によって変動あり)

この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。