遠出がしにくい昨今ですが、近郊へのショートトリップは人気が高まっています。
東京都心から1時間程で着く、白洲次郎・正子夫妻が暮らした「旧白洲邸 武相荘」へのショートトリップはいかがでしょうか? 新宿駅から小田急江ノ島線に乗り30分ほどの鶴川駅から徒歩15分。東京とは思えない、緑に囲まれた趣のある空間です。
白洲次郎正子夫妻が愛した「旧白洲邸 武相荘」へ小旅行!
■1:今なおファンの多い白洲次郎・正子夫妻の終の棲家となった「武相荘」とは
第2次世界大戦直後、吉田茂元首相の右腕としてGHQと対等に渡り合った白洲次郎氏(1902‐1985)。在野に身を置きつつも、政界に通じ、日本国憲法の制定にも深く関わった人物です。その行動や思考のスマートさから今なおファンが多く、憧れられている存在です。
そして、その妻であった正子氏(1910‐1998)は、骨とう品を愛し、各地へ紀行した随筆家でした。たくさんの著作があり、没後も多くの愛読者がいる作家です。
ふたりが第2次世界大戦開戦前夜に都心から移り住んだのが、当時の南多摩郡鶴川村の農家だった家。戦争の被害が大きいであろう都心から離れることはもちろん、食料を確保するために畑のある家を求めたのでした。
「武相荘(ぶあいそう)」という名前は、鶴川村が武州(現東京都多摩地区)と相州(現神奈川県)の間にあることと、「不愛想」をかけて、次郎氏が命名したもの。以降、亡くなるまでこの家に住み続けました。
2001年、ふたりの娘である牧山桂子さんが、白洲夫妻をしのぶミュージアム「旧白洲邸 武相荘」としてオープンし、多くの白洲夫妻ファンが訪れるスポットとなっています。
■2:季節ごとに変化する展示から、「おもてなしのヒント」を得る
150年前に建てられた茅葺屋根の母屋には、夫妻が愛用していた品々が季節に合わせて展示されています。9月1日(火)から11月29日(水)の期間は「武相荘の秋」展を開催。秋らしくほんのりぬくもりを感じる陶器や着物が登場しています。
玄関を入ってすぐのリビングは、白洲夫妻がタイル張りに改装したお部屋。もともとは養蚕農家の土間であった場所だそう。大胆なリフォームに、おふたりのセンスが伺えます。
南側の居室には、普段使いの骨董を愛した正子氏が買い集めたという食器や着物・調度品が展示されています。日々の生活やおもてなしの参考にもなりそうですよ。
また、次郎氏が1950年に吉田茂元総理の特使として働いた際の資料も展示されています。
次郎氏は、イギリス留学時代に培った英語を武器に、終戦直後のアメリカに渡り、平和条約の準備を行いました。「日本人は押しに弱い」という評判があったGHQとも対等に渡り合い、報告書に「従順ならざる唯一の日本人」と書かれたほどの英語力と知識だったそう。
さらには、大量の本に囲まれた正子氏の書斎もそのままに残されています。能をはじめとする伝統文化への傾倒、名だたる評論家や陶芸作家との交流の痕跡が伺えます。多くある正子氏の著書を読んでから行くと、感慨もひとしおですよ。
■3:次郎氏が愛したカレーライスが楽しめるレストラン
母屋の隣の建物にはレストランが併設されています。ランチ、カフェ、ディナーを楽しむことができます。
ランチタイムの一押しメニューは、正子氏の兄がシンガポールの友人から教わったという「海老カレー」。白洲家ではカレーと言えば、エビが入ったこのカレーだったそう。スパイスの効いたカレーは他に「チキンカレー」(¥1,200/税別)もあります。
また、次郎氏がお気に入りだったという「親子どん」も提供されています。こちらの器は次郎氏のこだわりを、正子氏が作家さんにオーダーしたどんぶりを再現したもの。隅々まで、夫妻のエピソードを楽しんでくださいね。
カフェ利用としては、「どらやき」や「本日のタルト」、コーヒーやビールなどを楽しめます。
ディナーは予約制で季節の食材を用いたコース料理が用意されています(¥4,800~/税別)。また、隠れ家のようなバーもあり、大人の時間を過ごすことができますよ。
※レストランの価格は9月下旬に変更予定です。
■4:夫妻が愛した庭の散歩もおすすめ
食事後は庭のお散歩がおすすめです。庭と言うよりは、雑木林の中の散策といった風情の、野趣あふれる小道が続いています。
季節折々の草花や、石仏などをゆっくり眺め、東京とは思えない風情を楽しんでくださいね。
都心からほど近いにもかかわらず、緑に囲まれ、全体が隠れ家のような雰囲気をまとっている旧白洲邸「武相荘」。週末のショートトリップにもぴったりです。ぜひ履き慣れた靴で、訪問してみてくださいね。
問い合わせ先
- 旧白洲邸 武相荘
- 入館料/¥1,100(税込)※小学生以下の入館はできません。(乳児は除く)
開館時間/10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日/月曜日(祝日・振替休日は開館 夏季・冬季休館あり)
TEL:042-735-5732(ミュージアム)/042-708-8633(レストラン)
住所/東京都町田市能ヶ谷7‐3‐2
- TEXT :
- 田中いつきさん フリーランスライター
- EDIT :
- 小林麻美