今月のアスリート王子:楢﨑智亜選手(24歳)…スポーツクライミング選手
アクロバティックな動きはまるで「ニンジャ」!安定の実力で高みを目指す楢﨑智亜選手
ここ数年で注目度がぐーんとアップしているスポーツクライミング。赤、青、黄、などのカラフルな突起物(ホールド)がついた壁を自分の手足だけで登っていく、見た目にも楽しく、面白さ満点のスポーツです。
この競技で世界一の実力を誇るのが、楢﨑智亜選手。栃木県宇都宮市生まれの24歳です。
オリンピックでは15mの壁を登るタイムを競う「スピード」、5mの複雑なルートの壁をいくつ登れるかを競う「ボルダリング」、定められた時間内に12mの壁を登った高さを競う「リード」の3種目を行い、総合成績で競いますが、同じ方式で行われた昨年の世界選手権で見事に金メダルを獲得しました。
楢崎選手のすごさは、求められる能力が異なる3種目すべてに安定した力を見せていること。その中でも最も得意なのが「ボルダリング」です。垂直どころかマイナスの角度で反っている壁を、小さな突起に指をひっかけながら、ひょいひょいと巧みに登っていきます。
ときには足で壁や突起物を蹴りながら、高いところをめがけて大ジャンプ。身軽でバネのある楢崎選手の動きは、海外勢から「ニンジャ」と呼ばれ、称賛されています。
筋肉が隆起した背中や上腕二頭筋に目がいくのはもちろん、いかにも瞬発力のありそうなふくらはぎの筋肉など、マッスル大好き女子にとっては見てうれしい、魅力的な筋肉を身にまとっているのです。
アクロバティックな動きが得意なのも楢崎選手の特長です。理由は子供のころに器械体操の教室に通っていたから。楢崎選手は、「体操をやっていたことが空間でのダイナミックな体の動かし方に役立っているのは間違いないですね」と語っています。
スポーツクライミングでは試合ごとに専門のルートセッターが突起物を設定するため、あらかじめ用意されている正解ルートがありません。選手は試合開始の数時間前に設けられた下見の時間を使って、どのようにして壁を登りきるかを考えます。ルート選びは理詰めで繊細。洞察力も必要な競技がスポーツクライミングなのです。
さらに、楢崎選手にはスポーツクライミングに向いている身体的な特長も備わっています。人一倍分厚く、強度の高い爪のもち主なのです。この強さが、指先を酷使する競技に生きているのだそう。
高校生のころはお父様の職業でもある医師を目指していたという楢崎選手。しかし、スポーツクライミングの世界で勝負したいという思いから大学には進学せず、プロクライマーの道を選びました。競技力はもちろん、意志の強さもピカイチの世界チャンピオンから目が離せません。
Athlete data
- TEXT :
- Precious編集部
- PHOTO :
- 矢内 由美子(スポーツライター)
- EDIT :
- 宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)