2020年、私たちは、世界レベルのパンデミックに見舞われ、外出を控えて静かに立ち止まると、見えてきた世界には、これまでとは異なる価値観が生まれつつありました。
そんな中、雑誌『Precious』編集部は、新しい時代が求めるファッションの「名品」とは何か?について、最新1月号の「ニューノーマル時代の『新名品』」特集を通して深く考え抜きました。その特集の中で、生き方やおしゃれに共感を集める素敵な女性たちに、今の暮らしの中で「名品がどうあるべきか」をインタビューしました。
この記事では、その特集の中から、フリーキャスター、エッセイストの雨宮塔子さんからうかがった、暮らしやよそおいの変化についてご紹介します。
「今、心惹かれるのは「優しさ」とどこかに「ひと華」が感じられるもの」
「日本でのレギュラー番組の仕事を終え、フランスに拠点を戻したのが'19年9月のこと。新居のリフォームを進めるうち、パリでは新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大。厳しい外出制限が敷かれて工事は滞り、この秋になってようやく引っ越しがかないました。
加えて、パリでは'14年から可能な限り車を排除する政策により、車両規制が厳しくなったため、ついに愛車を手放すことに。現在はメトロなどの利用を避けて徒歩での移動を心がけています。
引っ越しにあたっては思いきった断捨離をして、今の日常に合わない服や靴をかなり手放しました。残ったものを見てみると、やはり『名品』といえるものが多いのは事実。
今の気分で直感的に選んだはずなのに、自然とワードローブのピラミッドの上部が残ったわけです。ただ『頑固なまでに趣味がブレないこと』を自他共に認めていた私ですが、選ぶ基準が少しずつ変化しているのも感じています。
まず徒歩による移動のための変化。歩いたときにきれいに見えることが新たな基準になりました。以前はハイヒールを履くことが多かったのですが、夏はサンダル、秋以降はスニーカーにフラット靴や厚底ショートブーツへ。ヒールパンプスの出番はほぼなくなりました。
そして今、以前にも増して心惹かれるのが、空気をはらむようなビッグシルエットや、抜け感のあるもの。かわいいものよりかっこいいものが好きなのは変わりませんが、レースのブラウスのような、どこか繊細で女らしさを感じさせるものも気分です」
ウィズコロナが長期化して、皆がストレスのはけ口を求め、パリでは険しい表情や口調が目立つせいでしょうか。せめてひと呼吸おくように、日々のよそおいで優しさを表現したいと思うのです。ハードなバングルも好きでしたが、今季はローゲージのふんわりとしたニットに、華奢なピアスを合わせたりしています。
白いブラウスは、かつて報道の場でコンサバティブに着ることが多かったため、実はやや食傷気味でした。ところがフリーになった今、シンプルでもモード感や遊び心のあるデザインが心おきなく楽しめるようになり、また新たな一枚が気になっています。
変わったことといえばもうひとつ、重ね着をしなくなったこと。レイヤードに悩む時間をかけるより一枚でたたずまいが完成するものを求めるようになりました。フランスでは日本でいう部屋着の概念がなく、よほどのドレスアップ以外、帰宅しても就寝まで着替えることをしません。
私も自宅では一枚で様になるシャツやニットにパンツをまとい、出かけるときは新しいクローゼットに運んだ、少数精鋭のお気に入りのジレやマントをさらりとはおるだけ。そして寒い日はテディコートをふんわり、女らしく颯爽と歩きたい。」(雨宮さん)
※掲載した商品は、すべて税抜です。
※文中の表記は、WG=ホワイトゴールドを表します。
問い合わせ先
関連記事
- PHOTO :
- 浅井佳代子
- STYLIST :
- 小倉真希
- HAIR MAKE :
- 三澤公幸(3rd)
- MODEL :
- 立野リカ(Precious専属)
- EDIT&WRITING :
- 藤田由美、小林桐子(Precious)