「出会いや連絡方法のツールは変わっても、男女のままならなさは昔も今も変わらない」―間室さん
本書はタイトルどおり、アメリカの有名な新聞『ニューヨーク・タイムズ』に’04年から投稿されている恋愛実話コラム集。どれもなんて違うんだろう、と読みながら驚いた。
例えば、母親が国務省に勤務する有能な心理分析官で、毎回自分のBFをひと目見ただけで「気に入らないわ」と言ってくる、という32歳の女性の投稿あり、居住者の恋の行方を静かに見守るドアマンの物語あり、新しいマッチングアプリを創設したCEOに女性ジャーナリストが「あなたは本気で恋をしたことがある?」と質問したことから始まる彼の過去の失恋と起死回生あり。実にバラエティに富んでいる。でも、こうも思うのだ。なんて同じなんだろう、と。
「既読スルー」を投稿した女性は、つきあいたての彼が返事を寄こさないことに不安と不満をふくれ上がらせる。「自分が送ったメールは変だったのか」に始まり、「彼は返信しない派なのかも」を経て、「これから5分携帯を見なければメッセージが来る」という意味不明なおまじないに走り、さらに「何も言ってこないのは、私の本性に気づいたから?」と考え、バレたら好きになってもらえそうにない自分の癖や習慣を数え上げる。
でもこんなこと、おそらく狼煙が通信手段だったころから何も変わっていないのだ!
本当の私を受け入れてほしい、完璧になりたい、素敵な恋さえ見つけたら人生はうまくいくのに…。
出会いや連絡方法のツールは変わっても、男女のままならなさは昔と同じ。現代の恋は永遠の愛の姿、と教えてくれる21話。
- TEXT :
- 間室道子さん 代官山 蔦屋書店コンシェルジュ
- BY :
- 『Precious2月号』小学館、2021年
- EDIT :
- 宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)