イタリアのサルトに好きな生地は?と尋ねると、ほとんどの場合ガッシリとしたヘビーウエイトの生地を挙げてくる。理由はいたってシンプル。薄くやわらかな生地は、縫うのがとても大変なのだ。やわらかい生地は繊細なぶん、縫いの粗が目立ちやすい。芯地で補強し、機械で縫製すればそれを隠すこともできるが、ハンドで軽く美しく仕立てようとすると非常に手間と神経を使う。サルトたちにとっては割の悪い仕事なのだ。
そんな職人泣かせの絶技を、いともさらりとやってのけたのがブリオーニ。
史上最も贅沢なアンコン仕立て
ブリオーニのカシミヤシルク ジャケット
極薄・極柔のカシミアシルクをダブルフェイスにし、パッドや芯地を一切用いず仕立てた究極のアンコンジャケットだ。しかも要所はすべて手縫い。ラペルの立体的なロールなど、サルトリアルな仕立ての粋を集めた一着だ。これを縫い上げるのにどれほどの手間と技が注ぎ込まれたか、想像も及ばない。空気のような軽さとは裏腹に圧倒的な存在感を放つのは、そこに職人たちの心血が通っているがゆえなのである。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2020年秋号より
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- PHOTO :
- 唐澤光也(REDPOINT)