エルメスが2020年に発表したコレクションを見ていて、思わず目に留まるルックがあった。ストライプ柄のスーツの上に、レザーでできた何かを重ね着していたのだ。

新手のアクセサリー? それともジャケットの一部? そんな予想を裏切り、のちにそれはバッグだと判明した。そう、写真の一品である。 この鞄、一般的なショルダーバッグと比べてストラップが短く、ボディと一体になっている。そのボディにはメイン室がなく、収納は側面に付けられたふたつのジップポケットのみ。

まるで着るバッグ?上質なレザーだからできた最高の質感

バッグ【縦20×横64×マチ0.5cm】¥557,000(エルメスジャポン)税抜、参考価格

エルメス十八番のしなやかなシュリンクレザーで仕立てられ、肩からななめに提げると体にぴったり沿う形になる。「着る」という表現がふさわしいバッグなのだ。 シンプルは究極の洗練であるとレオナルド・ダ・ヴィンチは説いたが、鞄という概念を覆すほどに要素を削ぎ落とすことでまったく新しい美しさを浮かび上がらせたエルメスの手腕は見事というほかない。ラグジュアリーとは新しい価値を生み出すこと。それを再認識させる逸品だ。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2020年秋号より
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唐澤光也(REDPOINT)