男たちはクーペを愛してきた。速くて、スタイリッシュ、そしてパーソナル。運転を趣味とするような男が行き着く先は、まずクーペではないだろうか。2020年10月に日本発売された「BMW M440i xDriveクーペ」は、傑作になるべき上記の条件を満たした、みごとな出来映えだと思う。

気分が昂揚する仕掛けは抜かりなし

強烈な印象を残す新しいデザインテーマのキドニーグリルが特徴的。
強烈な印象を残す新しいデザインテーマのキドニーグリルが特徴的。
全長4775ミリ、全幅は1850ミリ、全高は1395ミリで、285kWの最高出力と500Nmの最大トルクを持つ2997cc6気筒エンジン搭載。
全長4775ミリ、全幅は1850ミリ、全高は1395ミリで、285kWの最高出力と500Nmの最大トルクを持つ2997cc6気筒エンジン搭載。

なにより、大きな上下幅のキドニーグリル(楕円をふたつつなげたBMW車独特のラジエターグリル)が眼を惹く。X7や7シリーズなど、昨今のBMW車ではキドニーグリルが伸びる傾向にあった。そのトレンドを究めたようなデザインだ。

アグレッシブという言葉のほうが似合うかもしれないスポーティなイメージは、ドライブしても期待を裏切られない。285kW(387ps)の3リッター直列6気筒エンジンに全輪駆動システムは、ストレートでもコーナーでも、あらゆる場面ですばらしい性能ぶりを味わわせてくれる。

スポーツモデルを意味する「M」を車名にもつだけあって、とにかく運転を楽しめるように作られているモデルだ。剛性感がたっぷりあるシャシーと、ステアリングホイールを切ったときの反応が速い操縦性、それにキャビンを小さくまとめて2プラス2の印象を強く打ち出したスタイリングは、クーペというよりスポーツカーに近いと感じさせる。

ストレートシックスなどとも呼ばれる6気筒エンジンは、BMWのシンボルと目されるだけあって、すばらしいフィールだ。シュンシュンッと上の回転域までよく回るうえに、強力無比といっていいぐらいの力を出し、車体をぐんぐんと加速させていく。

太めのグリップをもったステアリングホイールはやや重めの設定というのもスポーツカーらしい。レーンチェンジなどでちょっと切り込んだときは、車体が即座に反応する。形容する言葉をさがすと、官能的というのがふさわしいかもしれない。ドライバ−との一体感があるので、気分が昂揚するのだ。

かっこいいだけではない独特なスタイル

ことさらリアクォーターウィンドウを小さくして、2プラス2の雰囲気を色濃く出したスタイリングが印象的。
ことさらリアクォーターウィンドウを小さくして、2プラス2の雰囲気を色濃く出したスタイリングが印象的。
好みのセッティングを記憶させてワンタッチで呼び出せるスイッチ(2人ぶん)がステアリングホイールに備わる。
好みのセッティングを記憶させてワンタッチで呼び出せるスイッチ(2人ぶん)がステアリングホイールに備わる。

もっとも感動的なのは、小さなカーブでもあっというまに駆け抜けてしまう、いわゆるハンドリングのよさ。じつはボディは全長4775ミリ、ホイールベースは2850ミリと、けっこう余裕あるサイズであるものの、大きなクルマをドライブしているような感覚はほとんど感じられない。軽快なのだ。

男だったら、自分のために手に入れたと納得できるクルマに乗りたいもの。M440i xDriveクーペはまさに、その思いを満たしてくれる。BMWには、8シリーズとかZ4とか審美性の高いクーペ(Z4はフルオープン)が存在。そこにあって、今回の4シリーズクーペは、1968年の傑作「3.0CS」に端を発する、かっこいいばかりでない独特のスタイルが魅力的だ。

インテリアは、樹脂パーツとウッドパーツとレザーパーツをうまく組み合わせて、独自の世界となっている。かつ、「オーケイ、ビーエムダブリュー」で起動し、たとえば「暑いんだけど」でエアコンの温度を下げられるなど、対話型コマンドを使えるインフォテイメントシステムなど、最新の装備をそなえる。

価格は1025万円。2リッター4気筒の420iクーペ(577万円)が同時発売された。価格差は大きいとはいえ、本当のスポーツクーペが欲しければ、M440i xDriveクーペを試すべきだと思う。

エンジンスタートボタンが赤色なのはスポーティなMパフォーマンスモデル専用。
エンジンスタートボタンが赤色なのはスポーティなMパフォーマンスモデル専用。

問い合わせ先

BMW

TEL:0120-269-437

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。