ジェントルマンが身につけるべき香水というと、どんな香りをイメージするだろうか。理髪店やバーバーの記憶とともによみがえるグリーン系の香りや、クラシックで深みのあるムスクを想像するくらいだろう。実は紳士の香りは、意外にバリエーションが少ない。

 というのも以前は、香水に使える香料の種類が少なかったのだ。香水に投影される男らしさのイメージが保守的だったこともあり、歴史や伝統があるほど、香りの表現が似ているものが多かった。そのため、ジェントルマンにふさわしい香水を選ぶとき、どれも似たり寄ったりで、香りのバリエーションという点では乏しかった。

 現在はジェントルマンを含めて、男性のイメージが多様化。ファッションでもエフォートレスやリラックスといった自然体でやわらかい表情が世界中で発信されていることからもわかるように、香水も男らしさや野性味をムスクで表現する必要はなくなってきている。

 加えて、香料のテクノロジーが飛躍的な進化を遂げたこともある。たとえば、空や水といった、もともと香りのないものを表現した香りや、ムスクでありながら、みずみずしさを湛たたえたノートなど、新しい香りが生まれたことで、より繊細な空気感を表現できるようになったのだ。

 事実、ここで紹介する香りは、前述したような時代性や男性性を反映して、いずれの香りも軽く、優しく、やわらかいという点で共通している。

今、目ざすべきは、におやかなジェントルマン

 たとえば、英国の老舗フレグランスメゾンであるペンハリガンは、ベースノートにムスクやウッディを使う代わりに、甘いバニラのようなベンゾインを採用して、繊細でまろやかな表現を描いたり、クリードはクラシックなウッディノートに白い花の香りを合わせることで、ジェンダーレスな華やかさを湛えている。ジョー マローン ロンドンは希少価値の高いお茶を、イッセイ ミヤケはダイナミックに流れていく水を、ともに、上質で繊細な香料を駆使することで、透明感を見事に表現した。アクア ディ パルマは、柑橘系のノートにハーブのアクセントを加えて、フレッシュな印象をプラス。イタリアらしく快活な男性像をつくり出している。そして、トム フォードは漆黒の夜をイメージさせながらも、スパイシーな山椒やジンジャーがさえざえとした空気感を加味。いずれも、これまでの男性用香水とは一線を画した、軽やかで気軽に身につけられる香調に仕上がっている。

 そのため、オーデコロンはもちろん、香りの強いオードパルファムでさえ、気軽に身につけられるタイプが多くそろっており、新しい香水へと衣替えするには絶好のタイミングだといえよう。
馥郁たる香りで、紳士は艶やかさを放つ

紳士が選ぶべき最新フレグランス6選

1.トム フォード ビューティ

ファッション同様に、官能的な魅力を湛えたトム フォード ビューティ。トム フォード ノワールは、男の二面性を表現したオリエンタルでセンシュアルな香りが特徴だが、こちらのアンスラサイトはその新作。シダーウッドやサンダルウッドなど、お香のようなリッチなブラックウッドの香りに、ベルガモットやスパイスなど鮮烈なアクセントがプラス。暗闇のなかの光をイメージしたような香りに昇華。トップノートのきらめきから、ラストノートの夜の深遠にいたるまでドラマティックなストーリーを奏でる。

トム フォード ビューティ『トム フォード ノワール アンスラサイト オード パルファム スプレィ』●50ml ¥14,000(トム フォード ビューティ)

2.ジョー マローン ロンドン

 ジョー マローン ロンドンの最高峰フレグランスコレクションが、こちらの「レア ティー コレクション」。日本の丘陵地帯から中国、ヒマラヤと多岐に至る産地で手摘みした新芽の茶葉から、6種類の希少茶のフレグランスを製作。なかでも、「シルバー ニードル ティー」は、かすかなフローラルを感じる、しなやかでやわらかい香りで紳士に相応しい。バラやセージ、ムスクをふわりと包み込んだような、みずみずしさが特長。

ジョー マローン ロンドン『シルバー ニードル ティー コロン』●175ml ¥43,000(ジョー マローン ロンドン お客様相談室)

3.ペンハリガン

 1870年に英・ロンドンのジャーミン ストリートにオープンした理髪店から誕生した、英国王室御用達のフレグランスメゾン。そのジャーミン ストリートの角を曲がった位置にあった女性用のターキッシュバス、「サボイ ターキッシュバス」からインスパイアされた香りがこちら。フレッシュなローズの香りを含んだスチームミストや水面で揺れる花びら、ほんのりと香り立つグリーンノートに、スチームの香りを表現。アロマティック ローズの香調ながら、男性でも活用できるセンシュアルな香り。

ペンハリガン『サボイ スチーム オードパ ルファム』●100㎖ ¥22,000(ブルーベル・ジャパン)

4.アクア ディ パルマ

 1916年にイタリアの小さな工房で誕生した老舗ブランド「アクア ディ パルマ」。ハリウッドスターがイタリアを旅行中、イタリアを感じられる香りと持ち帰ることにより、アメリカでも大ヒット。かつてはハンフリー・ボガードやケーリー・グラント、エヴァ・ガードナーなど多くのハリウッドスターに愛用された。日本にはフルラインナップで、今年、本格的な上陸を果たした。紹介しているコロニア クラブはシトラスノートにハーブのアクセントが加わった、フレッシュな香り。ミントやベルガモット、ネロリが清涼感を演出してくれる。

アクア ディ パルマ『コロニア クラブ オーデコロン』●100ml ¥18,500(インターモード川辺 フレグランス本部)

5.クリード

 250年以上の歴史を誇る、パリで歴史を刻んだフレグランスメゾン。そのなかでも、上質な香料だけを用いた最高峰シリーズとなる5作のうちのひとつがこちら。少し憂いを含んだベルガモットやカルダモン、ローレルのクールな香りから、繊細なグリーン調のクライマックスへと移りゆく、ウッディフローラルの香調。ミドルノートはリリーやジャスミンなど、白い花が顔を出す。また、ボトルにはかつて王族が愛したフォンテーヌブローで産出された砂が使用されており、それらをフランスのガラス職人が伝統技術により製品化。光を複雑に反射するエレガンスな曲線美を作り出した。

クリード『オードパルファム アクア セードル ブラン』●100ml ¥38,000(ブルーベル・ジャパン)

6.イッセイミヤケ

 水をインスピレーションに、1994年の発売以来、世界的にヒットした「ロードゥ イッセイ プールオム」。その続編として発表された今作。「海の力強さ」から着想を得てつくられた。トップノートではベルガモットやグレープフルーツのアロマが海風のような爽やかな印象を表現。その後に、ウッディノートやミネラルを含んだムスクの一種、アンバーグリスが、雄大な波や潮の香り、肉感的な力強さを表現している。スタイルやT.P.O.を問わない、透明感のある香調が魅力。

イッセイ ミヤケ『ロー マジュール ドゥイッセイ オードトワレ』●100ml ¥10,500(ブルーベル・ジャパン)

 昨今はスメハラ=スメルハラスメントのような、においに対して敏感になっている風潮もあるが、やはり仕立てのいいスーツを着用しているのに、本人が無臭ではなんだか味気ない。紹介したような軽やかで優しい香水であれば、周囲にもふんわりと香り、オーラのようにあなたの香りが伝わるはず。こんな馥郁たる香りに包まれたジェントルマンこそ、今を生きる紳士としてふさわしい。

※価格はすべて税抜です。

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※掲載した商品の価格は、すべて税抜きです。
<出典>
MEN'S Precious冬号「世界紳士の絶対名品」
 
2017年12月6日発売 ¥1,200(税込)

 

この記事の執筆者
TEXT :
加藤智一 美容ジャーナリスト
BY :
MEN'S Precious2017年冬号男の肌の曲がり角は50歳! その前に伊達男のすべきことは…ジェントルマン的・顔と体のエイジング道より
美容ジャーナリスト。男性誌・女性誌をはじめ、美容記事を執筆。著書に、男性のエイジングケアについて執筆した『お洒落以前の身だしなみの常識』(講談社)など。
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扉撮影/島本一男 構成・文/加藤智一
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