好評連載「官能コスメ」の第16回は「ニコール・キッドマンの若返り」に注目。 女性の官能と、その本質について、齋藤 薫さんが読み解きます。

齋藤 薫の官能コスメ

ニコール・キッドマンは、知性で「世界一の美女」のポジションを得た

20世紀に大きく開花した「ハリウッドの美人女優至上主義」、いわばどんなストーリーであろうとヒロインは絶対に「美人」、というスタイルがハリウッドではひとつの常識だったが、'90年代にはそこが明らかに様変わりしていく。

リアリズムの追求がベースにあったことは言うまでもないけど、これまでの反動のように「美人女優不要論」がハリウッドを支配していったのだ。あたかも、美人女優には演技力を要求できないと言わんばかりに。

ひょっとすると、'70年代アメリカから世界へと広がったウーマンリブが、ハリウッドには今頃になって意味を持ってきたのかもしれないが……。というのも、ハリウッドでは若い美人だけが重用されるが故に、40代に差し掛かるといわゆる「肩たたき」があるのが普通とされた。そういう男社会を見直す動きもあったのだ。

一転、美しくても美しさを前面に押し出さない演技派女優が次々輩出されることになる。

でも、その流れをまた変えたのが、二コール・キッドマンではなかったかと思う。久しぶりに「絶世の美女」というショルダーを持った美人女優が演技力を併せ持つつことで、主役の座を次々に取っていったからである。

この人がシャネルNo.5のミューズになったときのテレビコマーシャルを覚えているだろうか。まさに輝くばかりに美しい、これぞ女優と言う崇高なまでの美貌が描かれたもの。

しかし40代が近づくにつれ、美人女優の宿命である「衰えとともに出番が少なくなる」という、昔ながらのハリウッドの慣例がこの人にも襲い掛かる。さしものニコール・キッドマンも歳の取り方がわからず、ずいぶん戸惑ったようで、顔の印象が思いっきり変わり、一時期「この人の顔が怖い」という内容の記事が頻繁にゴシップ誌を飾った。

こうなると悪循環で、さらに仕事が減るから、もっと年齢に抗うようになり、そういう意味での不自然な若返りがエスカレートしていったのだ。天下のニコール・キッドマンも、もはやここまでか、という気配があったのは確か。

しかし、さすがはハリウッドを変えた女。ここへ来てまた「彼女の時代」がやってきたという見方があるほど、映画にTVに賞レースにと破竹の勢いで露出を増やしているのだ。最近も、ママ友の争いを描いた人気のテレビドラマシリーズで、エミー賞の最優秀主演女優賞にも輝いている。マスコミもニコール・キッドマンはやっぱりただ者ならぬ素晴らしい女優と賛辞を惜しまないほどに。

こうして復活を遂げた理由はふたつ。ひとつに、年齢に翻弄されたことで、女優として明らかに一皮むけたこと。この人は昨年、『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』という映画で、全編すっぴん、ちょっとくたびれたショートヘア、この人は誰? とわからないほど地味な佇いで里親の母親役をやったが、今までのニコールからしたら、いわゆる「体当たり」。

完全に吹っ切れたのだろう。でもそれが、映画界でも絶賛され、映画賞でのノミネートの数はまさに数え切れないほど。演技派としての本領を見事に発揮した。

しかしこの人はここで留まりはしなかった。つまり「性格俳優」へのシフトチェンジはしなかったのだ。エミー賞は、いわゆるセレブ妻、人も羨む美人妻の役で受賞。美貌でも完全復活を果たしたのだ。さすがニコールと感服したもの。

なぜならば彼女は、ほぼ100%知性で「世界一の美女」のポジションを手にした人と言っていい。IQ132を誇る知性肌としても有名だが、それが美しくなることでも十二分に発揮されたということ。

ともかく見事だったのは、30代における、立身出世への道。そもそもこの人、最初から「美人女優」なのではなかった。まだ無名のころ、本国オーストラリアで女優をしているころはむしろ、大柄なフィジカル女優というイメージだったのだ。それがハリウッドに進出し、出演作を重ねるほどに輝くばかりの美貌を手に入れていた。髪の色もダーク系からプラチナブロンドへ。肌質までがらりと変わっていた。ソバカスが消え、純白の透明肌になっていた。持ち前の演技力に加え、この美貌を完成させたことで、ハリウッドNo.1の女優と讃えられ、大成功を収めたのだった。

そして今度もまた、知恵で年齢を乗り越えた。ハリウッドにおける多くの元美人女優が、残念ながらますます美容医療の深みにはまって、再起できずにいる。だから、ハリウッドに美人女優の権威を取り戻したこの人だけは、美人女優として行けるところまで行ってしまって欲しいのである。

二コール・キッドマン
第69回プライムタイム・エミー賞のニコール・キッドマン

授賞式における、この人の麗しき勇姿を見て欲しい。プラチナブロンドに、真っ白な肌、そして真っ赤な口紅。50歳には見えない透明度と大人だけの妖艶を併せ持つ美しさは、この人が知恵と知性で何年もかけて取り戻したもの。ハリウッドでも演技だけで年齢を乗り越えるのは難しいと悟ったこの人は、苦悩の末に現在の自分をつくりあげ、復活を遂げたのである。

本当に見事。女性はこんなふうに、外見も含めて、意志を持ち、確信を持って歳を重ねるべきである。年齢に流されず、世の慣例に吞まれずに、人生を何度でもサクセスさせるために。

【シスレー】50代でも復活を遂げる人の秘密は肌の輝き

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見せかけじゃない、スキンケア発想で内側から肌の輝きをつくるシスレーのベースはデビューまもなく人気を博した。50代の肌をハッとするほど若返らせるのは、やはり肌の輝き。透き通るような透明感となめらかな輝きをつくるこの下地こそ、必需品と捉えたい。

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シャネル コレクション リーブル 2017「ヌメロ ルージュ」ルージュ アリュール 01、04(写真は01)、 ルージュ アリュール ヴェルヴェット 02、03 ¥4,300(税抜・11月3日より限定発売)、パレット エサンシエル 150 ¥7,000

赤の口紅にも実はさまざまな表情があって、その微妙な違いが肌の印象を見事に違ってみせる。4つの赤でデビューしたこのルージュはいわゆる肌映えで群を抜く。白い肌をさらに透き通るように白く見せるマジックをぜひ体感してほしい。

【THREE】白い肌に赤の唇となればやっぱり目は深遠なる黒

THREE キャプティベイティングパフォーマンスアイライナー 02 ¥3,300、シマリングカラーヴェール ステートメント 17、19  ¥3,500(税抜)

ダークブラウン系のアイものの充実がめざましい。ただ、それでもまだ大きな個体差があることに気づかされり。そういう意味でこれは誰もがずっと使い続けていきたいと感じるはず。ニュアンスある黒の深みが全く違う。白い肌に赤の唇ときたら締めはやっぱり黒目がちの瞳。日本人の目元に取り分けドラマチックな影をつくってくれる名品たち。

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この記事の執筆者
TEXT :
齋藤 薫さん 美容ジャーナリスト
2017.10.29 更新
女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。好きなもの:マーラー、東方神起、ベルリンフィル、トレンチコート、60年代、『ココ マドモアゼル』の香り、ケイト・ブランシェット、白と黒、映画
PHOTO :
戸田嘉昭、宗高聡子(パイルドライバー)、AFLO
EDIT :
渋谷香菜子