伝統と革新―─カルティエのタイムレスな姿勢が拓く新境地

ジュエリー&時計ジャーナリストの本間恵子さんが、2021年の新作ウォッチからおすすめアイテムをご紹介。今回は、カルティエ(Cartier)がメゾンの伝説的な2つのコレクション「タンク」と「マスト」を融合させた「タンク マスト」をピックアップしてお届けします。

カルティエのタイムピースには、人々を引きつけてやまない魅力があります。「タンク」コレクションが誕生したのは100年以上前。1917年に発表した、平行線の縦枠が採用されたレクタンギュラーシェイプは、ラウンド型主流の時代に衝撃を与えました。

端正なレイルウェイダイヤル、ラグまで続く、やや丸みを帯びたプロポーション…。シンプルなデザインながら、時代を経ても、ひと目でこのメゾンのアイコンと認識できるほどです。

また、1977年に誕生した「マスト」コレクションも愛され続ける名品です。本間さんによると、こちらは当時、「レ マスト ドゥ カルティエ(カルティエの中のマスト)」──絶対に持つべきもの、と名付けられていたそうです。

細部まで考え抜かれた独特で優美なフォルムは一世を風靡し、当時の女性たちに絶大な支持を得ました。今でもレザーコレクションなどに使われるほど、その人気は健在です。

このふたつが融合したのが新生「タンク マスト」。コレクションの名前を聞いただけでも、すでに只者ではない、ワクワクした印象を受けます。

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カルティエの新作ウォッチ「タンク マスト」。Laziz Hamani (C) Cartier

「さらに、それだけでは終わらないところがカルティエらしさです」と本間さん。創業当時から、つねにオーディエンスの声に耳を傾け、研究と開発、進歩を続けるカルティエは、この新作ウォッチで環境にも配慮した姿勢を打ち出しました。それが“ソーラービート”ムーブメントと植物由来のストラップです。

環境重視の姿勢から生まれた極上のタイムピースとは?

開発チームが4年がかりで手がけたというサステイナブル&エコロジーの取り組み。そのひとつである“ソーラービート”ムーブメントは、ダイヤルに光起電発電の原理を適用することから生まれました。

繊細で目には見えない穴の空いたローマ数字、その開口部がダイヤルの下に隠された光電池にソーラーエネルギーを届けます。ムーブメントの耐久性は約16年。「タンク」で使用されているクォーツを、さらにアップデートしたことになります。

「タンクの伝統的なデザインを変更することなく、光で発電する新しい機能を取り入れる。技術的にとても難しかったはずですが、そこで妥協しないのがカルティエのすごさです」(本間さん)

そして、もうひとつが植物由来の新素材を用いたストラップです。こちらは、ヨーロッパで問題になっているリンゴの廃棄物を使用したもの。ストラップの約40%はスイス、ドイツ、イタリアの、農産物加工産業用に栽培されたリンゴの廃棄物から生まれた植物素材です。この生産工程で環境保護を一歩前進させることになります。

カーフスキンのストラップ製造時と比較すると、カーボンフットプリントの削減(6分の1)、水使用量の削減(10リットルまで)、エネルギー消費量の削減(最大7ジュール、スマートフォンの充電約80回分)を実現しました。

なお、「今回取り上げたタイムピースは、ストラップが簡単に付け外しできるインターチェンジャブルシステムを採用しています。これも嬉しい情報です」と本間さん。

■1・2:ハンサムなブラックストラップは2つのケースサイズ

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「タンク マスト」右/SM ¥288,200(予定価格) ●ケース:ステンレススティール ●ケースサイズ:縦29.5㎜×横22㎜ ●ダイヤル:シルバーグレイン仕上げ ●ストラップ:非動物性素材 ●ムーブメント:ソーラービート(ソーラーエネルギー) 左/LM ¥303,600(予定価格) ●ケース:ステンレススティール ●ケースサイズ:縦33.7㎜×横25.5㎜ ●ダイヤル:シルバーグレイン仕上げ ●ストラップ:非動物性素材 ●ムーブメント:ソーラービート(ソーラーエネルギー)※ともに9月発売予定 (C)Cartier 

「モノトーン好きな人なら見逃せない、洗練かつシンプルなブラックストラップモデルです。やや丸みがありながらもすっと伸びたラインを描くケース内には、レイルウェイダイヤルとブルースティール針、トップにカボションカットが施されたブルーシンセティックスピネルのリュウズ…。カルティエらしさがみなぎっています」(本間さん)

カジュアルスタイルに合わせても、ジャケットスタイルに合わせても、クラス感を漂わせるのは、メゾンのクリエーションが生きている証し。レディースウォッチながら媚びない姿勢が好ましさを与えます。

■3:みずみずしいペールトーンのブルーストラップ

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「タンク マスト」LM ¥303,600(予定価格) ●ケース:ステンレススティール ●ケースサイズ:縦33.7㎜×横25.5㎜ ●ダイヤル:シルバーグレイン仕上げ ●ストラップ:非動物性素材 ●ムーブメント:ソーラービート(ソーラーエネルギー)※9月発売予定 (C)Cartier 

「澄んだ海、どこまでも続く青空、地球そのものを意識したかのような清々しい発色のストラップです。着用すると、その優しい色合いが溶け込むような透明感をもたらします。地球環境を意識したストラップの本領発揮といえるかもしれません」(本間さん)

カルティエの伝統と革新が生んだオーラが、好みの白シャツスタイルに合わせると抜群のコーディネート力を披露します。さらりと着用すると軽やかさやすっきり感をプラスしてくれるのは嬉しい限りです。

■4:青リンゴを思わせるライトグリーンのストラップ

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「タンク マスト」右/SM ¥288,200(予定価格) ●ケース:ステンレススティール ●ケースサイズ:縦29.5㎜×横22㎜ ●ダイヤル:シルバーグレイン仕上げ ●ストラップ:非動物性素材 ●ムーブメント:ソーラービート(ソーラーエネルギー)※9月発売予定 (C)Cartier 

「問題視されていたリンゴの廃棄物が、新たなストラップへ変身。まるで、青リンゴの生命力が宿ったかのような印象を受ける、フレッシュなペールグリーンです。小ぶりサイズで初々しい印象。これも大人の女性には歓迎すべきことです」(本間さん)

大人可愛さが集約された色合いは、シンプルなニットと組み合わせるだけで、幸せ感がにじみ出てくるよう。このウォッチを身につけさえすれば、無難なデイリーカジュアルとは一線を画す装いへと導いてくれそうです。


以上、カルティエの最新ウォッチ「タンク マスト」をご紹介しました。

「名声に甘んじることなく、いつも心揺さぶるウォッチを発表し続けるカルティエ。ムーブメントにはソーラービート搭載、非動物性ストラップの使用と、地球環境を意識したウォッチ…、今年の新作もトレンドを押さえた仕上がりです。クラシカルな美しさとモードな感覚を兼ね備えたスタイルが何よりの魅力ですよね」(本間さん)

本間恵子さん
ジュエリー&時計ジャーナリスト
(ほんま けいこ)東京都出身。武蔵野美術大学を卒業後、某宝飾メーカーでデザイナーとして勤務し、その知識を生かしてジュエリー専門誌のエディターに転身。その後フリーランスとなり、国内外の見本市や展示会を取材して、モード誌やアートマガジン、新聞などに寄稿。トークショーやテレビコメンテーターなどをこなしながら、アンティークジュエリーの研究も行っている。夫は建築家。好きなもの:バンドデシネ、マンガ、美術史、トールキンの著作。

 ※掲載した商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

カルティエ カスタマー サービスセンター

TEL:0120-301-757

この記事の執筆者
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WRITING :
菅野悦子
EDIT :
谷 花生