「好きなお酒はなに?」と聞かれたら「ワインと日本酒。あとスコッチ、カクテル、レモンサワー……」と5本の指では足りない私ですが、なかでも一番好きなのはシャンパーニュ。味わいはもちろんなのですが、すっと立ち上る黄金色の泡や、ボトルやグラスの優美なラインが美しい。
何かお祝いしたいときはもちろん、リラックスしたいときや悲しい気分を吹き飛ばしたいときも、何かと言い訳をつけてコルクを抜いています。
そんな私にシャンパーニュ、それもクリュッグのフリーフローに行きませんかというお誘いが!
「ふりぃふろぉ」って、つまりは飲み放題ということですよね? それもよくあるホテルのイベントのように2時間制ではなく、1泊2日。つまり、チェックインからアウトまで少なく見積もっても30時間はあるわけで。これは耐久レースですよ。
私、以前、馬に乗って野山や草原を80~160キロ走るエンデュランス競技にハマっておりましたが、久々に闘志がみなぎってまいりました。
「bar hotel 箱根香山」
「飲(や)ってやる……」と、気合十分で向かいましたのは、箱根の「bar hotel 箱根香山」。こちらは、その名のとおり「バーに泊まる」がコンセプトのホテルなのだそう。チェックインは18時でアウトは14時。ほとんどのドリンクは宿泊費にインクルーシブで、もちろん、終電やタクシー代の心配も無用です。
私は酔っても「もう1軒!」となるタイプなので眠気とは無縁なのですが、飲みながら寝落ちしてしまうという方には最適の場所ですよね。だってバーカウンターからベッドに直行できるわけですから。
この「bar hotel 箱根香山」に現在1室だけ用意されているのが「Room K by bar hotel 箱根香山」。Kはもちろん「KRUG(クリュッグ)」のKです。
85㎡の広々としたラグジュアリールームには、畳敷きのお座敷と、ソファのあるリビング、そして寝室と浴室。正直、我が家より広いのですが、私の眼は1点しかとらえていませんでした。ものすごく視野が狭くなっています。
クリュッグ。もはや説明不要かと思いますが、念のため。
「クリュッグ」は仏シャンパーニュ地方で1843年に創業されたシャンパーニュメゾンです。
創業者のヨーゼフ・クリュッグは「年ごとに変わる天候に左右されない、最高品質のシャンパーニュが作りたい」と夢を描き、多くのリザーブワインをブレンドするマルチ・ヴィンテージというスタイルでプレスティージの高いシャンパーニュを造り出す手法を確立しました。
その愛飲者はクリュッグ・ラヴァーと呼ばれ、たとえばココ・シャネルやエリザベス女王、ヘミングウェイなどなどそうそうたる方々。当然お値段も、推して知るべしという最高級シャンパーニュです。
その代表的なアイテムであるクリュッグ グランド・キュヴェを思うさまいただけるこの「Room K」では、お部屋でのチェックイン時にまず1本。「KRUG」が2021年のテーマ食材にしていたタマネギを主体にしたフィンガーフードで「カンパイ!」しました。
続いて客室内お座敷スペースでのディナー。ディナーといっても、「bar hotel 箱根香山」はフライドポテトやソーセージ、ローストビーフなどバーフードが主体でして、この「Room K」の宿泊プランにはこのバーフードも含まれています。
何を隠そう、この私、シャンパーニュとフライドポテトというペアリングに目がないのですが、ポテト、クリュッグ、ポテト、クリュッグ、ポテトポテト、クリュッグ……泡と芋の止まらない反復運動にお腹がはちきれそうです。
だめだ、これではすぐにK点(クリュッグだけに)を迎えてしまいそう。ということで、いったん食卓から離れ、温泉へ向かうことにしました。ここは箱根。湯質の良さでも知られる温泉郷でもあります。
予め予約していた貸し切り温泉「private spa and bar」のドアをよろめきながら開けてみますと、そこには……
ああ、ここにもクリュッグが。しかも大好きなクリュッグ ロゼ(ハーフ)。「もっと素面のときに飲みたかったよ~」とひとりごちながらも、もちろん美味しくいただきます。
なめらかな箱根の温泉と、湯気の中でぼんやり光る薔薇色のシャンパーニュ。
お風呂に入りながらシャンパーニュを飲むなんて、マリリン・モンローか、ジュリア・ロバーツか、とにかく映画でしか見たことのないシチュエーションです。
毎日、いいことばかりではないけれど、与えられた仕事を頑張っていればたまにはこういう幸運も降ってくるんですね……しまいにはシミジミしちゃった。
実はこのプラン、「クリュッグ」だけではなく、約300種のウイスキーやカクテル、地酒など(一部除く)もフリーフローで飲めます。お風呂帰りにバーカウンターへ立ち寄り、これまた大好きな「タリソー」(「タリスカー」のソーダ割り)を1杯。
シャンパーニュでパンパンのお腹にスコッチが沁みる。これはまた別腹、いや別肝ですね。
千鳥足でベッドへ。これぞバーホテルの醍醐味です。
酔眼で見渡してみますと、お部屋のあちらこちらにクリュッグのKの意匠が。いくつあるんだろう……探してみようかしらzzzz
はっ、寝てた。昨夜、飲んだクリュッグを並べてみます。たった2本とハーフ。好きなだけ飲んでいいよと言われると、意外に飲めないものですね。チェックアウトまでに、シャンパンブランチもサービスされるということなので、いまからまた飲みに行ってきますね。がんばるぞ(そこ、がんばらなくていいよ)!
※新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下では一部情報が変更となる可能性があります。公式HPなどでご確認ください。
問い合わせ先
- bar hotel 箱根香山
- 料金/「Room K by bar hotel 箱根香山」での宿泊は1室2名利用1泊35万9700円~(税・サ込、入湯税別)
- TEL:0460-82-0111
- 住所/神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷507-4 足柄下 箱根香山
- TEXT :
- 秋山 都さん 文筆家・エディター
Instagram へのリンク
- PHOTO&WRITING :
- 秋山 都