ダイヤモンド形のキルティングに、ダブルCのクラスプ、レザーをあしらったチェーンなど、ひと目でわかるアイコニックなディテールが羨望をかき立てるシャネルのキルティングバッグ「11.12」。
雑誌『Precious』6月号では『永遠の輝きに心奪われる、シャネル「11.12」、その尽きない魅力』と題し、時代を超えて愛される名品バッグの「今」に迫る特集を展開しています。
今回はその特集の中から、「11.12」の始まりと今をお届け。伝説がスタートした背景やカラフルな色や最旬素材をまとった最新コレクションでの「11.12」をご紹介します。
新しい時代に、女性の生き方まで美しく彩るアイコンバッグ
「バッグを手に抱えたり、なくしたりすることにうんざりしていたから、細長い紐を通して、弾薬帯のように肩から掛けるようにしたの」
女性用のバッグといえば、小ぶりで装飾的なものが主流だった1929年。ガブリエル・シャネルは、両手が自由に使える男性用のミリタリーバッグから着想して、機能的で女らしいショルダーバッグを発表しました。
ポケットに手を入れるポーズが気に入っていたガブリエルは、このショルダーバッグによって、動きが妨げられない自由と、心地よさを手に入れたのです。
伝説の始まりはガブリエル・シャネルのバッグ「2.55」
戦時下からの長いブランクを経て、ガブリエルが71歳でモード界に復帰した翌年の1955年2月。チェーンを通す鳩目の付いたモデルが発表されました。これが伝説の「2.55」の始まりでした。
ガブリエルが男性のスタイルに着目して、今では常識ともいえるファッションを次々に生み出してきたことは、よく知られています。ただ実用性やデザインのアイディアを取り入れるのではなく、自分自身をモデルに、その時代の女性のライフスタイルに合うように仕上げたのです。
自身がデザインしたバッグ「2.55」をかたわらに携えたガブリエル・シャネル。シンプルなツイードスーツに合わせるのは、パールのネックレスと共に、チェーンが煌くお気に入りのバッグでした。
女性が働くことさえ難しかった時代から、常に革新的な創作を続けて、諦めることなく、生涯をかけて新しい時代の女性の生き方を見せてくれたガブリエル・シャネル。「2.55」は、どこかそんな自由な生き方まで感じさせてくれるからこそ、女性たちに支持されてきたのです。
ガブリエルの没後、そのスタイルはカール・ラガーフェルドによって継承されます。時代を読み取る才能に長けた彼によって「2.55」に新しい解釈がされて、「11.12」が誕生しました。
それは1980年代の半ば、だれもがラグジュアリーを求め、オートクチュールも勢いを取り戻した時代。「11.12」にはチェーンにレザーが編み込まれ、「マドモアゼル」クラスプと呼ばれるスクエア形のクラスプをダブルCに変えたことで、さらにアイコニックな魅力を増して、メゾンを象徴するアイコンバッグへと進化したのです。
最新コレクションでも「11.12」の新作が華やかに彩りを添えて
一昨年、ガブリエル以来、「シャネル」2代目の女性アーティスティック ディレクターとして、ヴィルジニー・ヴィアールが就任。思いがけず激動の時代を迎えたこの時期に、しなやかな女性クリエイターの登場は運命的ともいえるものでした。
「11.12」の変わらない魅力は、現在ヴィルジニー・ヴィアールに受け継がれ、毎シーズンのランウェイでは、カラフルな色や最旬の素材で提案されて、日常使いできるスタイルも充実。
ヴィルジニーは新しい時代を生き抜く活動的な女性たちに向けて、「11.12」のタイムレスな魅力を再評価したのです。コレクションごとに新しい素材のバリエーションを加えながら、クチュールメゾン「シャネル」の「サヴォアフェール」を体現するバッグは新たな輝きを増しています。
ソフィア・コッポラが「サヴォアフェール」のキャンペーン動画を撮影!
15歳の頃からパリのシャネルでインターンをしていたというソフィア・コッポラ。メゾンへの深い造詣と独自のスタイリッシュな女性の視点で「11.12」の「サヴォアフェール」をショートフィルムで表現しました。キャンペーン動画は、公式HPとInstagramから視聴することができます。
問い合わせ先
- PHOTO :
- (C)CHANEL
- EDIT&WRITING :
- 藤田由美、古里典子(Precious)