ブラックタイと指定したドレスコードには、いくつもの逸話がある。

古くは貴族のお遊びのひとつとして、ブラックタイという条件でパーティを開く。招かれた人は、ブラックタイの意味がわかったスタイルなのか。いわば服飾のマナーにおける教養を測るという、なんとも嫌味な仕掛け。

スマートにそのスタイルに応えられるのが、紳士の教養だ

こんな招待状が届いたら……。フォーマルな場所への招待状には、必ず招待客の装いについての指定がある。

もうひとつ披露するなら、ブラックタイを素直に解釈し、黒の結び下げのタイでパーティ会場に出向いた、という笑えない話もあるのだ。ブラックタイと指定された招待状が届いたとき、スマートにそのスタイルに応えられるのが、やはり紳士の教養である。ブラックタイとは、タキシードの装いを指す。イギリスでは、タキシードをディナージャケットと呼ぶが、つまり、夜間における準礼装を示しているのだ。タキシードには、黒のボウタイを締めるのが礼装のルールのため、ブラックタイ=タキシードとなる。

では、そのタキシード。シャツなどのコーディネートはどうなるのか。ジャケットは、シングルとダブルの2タイプがあり、デザインは着る人の好みだが、シングルの場合は、カマーバンドを締めるのが決まり。シャツは、白無地のヒダ胸かイカ胸のデザインで、ウィングカラーが望ましい。側章が左右に各1本付いたパンツに、足元はエナメルかパテントレザーのオックスフォードかパンプス、という組み合わせである。正式な招待では、一切遊びを抜きにして、古色蒼然ともいえる、伝統に倣ったタキシードスタイルが正解だ。

この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
Faceboook へのリンク
Twitter へのリンク
WRITING :
矢部克已