素敵な男性がいれば、どんな女性があの人のハートを射止めたのだろうと気になってしまう。ソフィー・トルドーはまさにその人。女性の羨望を一身に集める存在だ。それもそのはず、彼女の夫にうっとり見とれた写真を取られてしまった、女性のセレブリティーはイヴァンカ・トランプをはじめ数知れず。その男性とは、カナダ第29代首相、ジャスティン・トルドーである。

政治とファッションを牽引する、カナダ最強の「広報夫婦」とは?

45歳にして首相。その若さと好感度の高いルックスで「イケメン」「イクメン」として名高く、政治姿勢もLGBTへの積極的支持、米国の難民排除の政策に対して、レバノン、ヨルダンなどでキャンプ中の難民をツイッターで「#WelcomeToCanada」と発信し、カナダへ迎え入れた。「迫害、テロ、戦争から逃れてきた人たちへ。カナダはみなさんを歓迎します。多様性は私たちの力です」と述べ、世界の拍手喝采を浴びた。

また首相になった2015年に内閣の男女比を同じにし、ゲイやハンディキャップを持つ人を大臣とするなど、バランスのとれたリベラルな政策を次々に実行し、政治的手腕の高さにも評価が高まっている。ダイバシティーの時代とともに歩むジャスティン・トルドーのもうひとつの側面は、フェミニストであるという点だ。伊勢志摩サミットに来日していた折には、公務を1日休み、妻ソフィーとともに、近隣の山登りや散策を楽しみ、結婚記念日に合わせた休暇を楽しんだ。

伊勢志摩来訪時のソフィー・トルドー(写真左)

新しい時代を、水を得た魚のように泳ぎ渡るジャスティン・トルドーに常に寄り添う妻ソフィー・トルドー。ふたりの仲むつまじさは有名で、3人の子どもを授かった幸せそうな家庭は、彼のエネルギーの源となっているようだ。ソフィー・グレゴアール・トルドー。1975年にカナダのケベック州に生まれ、英語、フランス語、スペイン語を操る。彼女も現代の活動するフォーストレディーの例にもれず、元はモデルでそれに飽き足らずヨガのインストラクターやニュースキャスターを務めていた。

「ソフィー効果」でファッション業界に好景気が!

現在はジャスティンをサポートすべく、チャリティー活動に従事。アメリカやフランスのファーストレディーに比べると、控えめな存在に見られがちだが、彼女の立ち振る舞いはカナダでは「ソフィー効果」と呼ばれるほど絶大な人気を誇っている。特にファッション産業に多大な貢献をしているところから、ファッション関係者は感謝を込めて、ソフィーを「ファッションアイコン」と呼んでいる。

ファーストレディが自国のファッションをまとい、公の席に登場するのは、ミシェル・オバマ元アメリカ大統領夫人を始め、今や当然のことだが、これまで国際的な知名度のなかったカナダのデザイナーやブランド、特に新進デザイナーなどの知名度がソフィーが着て登場することで劇的にアップしているのだ。

ソフィー自身も「カナダのスタイルを世界にPRしていきたい」と宣言しているが、その効果はまず国内で現れている。新しい政権の誕生とともに、首相の就任式に向かうトルドー首相と手を繋いだ真っ白の長いコート姿は記憶に残っている方も多いだろう。

トルドー首相就任時、セントルーラーのコートを着たソフィー・トルドー

ブランドの売り上げが5倍になった例も!

世界中に配信されたこの写真のコートは、アルパカ製でカナダのコートメーカー「セントルーラー」のもの。デザイナーはベオグラード出身のボアナ・セントルーラー31歳。カナダの多様性を体現するデザイナーだ。この瞬間までカナダでもあまり知られていず、ましてや世界的な知名度など無いに等しかったブランドだった。だが、その後もバッキンガムでの英女王との謁見、パリで開催された気候変動会議など、ひときわ注目度の高い場所で着用したことで、海外メディアでも取り上げられ、大きな宣伝効果となった。セントルーラーの売り上げが、あっという間に5倍になったというのも頷ける。

そのうえ、このアルパカには背景があった。アレルギーを起こさない材質で、アルパカの毛を刈るときに、動物虐待にならないように厳しく定められている基準をクリアした「アニマルフレンドリー」で「エコフレンドリー」という、時代の価値基準にあった素材であったのだ。

夫の政治姿勢と同調するファッションのチョイスで、しかも宣伝効果も抜群。カナダのアパレル関係は中小規模が多く、ヨーロッパやアメリカの有名ブランドやデザイナーに比べ、広告宣伝費も豊かではない。だが、首相夫人が身に付けて表舞台に立ち、認知度が上がれば、どれほど彼らの支援になることだろうか。

2017年ドイツでのG20に出発するトルドー家

馴染みのなかったメイドインカナダのファッションを世界に売り込むべく、自国での開催のみならず、海外での公式晩餐会や華やかな歓迎式典を始め、あらゆるグローバルな場所で服、バッグ、イヤリングなどアクセサリーすべてにカナダ製を身につけ、いまやカナダファッションのセールスウーマンとしてかけがえのない国の代表となっている。美人で可愛らしくチャーミングな3児の母親。穏やかな同系色のコーディネートを好み、気取りのないエフォートレスなスタイルは好感度が高い。ソフィーとジャスティンのカップルは、カナダ最強の「国の広報」としても国民の期待を一身に背負って活躍中だ。

この記事の執筆者
1987年、国際羊毛事務局婦人服ディレクターとしてジャパンウールコレクションをプロデュース。退任後パリ、ミラノ、ロンドン、マドリードなど世界のコレクションを取材開始。朝日、毎日、日経など新聞でコレクション情報を掲載。女性誌にもソーシャライツやブランドストーリーなどを連載。2000年より情報用語辞典『イミダス』でファッション分野を執筆。毎シーズン2回開催するコレクショントレンドセミナーは、日本最大の来場者数を誇る。好きなもの:ワンピースドレス、タイトスカート、映画『男と女』のアナーク・エーメ、映画『ワイルドバンチ』のウォーレン・オーツ、村上春樹、須賀敦子、山田詠美、トム・フォード、沢木耕太郎の映画評論、アーネスト・ヘミングウエイの『エデンの園』、フランソワーズ ・サガン、キース・リチャーズ、ミウッチャ・プラダ、シャンパン、ワインは“ジンファンデル”、福島屋、自転車、海沿いの家、犬、パリ、ロンドンのウェイトローズ(スーパー)
PHOTO :
アフロ
EDIT :
渋谷香菜子