男にとって、いい道具とは、トレンドで決まらない。クルマも同様。たとえば、フォルクスワーゲン・ゴルフのステーションワゴン版「バリアント」だ。SUVが流行といっても、このクルマを何代にもわたってこよなく愛するひとたちがいると聞いても、おどろかない。

サイズアップしてマイルドハイブリッド搭載

日本ではハッチバックからわずか2か月の差での導入。
日本ではハッチバックからわずか2か月の差での導入。
スポーツワゴンのイメージを強めたデザイン。
スポーツワゴンのイメージを強めたデザイン。

2021年7月に、ゴルフ8をベースにした新型ゴルフ・バリアントの日本発売が開始された。やはりずっと乗り続けてきたファンが少なからずいて、心待ちにされていたモデル、と日本法人の広報担当者は教えてくれた。

最新のゴルフ・バリアントの特徴をかいつまんで説明すると、エンジンラインナップはゴルフと同様、1リッターと1.5リッター。ボディサイズは従来よりすこし大きくなりホイールベースも伸びた。そしてインフォテイメントシステムがグレードアップするとともに、運転支援システムが充実している。

走らせての印象は、どちらのモデルも、スムーズな高速巡航性能と、ワインディングロードで光るしっかりした足まわりがきわだつ。昨今のフォルクスワーゲン車の例にもれず、頼りになる走行性能で光るクルマだ。

どちらのエンジンも、電気モーターが発進時にトルクの積み増しをするマイルドハイブリッド。一般的には、アクセルペダルの踏みこみをなるべく減らしたい大排気量の大型車が採用してきたシステムであるものの、ぜいたくにも、VWはゴルフ(とバリアント)に搭載した。これも自慢できるポイントになるはず。

じっさいに、走りだしは軽快。そもそも車重が1.4トンていどなので、ダッシュ力はなかなかのもの。48ボルトの専用バッテリーにバックアップされたモーターがエンジン出力軸をベルトで駆動。瞬時に最大トルクを発生するモーターをうまく使っているのだ。ただし、エンジン回転があるていど上がるとモーターは停止する。

しょせん、小排気量ということもあり、とくに1リッターモデルは、減速と加速が連続するワインディングロードの上りなどでは、ドライバ−が意識的にエンジン回転を2000rpm以上に保つ必要がある。

いっぽう下りは、さきに触れたように、おもしろいぐらい速めのペースで連続するカーブをこなしていくしっかりと踏んばるフロントサスペンションは、車体の傾きを抑えて、ドライバ−の目線をしっかり固定してくれるので、不安感は皆無。

高速道路での安定感はさすがドイツ車

コンソールはハッチバックと同じ。
コンソールはハッチバックと同じ。
後席の足元に余裕がある。
後席の足元に余裕がある。

いっぽう、高速道路などでいったんスピードに乗ると、タイヤのころがり抵抗からボディの空力まで、すべてにわたっての配慮が効を奏するのだろう。すーっとなにかのうえを滑っていくようなスムーズな加速を味わわせてくれる。

すべっていくような、といっても、ステアリングホイールへの情報は正確だし、わずかな入力、つまりほんの少し操舵したときでも、車両は即座に反応する。そのときのドライバーとの一体感はたいへん気持ちよい。フォルクスワーゲンやるなあと感心させられる。

新型ゴルフ・バリアントは、従来型より全長が65ミリ延長され4640ミリに。ホイールベースも35ミリ延長され2670ミリとなった。荷室は22リッター拡大され「クラストップレベル」が謳われる。日本法人の広報では、デイキャンプなどでの使い勝手のよさを喧伝している。なるほどだ。

室内では、液晶モニターが2つ。ひとつはドライバ−の眼の前にあって計器を表示するもの。ここに大きくナビゲーションのマップを映すことも簡単だ。もうひとつのモニターはインフォテイメント用としてダッシュボードに埋め込まれている。

フォルクスワーゲンの日本法人では、eSIMといって車両が常時オンラインでつながっているように設定。ナビゲーションシステムの情報書き換えはオンラインだし、スマートデバイスを使って離れたところからドアの解錠施錠などのコントロールが出来るようになった。

細かい部分まで丁寧に作られているのがいい

荷室容量は従来型より6リッター増え、後席をたたんだ状態では22リッター増となる。
荷室容量は従来型より6リッター増え、後席をたたんだ状態では22リッター増となる。

ダッシュボードをはじめ、ドア内張やシートにいたるまで、けっしてぜいたくではない。でも品質感は相変わらず高い。パーツ同士のつなぎ目、色や素材感の統一性、そして各操作部の音質にいたるまで、ていねいに考えられて作られている。日本車がなかなか勝てない部分だ。

いい道具、と冒頭で書いたとおり、ゴルフ・バリアントは万能選手だ。このあと、GTIのようなよりスポーティな前輪駆動仕様や、まだ日本にはない4輪駆動仕様も追加されるかもしれない。ただし、今回の2つのモデルを買っても後悔はないと思う。

価格は、999cc直列3気筒(最高出力81kW、最大トルク200Nm)の「sTSI Active Basic」(305.6万円)にはじまり、同じエンジンの「sTSI Active」(326.5万円)。このエンジンの燃費はリッターあたり18.0 キロ(WLTC)とされる。

そのうえに1497cc4気筒(110kW、250Nm)の「sTSI Style」(384.6万円)と、今回の「eTSI R-Line」(389.5万円)が位置する。こちらの燃費はリッター17.0キロ(同)で、ともに悪くない。

問い合わせ先

フォルクスワーゲン

TEL:0120-993-199

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。
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