新シーズンのメトロポリタン・オペラがいよいよ映画館に登場
2021/2022シーズンのMET(メトロポリタン・オペラ)は、9月27日、『ファイア・シャット・アップ・イン・マイ・ボーンズ』(Fire Shut Up In My Bones)で幕を開けた。同作は、スパイク・リー監督の映画音楽でも知られるジャズ・ミュージシャン、テレンス・ブランチャード作曲の新作オペラだ。他にも、MET初演作、新演出作他、話題作がズラリ。『METライブビューイング』での上映予定も7月までの10作品が発表されているが、今回は、その中から3月までに上映される5作品を紹介する。
ちなみに、『METライブビューイング』は、METの舞台で上演される世界最高峰のオペラを映画館の大型スクリーンで上映する体験型エンターテインメントで、日本をはじめ世界70カ国2,200か所以上で実施されている。5.1chサラウンドの音響と10台以上のカメラを駆使したダイナミックなライブ撮影の効果により、METの特等席で観る気分で鑑賞できるのが魅力だ。
MET初演の新作オペラ2本を含む新鮮なラインナップ
新シーズンの開幕作品となった『ファイア・シャット・アップ・イン・マイ・ボーンズ』は、前述のようにテレンス・ブランチャード作曲作品。MET史上初の黒人作曲家による新作オペラとなった。ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、チャールズ・M・ブロウの同名回顧録を原作にした、アメリカ南部が舞台の現代もの。演出を、2019/2020シーズン最高の人気作だった『ポーギーとベス』(Porgy And Bess)のジェイムズ・ロビンソン&カミール・A・ブラウンが手がけている。同作でベスを演じたエンジェル・ブルーが出演しているのも話題。主演はウィル・リバーマン。指揮はMET音楽監督のヤニック・ネゼ=セガン。最注目の一作だ。1月28日(金)~2月3日(木)。
やはりアメリカの作曲家マシュー・オーコインによる新作オペラが『エウリディーチェ』(Eurydice)。ブロードウェイのヒット・ミュージカル『ヘイディズタウン』(Hadestown)と同じくギリシア神話の「オルフェウスの“冥府下り”」を題材にしながら、妻エウリディーチェの視点によって現代的感覚で描いた野心作。エウリディーチェ役はエリン・モーリー。演出は、MET2007/2008シーズン『ランメルモールのルチア』の新演出で話題をさらったメアリー・ジマーマン。指揮はヤニック・ネゼ=セガン。2月18日(金)~2月24日(木)※東劇のみ~3/3(木)。
「女心の歌」で知られるヴェルディの人気作『リゴレット』(Rigoletto)は、ブロードウェイ・ミュージカルを数多く手がけていることでも知られるバートレット・シャーの新演出で登場。1920年代のヨーロッパを舞台に、色彩的にも美しい装置で新たな世界観を醸成する。リゴレット役は“ヴェルディ歌い”と称されるバリトン歌手クイン・ケルシー。指揮はイタリア出身の若手スター、ダニエレ・ルスティオーニ。3月18日(金)~3月24日(木)※東劇のみ~4/7(木)。
ムソルグスキーの大作『ボリス・ゴドゥノフ』(Boris Godunov)は、1869年の初演ヴァージョンに立ち返っての上演。皇帝ボリス役を演じるのは、同役で高い評価を得ているルネ・パーペ。期待が高まる。演出スティーヴン・ワズワース。指揮セバスティアン・ヴァイグレ。1月21日(金)~1月27日(木)。
マスネの『シンデレラ』(Cinderella)は、2017/2018シーズンにヒットした英語による楽しい短縮ヴァージョンでの上演。シンデレラはイザベル・レナード、王子役はエミリー・ダンジェロが男装で、という花形メゾ・ソプラノの競演がうれしい。演出ロラン・ペリー。指揮エマニュエル・ヴィヨーム。3月4日(金)~3月10日(木)。
上映は東京・東劇他、全国の映画館。割引料金で観ることのできる特別鑑賞ムビチケカード3枚セットも発売中。詳しくは「METライブビューイング公式ホームページ」で。
- TEXT :
- 水口正裕 ミュージカル研究家
公式サイト:ミュージカル・ブログ「Misoppa's Band Wagon」