モーターだけで走るEV(電気自動車)を、街で見かける機会が増えてきた。一見すると違いはわからないが、シートに身を委ねればその違いは歴然。静寂となめらかな乗り味、家電を思わせる充実した装備……。時代の先を行くクリーンな相棒と、新しい価値観を創造しよう。サステナブルな精神を宿す、珠玉のラグジュアリーアイテムと共に紹介しよう。
「ポルシェ」『タイカン』|統一感のある着こなしで静寂がもたらす感動を楽しむ
ドアの開け閉めから足回りの動きまで、すべてががっちりと頼もしく、アクセルペダルの踏み込み量とリンクして、分厚いトルクがほとばしる。そして圧倒的なパフォーマンスにふさわしい、鋭いブレーキ性能。
「ポルシェ」のスポーツカーに共通するのは、乗り手にとびきり精緻な機械であることを実感させる操縦感覚だ。これはEVの『タイカン』でも変わらない。しかも、出力の異なるモデルバリエーションがあり、高性能モデルは「ターボ」を名乗る。
本来はエンジンの過給装置だが、「ポルシェ」では伝統的にフラッグシップの称号として用いられ、『タイカン』もそれにならっている。なかにはモーター駆動ならではの静けさに拍子抜けする人がいるかもしれない。ただし、それも初めだけ。伝統の操縦感覚がもたらす、硬質で手応えのある気持ちよさは、スポーツカーが必ずしも音を必要としないことを教えてくれる。
EVなのに「ターボ」が選べる!
むしろ、静寂がもたらすドラマティックな走りこそ、『タイカン』の真骨頂。移ろう景色は脳裏に残像となって焼き付き、窓を閉めていてもかすかな風の存在を感じる。静寂は、人の感覚を研ぎ澄ませるのだ。
モーター駆動の爽快さは、合わせる服が上質なほど、さらなる感動を生む。柔らかなレザーやカシミア素材で、動きやすく軽い着心地のコーディネートならいうことなしだ。ドレッシーな4ドアボディの『タイカン』に合わせて、カジュアルすぎないアイテム、それもホイールなどと色のアクセントを揃えると、見た目にも統一感が出てくるだろう。
細部へのこだわりは、週末の旅路を印象深いものにする。「EVのある暮らし」を味わい尽くすためにも重要だ。
ボディサイズ:全長4,965mm×全幅1,965mm×全高1,380mm
車両重量:2,340kg
モーター最高出力:460kW(625PS)
モーター最大トルク:850Nm
最大航続距離:450km(WLTPモード)
車両本体価格:¥20,370,000(ポルシェ・カスタマーケアセンター)
「アウディ」『e-tron』|都会派SUVの旗手に秘められた硬派な一面
「アウディ」が作るクルマには、どれも力強さと品格がある。ボディパネルの隙間は狭く、デザインにメリハリをつけるキャラクターラインのエッジがしっかり立っていて、とてもシャープ。この緻密な作り込みが、遠目からでも洗練されたスタイリングとして目に訴えかけるのだ。
まるでハイブランドのスポーツウォッチのように。内装も同様で、ドアの室内側部分やセンターコンソールのデザインは、ハイエンドオーディオもかくやの精悍な造形。操作スイッチやセレクトレバーに触れたときの触感も心地いい。こうした特徴は「アウディ」が長い時間をかけて積み上げた研究の賜物であり、EVの『e-tron』では、モダンデザインへの挑戦がモーター駆動の近未来感と融合し、大きな魅力となっている。
乗り味は芯がありながら、風のように軽やか。背の高いSUVタイプの『e-tron』でも、そうしたスポーティな味わいは濃厚だ。そもそもSUVはクロスカントリー用の4WD車から生まれたジャンルであり、当初は快適さよりも実用性、機能を形にした武骨さが持ち味だった。クロスカントリー車出身であることをアイデンティティとするSUVは今も存在するが、主流はデザインを含めて、主に街中での使用を前提とした設計。なかでも『e-tron』は旧来の考え方に捉われることなく、自由で快適なライフスタイルを楽しむ都会派SUVの旗手といえる。
だから、クルマのキャラクターと調和する着こなしには、上品で軽やかさを備えた、スポーティな服や小物を合わせたい。広い室内空間で、ストレスとは無縁のEVドライブを楽しめること請け合いだ。“『e-tron』は都会派SUVの旗手”と書いたが、ときには街中で、悪天候による不安定な路面の状態に遭遇することもあるだろう。それが旅先の山道だったら、緊張感はいっそう高まる。
そんなときでも「アウディ」が誇る「quattro」システム搭載の『e-tron』なら、安定感抜群の4輪制御でドライバーを支えてくれる。SUV本来のたくましさを秘めながら、主張しすぎない「アウディ」の洗練は、ジェントリィな生き方とも調和するのだ。
モダンデザインとテクノロジーの融合
ボディサイズ:全長4,900mm×全幅1,935mm×全高1,630mm
車両重量:2,400kg
モーター最高出力:230kW(313PS)
モーター最大トルク:540Nm
最大航続距離:335km(WLTCモード)
車両本体価格:¥11,080,000 (アウディ コミュニケーションセンター)
「メルセデス・ベンツ」『EQC』|少しずつ更新するライフスタイルその先にある「メルセデス・ベンツ」のEVカー
エンジンを搭載しないEVは、クルマのスタイリングを大きく変える可能性を秘めている。例えば車体前方にモーターなどの駆動ユニットを搭載する場合、エンジンよりも場所をとらないため、ボンネットを低くしたり、冷却用の風を取り入れるフロントグリルのない顔つきにすることもできる。
こうした未来感溢れるスタイリングのEVは、すでにいくつかのブランドから発売されているが、「メルセデス・ベンツ」のEV『EQC』は、従来のエンジン搭載車とのデザイン上の違いを最小限にとどめている。外観はより丸みを帯び、電動化をイメージする水色がアクセントになっているものの、クルマにあまり詳しくない人が見たら区別がつかないだろう。
これは、既存のメルセデスユーザーが『EQC』に乗り替えたときの違和感を抑えるためだという。斬新さで勝負しないところは、プレミアムカーブランドとしての長い歴史を誇る「メルセデス・ベンツ」の自信の表れとも解釈できるのだ。ユーザー目線で考え、まずEVありきの選択ではなく、豊かな時間を過ごすためによりいい一台を突き詰めていった結果、『EQC』に行きついた。そんなストーリーが浮かんでくる。
ファッションにおいても同じことがいえる。確かなクラフツマンシップに基づく名品にもモードがあり、デザインや素材に時代の変化を投影して、微細に進化している。理想のスタイルを追求する男のワードローブは、そうして少しずつ更新され、未来の自分を形作っていくのだ。そしてガレージの愛車も……。
上質を極めたメゾンの服と『EQC』がもたらすラグジュアリー体験に、心を躍らせずにはいられない。
プレミアムな個性を際立たせる電動マジック
ボディサイズ:全長4,770mm×全幅1,885mm×全高1,625mm
車両重量:2,470kg
モーター最高出力:300kW(408PS)
モーター最大トルク:765Nm
最大航続距離:400km(WLTCモード)
車両本体価格:¥8,950,000~(メルセデス コール)
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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- EDIT&WRITING :
- 櫻井 香